7、事実婚(内縁)の夫婦の間の子どもは法的にどう扱われる?
すでに何度も触れていますが、事実婚の夫婦間に生まれた子どもは、法律上は非嫡出子として扱われます。この場合、母親と子どもとの親子関係は分娩の事実から当然に証明できますので何の手続もいりませんが、父親と子どもとの間に法律的な親子関係を生じさせるには父親が子どもを認知する必要があります。
この認知をしないと、父親と子どもとの間に法律的な親子関係が発生せず、相続もできないことになりますので、必ず認知の手続を取りましょう。
なお、認知をしても、子どもの親権は母親が持つことになりますし、子どもの姓も母親の姓になります。
現在の法制度は、子どもとの関係の点では、事実婚は届出婚と比べて大変不便であるということができるでしょう。
8、事実婚(内縁)を解消した場合に慰謝料や財産分与はもらえる?
事実婚も、届出婚の離婚と同様に夫婦関係を解消することが考えられます。
事実婚の場合には婚姻届を出していませんので、届出婚のように離婚届を提出したりする必要はなく、本人同士が事実婚状態を解消すればいい(つまり同居を解消すればよい)のですが、届出婚で認められている慰謝料や財産分与などの離婚給付は事実婚でも認められるのでしょうか?
(1) 慰謝料
事実婚でも、一方当事者に夫婦関係の破たんの責任がある場合には、他方が慰謝料を請求することは認められます。
事実婚と届出婚は婚姻届をしたかどうかという形式面での違いがあるのみで、実質的にはいずれの場合にも夫婦であることに違いはありませんので、慰謝料についても同じように考えてよいのです。
ただ、事実婚では、本当に夫婦の関係にあったのかどうか、法律婚と違いわかりづらいのです。ここで、事実婚の「証明」が必要となります。住民票は冒頭のように書いておくべきです。
離婚慰謝料について詳しく知りたい場合は「離婚慰謝料の相場と弁護士が教える高額獲得する方法」をご参照ください。
(2) 財産分与
財産分与についても慰謝料と同様です。
届出婚に関する財産分与の規定(民法768条)は事実婚の場合にも準用(同じように適用)され、2人で協力して築いた財産は事実婚解消時に公平に分配することになります。
財産分与について詳しく知りたい場合は「財産分与|離婚時にできるだけ高額を獲得するために知っておくべき全てのこと」をご参照ください。
(3)年金分割
事実婚の場合にも年金分割は認められますが、届出婚の場合と異なる扱いになっています。
事実婚の場合、年金分割の対象期間は事実婚の開始時から解消時までの期間となりそうですが、事実婚は届出婚と違って届出がないためその期間を特定することが困難です。そのため、妻側が第3号保険者の期間(つまり扶養に入っている期間)に限って分割の対象とすることとなっています。
年金分割について詳しく知りたい場合は「離婚時の年金分割をできるだけ多く獲得するための全手順」をご参照ください。
(4)養育費
養育費についても慰謝料や財産分与と同様に事実婚においても請求できます。
そもそも、養育費は子どもを育てるのにかかる費用を両親が分担するというものです。子どもの親であることは、両親が届出婚だったか事実婚だったか、ということとは関係がありませんので、事実婚であっても親である以上は養育費を負担すべきということになります。
養育費について詳しく知りたい場合は「離婚時の養育費の相場とできるだけ多くの養育費をもらうための方法」をご参照ください。
(5)婚姻費用
事実婚の夫婦も互いに扶養の義務を負うのは届出婚と同様です。したがって、事実婚の場合にも婚姻費用の分担請求を行うことは考えられます。
ただし、届出婚でよくあるように、離婚が成立するまでの別居期間中の生活費として婚姻費用分担請求を行うことは、事実婚の場合には困難です。というのは、事実婚の場合には、当事者が同居を解消した時点で事実婚関係は終了することになるためです。
したがって、事実婚において婚姻費用分担請求が認められるのは、単身赴任や入院などのように別居が一時的なものである場合に限られるでしょう。
9、事実婚(内縁)の有名人
事実婚を選択している有名人には、F1ドライバーのジャン・アレジ氏と結婚した後藤久美子さん、映像ディレクターと結婚した椎名林檎さん、実業家と結婚した萬田久子さんなどがいます。
事実婚を選択したのにはそれぞれ事情があるのでしょうが、いずれも自立した女性をイメージさせる方々ですね。
まとめ
事実婚についての法律的な知識やメリット・デメリットなどをまとめてみました。
現在の法制度では、事実婚には様々なデメリットがあります。特に、子どもとの関係に関するデメリットは無視できないものがあります。しかし、現代の女性にとって事実婚はメリットも多いと言えるでしょう。
事実婚を選択する場合には、これらのメリット・デメリットを理解し、よく検討した上で決めることが必要でしょう。
監修者:萩原 達也弁護士
ベリーベスト法律事務所、代表弁護士の萩原 達也です。
国内最大級の拠点数を誇り、クオリティーの高いリーガルサービスを、日本全国津々浦々にて提供することをモットーにしています。
また、所属する中国、アメリカをはじめとする海外の弁護士資格保有者や、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも当事務所の大きな特徴です。
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