労災の「第三者行為災害」って?知っておくべき6つのこと

労災の「第三者行為災害」って?知っておくべき6つのこと

3、交通事故の場合、自動車保険と労災保険どちらに請求するべき?

第三者行為災害で自動車事故の場合、第三者の損害賠償は、ほとんどの場合において自動車保険でまかなわれると思います。

この場合、保険 vs 保険 です。

どちらも支払えないということはありませんから資力は関係ありませんし、要件さえ満たせばどちらからも支払いを受けることができます。

このような場合、どちらに請求すると良いのでしょうか。

(1)原則、自動車保険(自賠責等)優先(自賠先行)がお勧め

一般的に、原則として自動車保険(自賠責等)を先に請求することが多いようです。

その理由は以下の通りです。

① 補償項目が幅広い

自賠責保険等は労災保険の給付より幅が広く、前述の通り精神的苦痛に対する慰謝料が支払われたり、療養費の対象が労災保険より幅広いのです。

② 休業損害の補填が大きい

自賠責保険等では、休業損害が原則として100%てん補されます(労災保険では60%+特別支給金の20%)。

(2)一部の場合においては労災保険優先(労災先行)がお勧め

例えば、次のようなケースでは、労災保険を優先したほうが被災労働者にとって有利になることがあります。

① 被災労働者にも過失がある場合

自賠責保険は、被災労働者の過失割合が70%以上になると減額されてしまいます。

任意保険からお金を受け取る場合でも過失相殺が行われます。

他方で、労災保険は本人に過失があっても支給金が減額されることはありません。

② 相手方が自賠責保険にしか加入していない

自賠責保険の限度額は治療費、治療関連経費、休業損害、慰謝料等の合計で120万円なので、損害額が大きい場合には補償が不十分となるおそれがあります(後遺障害・死亡分は別途支給)。

③ 負傷の程度が重い

治療が長期化すると自動車保険会社の負担が大きくなるため、治療経過の確認や早期示談の確認が頻繁に入り、最終的に治療の「打ち切り」を提案してくることもあります。

被災者側の精神的な負担は非常に大きなものになり、治療に専念できなくなる可能性があります。

他方で、労災保険の場合には、それほど急な打ち切りを求められることはあまりなく、じっくりと治療に専念できることが多いといえます。

4、第三者行為災害における労災請求手続き

本項では、第三者行為災害における労災請求の手続きについて解説していきましょう。

(1)被災者側が提出する書類

被災者等は労災の給付請求書のほか、「第三者行為災害届」を提出します。

この提出に際し、さらに次の書類を添付します。

なお、正当な理由なく第三者行為災害届を提出しないと、労災保険給付が受けられないことがありますので注意が必要です。

このうち、「念書(兼同意書)」によって、上述した示談に関する注意点を被災者がしっかり理解しているかの確認が求められています。

「第三者行為災害届」に添付する書類 」

添付書類名
交通事故による災害
交通事故以外による災害
備考

念書(兼同意書)


(詳細後述)

「交通事故証明書」または「交通事故発生届」


自動車安全運転センターの証明がもらえない場合は「交通事故発生届」

示談書の謄本


示談が行われた場合(写しでも可)

自賠責保険等の損害賠償金等支払証明書または保険金支払通知書


仮渡金または賠償金を受けている場合(写しでも可)

死体検案書または死亡診断書


死亡の場合(写しでも可)

戸籍謄本


死亡の場合(写しでも可)

(2)第三者(加害者)が提出する書類

労災保険給付の原因となった災害を発生させた第三者は、「第三者行為災害報告書」を提出するよう、労働基準監督署から求められます。

第三者に関する事項、災害発生状況および損害賠償金の支払状況などを確認するために必要な書類です。

提出を求められた場合には速やかに提出することが必要です。  

関連記事: