飲酒運転の同乗者も同罪!違反点数と罰金について解説

飲酒運転の同乗者も同罪!違反点数と罰金について解説

3、運転者の飲酒を同乗者が知らなかった場合

飲酒運転同乗罪は、同乗者が運転者の飲酒を知っていた場合に成立します。

では、運転者の飲酒について知らなかった場合、同乗者の処分はどうなるのでしょうか。

(1)同乗者は処分されない

飲酒運転同乗罪は、飲酒運転の車に同乗し、かつ、下記3要件を満たした場合に限り成立します。

運転者が飲酒していることを知っていた
運転者に対して、自己の運送を要求または依頼した
同乗した車両は、旅客運送業に供されるものではない

したがって、同乗者が運転者の飲酒について知らなかった場合、飲酒運転同乗罪は成立せず、処罰されることはありません。

例えば、あなたがまったく別の場所にいる友人に頼み、車で迎えにきてもらったとします。

その友人が飲酒運転であることを伝えないまま運転し、あなたも友人が飲酒運転であることに気づかないまま(知らないまま)その車に同乗した場合、処罰されるのは運転者である友人だけで、あなたが処罰されることはありません。

(2)「知っていたはず」な客観的証拠がある場合

では、運転者の飲酒について知っていた場合にも、取り調べにおいて「知らなかった」と主張すれば、処罰を免れることができるのでしょうか。

結論から申し上げますと、「知らなかった」を通すことは難しいでしょう。

同乗者が運転者の飲酒について知っていたかどうかは、運転者、同乗者からの供述内容だけでなく、その他、様々な証拠をもとに判断されます。

そのため、同乗者が運転者の飲酒について「知っていたはず」であると判断できる客観的証拠がある場合、取り調べで「知らなかった」と言い張ったとしても、飲酒運転同乗罪に問われる可能性があります。

運転者の飲酒について知っていたと判断されやすいケースとしては、以下のような例が挙げられます。 

運転者と一緒にお酒を飲んでいた
運転者の顔が赤い、運転者からお酒のにおいがするなど、明らかに飲酒をしていることがわかる状態である

(3)「知らなかった」と嘘をついて嘘とバレたらどうなる?

では、飲酒運転の同乗者が、運転者の飲酒について知っていたにもかかわらず、「知らなかったと」嘘をつき、これがバレてしまった場合はどうなるのでしょうか。

捜査機関の取り調べにおいて、自らの罪について嘘をつくことを、直接的に罰する法律はありません。

そのため、「嘘をついたこと」自体を処罰されることはありませんが、これによって裁判所や捜査機関の心証を悪くし、量刑が重くなる可能性はあります。

4、飲酒運転で事故!同乗者の処分はどうなる?

飲酒運転で事故を起こしてしまった場合、その車の同乗者にはどのような処分があるのでしょうか。 

単に、飲酒運転の車に同乗したことだけでなく、運転車が起こした事故についても、責任を問われるのでしょうか。

(1) 飲酒運転で事故を起こした場合の同乗者の処分~物損事故~

飲酒運転で事故を起こしてしまったものの、相手方にケガがなく、物損事故として処理された場合、同乗者はどのような処分を受けるのでしょうか。

①行政処分について

飲酒運転で物損事故を起こした場合、同乗者がその事故について行政処分を受けることはありません。

単に、飲酒運転の同乗者として行政処分を受けるにとどまります。

飲酒運転の同乗者に対する行政処分については、「1、飲酒運転の同乗者の責任とは?」をご参照ください。

②刑事処分について

物損事故の場合、原則として、運転者、同乗者ともにその事故についての刑事罰は受けません。

飲酒運転の同乗者として、飲酒運転同乗罪による刑事罰を受けるにとどまります。

飲酒運転の同乗者に対する刑事処分については、「1、飲酒運転の同乗者の責任とは?」をご参照ください。 

ただし、以下のような場合は、物損事故であっても、運転者が刑事処分を受ける可能性があります。

物損事故の運転者に対する刑事処分

行為

刑事処分の内容

過失建造物損壊罪

6ヵ月以下の禁錮または10万円以下の罰金

危険防止措置をせず現場から逃げた

(当て逃げ)

1年以下の懲役または10万円以下の罰金

物損事故を警察に報告しなかった

3か月以下の懲役または5万円以下の罰金

そして、事故の被害が大きい場合、事故前後の状況などから同乗者にも責任を負わせるのが相当であると判断された場合などは、同乗者も刑事処分を受ける可能性があります。 

刑事処分の内容は、同乗者が運転者の違法行為について、どのような影響を与えたのか、どこまで加担したのか、によって変わります。 

そして、幇助犯・教唆犯として処分される場合は運転者(正犯)の刑より減刑されますが、教唆犯、共同正犯として処分される場合は、運転者と同じ刑が科せられます。 

幇助犯…運転者の違法行為を手助けした
教唆犯…違法行為をするよう、運転者をそそのかした
共同正犯…運転者と共同して、違法行為を実行した

(2) 飲酒運転で事故を起こした場合の同乗者の処分~人身事故~

飲酒運転で人身事故を起こした場合、同乗者はどのような処分を受けるのでしょうか。

 ①行政処分

飲酒運転で人身事故を起こした場合、運転者は、被害者のケガの程度や事故の過失割合などに応じて、以下のような行政処分を受けます。

ただし、これはあくまでも運転者に対する行政処分であり、同乗者に、事故についての行政処分が科せられることはありません。 

人身事故を起こした運転者に対する付加点数

被害の程度

事故の原因が専ら

加害者の過失

左記以外

死亡

20点

13点

全治3か月以上または

後遺障害あり

13点

9点

全治30日以上~3か月未満

9点

6点

全治15日以上~30日未満

6点

4点

全治15日未満

3点

2点

②刑事処分

飲酒運転で人身事故を起こした場合、運転者には以下の刑事処分が科せられます。 

人身事故を起こした運転者に対する刑事処分

罪名

刑事罰

危険運転致死傷罪

死亡

1年以上20年以下の懲役

負傷

15年以下の懲役

過失運転致死傷罪

 

7年以下の懲役もしくは禁錮、

または100万円以下の罰金

そして、被害の程度や事故の状況に照らし、同乗者も責任を負うべきであると判断された場合、幇助犯、教唆犯、共同正犯として処罰される可能性があります。

同乗者が受ける刑事処分の内容は、運転者の処分内容によって決まります。

幇助犯として処罰される場合は減刑がありますが、教唆犯、共同正犯として処罰される場合は、運転者と同じ刑が科せられます。

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