鑑定留置の意味とは?弁護士が場所、期間、その後の流れを解説

鑑定留置の意味とは?弁護士が場所、期間、その後の流れを解説

3、鑑定留置後の流れ

(1)検察官が起訴するかを判断する

鑑定留置が終了すると、残りの拘留期間で検察官が責任能力の有無を検討し、起訴するか否かを判断します。

検察官は医師の鑑定結果を参考にしますが、起訴の決定権は検察官だけが持っているため、最終的には検察官が判断することになります。

(2)不起訴となった場合

検察官による検討の結果、「責任能力がなく罪に問えない」として不起訴になった場合でも、被疑者が直ちに社会に復帰できるとは限りません。

事件によって、検察官が都道府県知事に通報したり、医療観察法に基づく申立てを行ったりするなどの適切な措置をとり、被疑者が入院することもあります。

(3)起訴された場合

検察官が責任能力ありと判断して起訴した場合は、裁判で責任能力の有無が審理されることになります。

殺人や放火などの重大事件は裁判員裁判となるため、一般市民も参加して、裁判官とともに責任能力の有無を判断しなければなりません。

責任能力がなければ無罪となりますが、審理の結果としては「責任能力あり」とされることが多く、通常と同様の刑罰が科されます。

心神喪失・心神耗弱と判断された場合、重大犯罪については医療観察法に基づいて入院することになります。

4、鑑定留置を争う方法

(1)拘束期間を争う場合

鑑定留置の決定が出ても、弁護士が裁判所に準抗告を申立て、取消しや期間の短縮を求めることが可能です。

鑑定留置は2~3ヶ月という長期にわたって身体を拘束する処分であるため、弁護士が不適切と判断すれば、その是非をめぐって争いになることがあります。

実際に、3ヶ月半の鑑定留置期間の決定をした事件において、「短期間で実施可能な簡易鑑定を行うなどして本格的な精神鑑定の必要性を吟味すべきであって、これを経ることなく、直ちに本格的な精神鑑定を行うことを前提とした3か月以上の期間にわたる身柄拘束を認めることは、被疑者に対して過度の負担を強いるもの」として、14日間に限った鑑定留置期間のみを認める変更決定をしたものがあります(岐阜地決平成27年10月21日)。

鑑定留置がなされるのは、責任能力が問題となる難しい事件であるため、弁護士の力量が問われることになります。

(2)鑑定結果を争う場合

鑑定結果に納得がいかない場合、再度の鑑定の請求は、検察官からなされることもあります。

2017年7月に発生し、世間をにぎわせた無差別殺人事件(神戸市北区5人殺傷事件)では、鑑定留置中の精神鑑定で、被告人の犯行時の精神状態は不安定だった可能性があるものの責任能力に問題はないといったん判断されましたが、責任能力を慎重に見極めるため、検察官が再度の鑑定の請求を行い、裁判所がこれを認めました。

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