目黒蓮、棒立ちのしぐさが見事。人に合わせてしまうタイプの主人公は一番何もできない/『海のはじまり』

目黒蓮、棒立ちのしぐさが見事。人に合わせてしまうタイプの主人公は一番何もできない/『海のはじまり』

目黒蓮、人に合わせてしまうタイプの夏の棒立ちの仕草が見事


みんな海を甘やかしすぎかと思えるほど慈しんでいる物語かと思いきや、実は夏が一番何もできなくて、みんなが気を使って彼の居場所を作っているような物語でもある。「夏くんが三つ編みしてくれたからふわふわ」「またやってね」と海は気遣っているわけではなく本心からそう言うのだろう。

第6話は津野の素直な面が出たのと同時に、夏の動きの悪さが際立ってしまう。夏はとても不器用な人で仕方ないのだが、食事のときも、髪を結うときも、図書館でも、ことごとく自分の何もできなさを突きつけられて、途方にくれて見える。


目黒蓮はこのなにもかも手をこまねいてしまう感じがよい。実際の目黒はもっと動きのいい人であろう。にもかかわらず、こんなにも何もできない、棒立ちの仕草が見事だし、逆に親しみがわく。気持ちが一歩遅れがちな人はいるものだから。

人に合わせてしまうタイプで、自分で決めることが苦手。待ってないで自分で動けと職場でもよく言われるし、実際、ある程度やることを決められているほうが楽。という夏のような人はけっこういるのではないだろうか。

どこまでもやさしい、他者を肯定する世界が海を介して伝播

朱音は夏のそういうところが子育てに向いていると言う。自分のペースを崩されてイライラしたりしない、そこが夏のいいところなのだと朱音は彼を肯定する。ああもうどこまでもやさしい、他者を肯定する世界は、海を介して大人たちに伝播(でんぱ)していく。たぶん、海がいなかったら、みんな自分勝手にぎすぎす生きてきたのではないだろうか。


何もできない夏だけれど、カメラのシャッターは押せる。何もできないけれど、夏は海を見つめている。目黒蓮、カメラのCMに出そう。カメラを構える姿が似合う。

夏はまだまだ海に対しておじけたところがあり、南雲家も月岡家も弥生も、夏と海をどう対応するか悩んでいる。でも、冒頭に記したように、彼らが思う以上に、水季と弥生は運命的なので、心配はないだろう。


それよりもこのドラマで大事なのは、子宮頸がんの検診を受けることなのだ。早めに検診を受けていれば、水季のような悲しい運命をたどる可能性は少なくなる。

第2話に続き、第6話でも弥生が後輩社員に検査の大切さを語った。テレビで子宮頸がん疾患啓発の新キャンペーン『いつかじゃなく、「今」だ。』のCMを見かけるたび、『海のはじまり』を思い出す。

<文/木俣冬>

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