偽札作成・使用は何罪?犯罪の重さと法的リスクを弁護士が解説!

偽札作成・使用は何罪?犯罪の重さと法的リスクを弁護士が解説!

偽札を作成したり使用したりすることは犯罪行為です。

この記事では、偽札に関わる犯罪の概要として、偽札作成時や使用時に成立する罪、さらに知らずに持っていた場合の法的影響について、詳しく解説します。

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1、偽札を作成したときの罪

まずは、偽札を作成すると成立する犯罪を紹介します。

(1)通貨偽造罪が成立する

行使する目的で通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造する行為には、「通貨偽造罪」が成立します。

通貨偽造罪は、流通している通貨が偽造され、通貨そのものに対する信頼が揺らいでしまう事態を防ぐために規定されています。

通貨偽造罪が成立するには、「行使の目的」が必要です。教材や標本として使う目的で作成し、流通させる気がない場合には通貨偽造罪とはなりません。

対象になるのは、日本で通用している「1万円札」「500円玉」といったお札・硬貨を「偽造」または「変造」した場合です。

「偽造」とは、通貨だと誤解される見た目のものを作成することをいいます。お札をコピーして偽札を作るのが典型例です。

「変造」は、本物の通貨を加工して、別の通貨だと誤解される見た目のものを作成することです。

通貨だと誤解されるものを作成する点では偽造と同様ですが、本物の通貨そのものから作る点が異なります。

なお、外国の通貨を偽造・変造した場合には、「外国通貨偽造罪」という犯罪が成立します。

(2)偽札に関する罪は重い

通貨偽造罪を犯すと、「無期または3年以上の懲役」が科されます。これは、「強制わいせつ等致死傷罪」や「身代金目的誘拐罪」と同等の重い刑罰です。

通貨に対する信頼が損なわれると、経済活動に支障が生じかねないことから、重大な犯罪として必ず懲役刑を科すこととしています。軽い気持ちであっても、偽造通貨を作成すると重い刑に問われてしまうのです。

(3)準備をしただけで罪になる

通貨を偽造しようとしたものの、技術が足りないなどの理由で成功しなかった場合には、「通貨偽造未遂罪」が成立します。また、偽造目的でプリンターやインクなどの器械・原料を用意しただけでも「通貨偽造等準備罪」に問われます。

偽札を実際に完成させなくても、準備をしたり、作成に取りかかったりすれば犯罪になってしまうのです。

2、偽札を使用したときの罪

続いて、偽札を使用したときに成立する犯罪をみていきましょう。

(1)始めから知っていれば偽造通貨行使等罪が成立

偽札だと始めから知って使用すれば、「偽造通貨行使等罪」が成立します。

偽造通貨行使等罪も、通貨偽造罪と同様に「無期または3年以上の懲役」が科される重大な犯罪です。

偽造した本人が使用した場合には、通貨偽造罪と偽造通貨行使等罪がいずれも成立します。

科される刑は、「無期または3年以上の懲役」で変わりません。

「行使」とは、偽造された通貨を本物として流通させることです。お店で店員に渡す場合はもちろん、自動販売機に投入する行為も含まれます。信用能力を示すために相手に見せるだけであれば「行使」にはあたらず、偽造通貨行使等罪は成立しません。

偽札であることを伝えて他人に渡したり、偽札だと元々知っている人に渡したりする行為も「交付」として同様に処罰対象です。

なお、偽札だと知って受け取った側には「偽造通貨等収得罪」が成立し、「3年以上の懲役」が科されます。

(2)後から気づいても使用すると犯罪に

では、手にした時点で偽札とは知らなかったものの、後から気がついて使ってしまったケースではどうでしょうか?

この場合には、「偽造通貨収得後知情行使等罪」が成立します。

刑は「使用した額面価格の3倍以下の罰金または科料(ただし2000円以下にはできない)」です。1万円を使った場合には最高3万円、最低2000円となります。

通貨偽造罪や偽造通貨行使等罪に比べると刑は軽いですが、犯罪であることには変わりありません。

(3)詐欺罪は成立する?

「偽札を買い物に使うと店員を騙しているから、詐欺罪も成立するのではないか」とお考えになるかもしれません。

しかし、一般的には、偽造通貨行使等罪や偽造通貨収得後知情行使等罪だけが成立し、詐欺罪は成立しないと考えられています。

詐欺罪は「10年以下の懲役」となっており、偽造通貨収得後知情行使等罪と比べてかなり重い刑です。偽札の使用で詐欺罪を問われてしまうと、偽造通貨収得後知情行使等罪を軽い処罰にした意味がなくなってしまうことから、詐欺罪は成立しないとされます。

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