5、精神的苦痛で獲得できる損賠賠償・慰謝料の相場
では、損害賠償請求の相場はどのようになっているでしょうか。
いくつか代表的な例をみてみましょう
(1)離婚慰謝料の相場
離婚の慰謝料と一口に言っても、離婚に至った原因によってその相場は異なります。
不倫・浮気が離婚の原因の場合には慰謝料の相場は100万円~500万円程度です。
DV・モラハラが離婚の原因の場合には50万円~300万円程度です。
家にお金を入れないなどで「悪意の遺棄」と評価できる場合には50万円~300万円程度です。
セックスレスが原因の場合には100万~300万円程度です。
(2)婚約破棄の慰謝料の相場
婚約を破棄された場合でも精神的苦痛は発生しますので、損害賠償の請求ができます。
この場合の相場は30万円~300万円程度になります。
(3)不当解雇の慰謝料の相場
労働契約を一方的に打ち切りにされるような不当解雇のケースでも、精神的苦痛は発生するため損害賠償の請求ができます。
この場合の相場は10万円~数十万円程度です。
(4)暴行・傷害の被害にあった場合の慰謝料の相場
人に暴行をされた場合や、その結果ケガをした傷害の被害にあったような場合は、治療費はもちろん精神的苦痛が発生しておりますので、損害賠償請求ができます。この場合の相場は暴行の場合には10万~30万、傷害の場合には30万~50万程度になります。
参照:弁護士が教える!暴行・傷害罪の被害に遭った際の示談金の相場と交渉のコツ
(5)交通事故の場合
交通事故の被害にあった場合には、治療費はもちろん精神的苦痛が発生しておりますので、損害賠償請求ができます。
後遺障害が残るような交通事故は実務上慰謝料については定型化されており、どのようなケガをしてどのくらいの期間治療したかによって決まっています。
むちうちのような場合、6ヶ月間通院した場合には、いわゆる裁判所基準で89万円とされています。
(6)高額な損害賠償・慰謝料を獲得するには?
見ていただいたとおり、精神的苦痛に基づく損害賠償請求をする場合には大きな幅があります。
どのようにすれば、高額の慰謝料を取得できるでしょうか。
慰謝料の支払いは、どのような加害行為をしたかということと、どのような被害を受けたのか、ということをきちんと証拠に基づいて証明する必要があります。
どのようなことをしたかということを総合的に判断して、加害者が何をやったのか?ということを証拠に基づいてどこまで認定してもらえるのかを考え、加害行為がどれだけ悪質だったか?ということを主張します。
どのような被害を受けたのかという主張も同様に、裁判において客観的に証明できるようにします。
ケガをしている場合にはきちんと医者にかかって診断書を取ることは重要です。
どのような資料をそろえてどうやって主張をすればよいかは、たくさんの過去の判例を把握する必要があります。
ですので、弁護士に相談をすることだけでもしておくべきでしょう。
6、精神的苦痛を理由に損害賠償が認められた事例
たとえば、直近の裁判ではどのような精神的苦痛が認められたでしょうか
(1)不当な配置転換命令
家族の介護などの事情があるにもかかわらず、地方への配転命令を出すなどして、適応障害を発症するような事態に陥った方が精神的苦痛に基づく慰謝料を請求した事例では、110万円の支払いが認められました。
参考:https://www.asahi.com/articles/ASL2V6HC1L2VUTIL059.html
(2)東京電力にふるさとを奪われた市民
東京電力福島第1原発事故で避難指示区域となった福島県南相馬市小高区の住民らがふるさとを奪われた精神的苦痛を受けたとして東京電力を相手に損害賠償請求を行った事例では、一人につき1000万円の慰謝料の支払いを認めました。
配信: LEGAL MALL