タレント・山本量子さんが48歳で逝去 罹患していた「子宮頸がん」「卵巣がん」の原因・症状を医師が解説

タレント・山本量子さんが48歳で逝去 罹患していた「子宮頸がん」「卵巣がん」の原因・症状を医師が解説

関西のラジオ番組などでアシスタントを務めたタレントの山本量子さんが、8月18日に亡くなったことを所属事務所が公式サイトで発表しました。48歳でした。山本さんは2014年に子宮頸がん、2022年に卵巣がんを患っていることを公表し、闘病生活を送っていました。
今回の記事では、子宮頸がん・卵巣がんの原因や症状について、医師に伺いました。がんは早期発見・早期治療が生存率を大きく分ける疾患です。本記事で子宮頸がん・卵巣がんについての知見を深め、予防・早期発見に努めましょう。

※この記事はMedical DOCにて【子宮頸がんの初期症状は?進行した子宮頸がんの症状や診断・治療方法・再発したときの症状も解説】【「卵巣がんの症状」はご存知ですか?原因・セルフチェック法も医師が解説!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

≫【イラスト解説】 卵巣がんを発症すると体のどこに「痛み」を感じるの?

監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

監修医師:
木村 香菜(医師)

名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

子宮頸がん

子宮頸がんの原因

子宮頸がんのほとんどは、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスへの感染が原因で発症します。
HPVには約100種類あり、その中でもハイリスク型と呼ばれるタイプのものが子宮頸がんを引き起こすとされているのです。
HPVは性的接触が原因で女性にも男性にも感染します。性的接触のある女性の過半数が一度は感染することがあるとされる、ありふれたウイルスなのです。
HPVに感染しても9割程度の人は免疫のはたらきなどによって自然にウイルスが消失しますが、1割程度の人はHPVウイルスが排除されず感染が持続してしまいます。
自然治癒しなかった場合には感染が持続して異形成と呼ばれるがんの前段階を経て、子宮頸がんに進行します。
子宮頸がんの進行は、がんの前段階である異形成・表面にがんがある状態の上皮内がん・周辺組織に入り込む浸潤がんという過程をたどるのが一般的です。
子宮頸がんはⅠ期からⅣ期に分類され、Ⅳ期まで進行すると膀胱や直腸の粘膜への浸潤や、離れた臓器への転移を起こします。
がんが子宮の外へ広がると、骨盤痛や腰痛・下肢のむくみ・血便や血尿など、子宮以外の部位にも症状が出ることがあるため、早めに婦人科を受診しましょう。

子宮頸がんの初期症状

多くの子宮頸がんは、がんの前段階である子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)や上皮内腺がん(AIS)を経て発症します。
この段階では、一般的におりものの異常・出血・腹痛などの自覚症状はほとんどないといわれています。
症状が出た時にはすでに進行してしまっているケースが多いため、自覚症状がなくても子宮頸がん検診を定期的に受けて早期発見を心がけましょう。
子宮頸がん予防のワクチンを打っていれば発症することはないと思っている方もいるでしょう。
しかし、ワクチンの効果は子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)のうち一部のウイルスの予防にとどまります。
すべてのHPVを予防できるわけではないため、ワクチンを打っている方も定期的に子宮頸がん検診を受けましょう。
検診の結果、がんの前段階である異形成と判断される場合もあるでしょう。異形成には軽度・中等度・高度の3段階があります。
軽度の場合は自然治癒することもありますが、進行するケースもあるため定期的に経過観察を受けることが大事です。

進行した子宮頸がんの症状

初期段階ではほとんど自覚症状がみられない子宮頸がんですが、進行するとさまざまな症状が現れます。
以下のような症状が現れた場合には注意が必要です。

おりものの異常

不正出血

経血量の増加

性交痛

下腹部の痛み

一つずつ詳しくみていきましょう。

おりものの異常

子宮頸がんが進行すると、においを伴う濃い茶色のおりもの・膿のようなおりもの・水っぽいおりものなどがみられることがあります。
おりものの様子が明らかにいつもと違う場合は、子宮頸がんの症状である可能性もあるため注意が必要です。

不正出血

子宮頸がんが進行すると、月経時以外にも出血が起こることがあります。
また、すでに閉経している女性の場合にも、子宮頸がんの症状として出血がみられるケースがあるでしょう。
不正出血が気になる場合には、婦人科を受診しましょう。

経血量の増加

子宮頸がんが進行すると、経血の量が増加したり月経期間が長くなったりすることがあります。
経血の量が増える病気は子宮頸がんのほかにも子宮筋腫や子宮腺筋症などが考えられますが、経血量の増加のほかにも子宮頸がん特有の症状がみられる場合は注意が必要です。
子宮頸がんの可能性を考えて婦人科を受診することをおすすめします。

性交痛

子宮頸がんの初期には、通常は性交痛が起こることはないとされています。しかしがんが進行してくると、性交時に痛みや出血などが起こることがあります。
ただし、性交痛は子宮筋腫・子宮内膜症・女性ホルモン(エストロゲン)の低下など、子宮頸がん以外の原因で起こることも考えられます。
出血がある場合やほかの子宮頸がん特有の症状もみられる場合には、子宮頸がんを疑う必要があるでしょう。

卵巣がん

卵巣がんの原因

卵巣がんの原因は、子宮頸がんや子宮体がんとは異なり、はっきりとした原因はわかっていない部分もありますが、以下に卵巣がんのリスク因子について解説していきます。

乳がんまたは卵巣がんの家族歴がある

卵巣がんの 5%程度は遺伝が原因だとわかっています。遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)という病気です。これは、主に乳がんの原因遺伝⼦(BRCA)に異常が生じていることで発生します。卵巣がんは通常では中高年の女性に好発しますが、それよりも若い年齢で上⽪性がんなどが発生します。
親や姉妹に、若い時期に乳がんや卵巣がんになった⼈がいる場合には、遺伝性の病気のカウンセラーなどがいる医療機関を受診し、検診を適切に受けるようにするなどの対応をとると良いでしょう。

⼦宮内膜症によるチョコレート嚢胞がある

卵巣には、良性の腫瘍ができる場合があります。例えば、子宮内膜症により卵巣内にチョコレートのような古い出血がたまると、卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)となります。⽇本において⼦宮内膜症による卵巣チョコレート嚢胞ががん化することが明らかになっています。
もしも卵巣嚢腫がある場合には、⼩さければ低⽤量ピルなどの薬物療法を⾏って、経過を観察します。50歳前後の閉経周辺期以降や、若くても 10cm 以上のサイズが大きいものがある場合は、がん化を予防するために手術によって摘出を考えたほうがいいとされています。

肥満・喫煙

肥満は卵巣がんによる死亡リスクを増加させるという報告があります。また、喫煙は一部の卵巣がんのリスクを高めるという報告もあります。
このように、生活習慣も卵巣がんの発生に関与しています。

妊娠経験がない

卵巣がんは、排卵回数が多いほどリスクが高まるという報告もあります。途切れのない排卵は卵巣上皮に損傷を与え、卵巣がんの発生率を高める可能性があるのです。そのため、妊娠経験がなかったり、不妊であったりして妊娠せずに過ごす期間が長くなり、生涯の月経回数が多くなると、その分排卵回数も増えるために卵巣がんのリスクが増すと考えられます。

卵巣がんの代表的な症状

卵巣がんの多くは上皮性腫瘍です。そこで、この記事では上皮性の卵巣がんの代表的な症状を中心に解説していきます。

お腹が大きく膨れる

卵巣がんそのものが大きくなったり、腹膜に播種したりすることで腹水がたまり、お腹が膨れてくるという症状があらわれます。
特に身体の他の部位は太くなっていないのに、お腹が前に張り出すような膨らみ方をしてきた場合には、卵巣がんの他にも子宮筋腫などの他の婦人科系の病気や、肝臓が悪くなり腹水がたまっている可能性もありますので、婦人科や内科を受診するようにしましょう。

下腹部やわき腹のしこり

卵巣がんが大きくなると、横になって下腹部やわき腹を触ったときに、しこりを感じることがあります。 痛みを伴うこともあれば、そうでない場合もあります。
いずれにしても、婦人科を受診して、超音波検査などで婦人科系の疾患がないかどうかをチェックすることが大切です。

食欲低下

卵巣がんが腹膜転移すると、胃や小腸、大腸などの消化管の動きが妨げられる場合もあります。また、腹水がたまり、腹部の膨満感が生じることもあります。こうした原因から、食欲がなくなる症状が出現する可能性があります。
食欲がなくなることに加えて、お腹が膨れてくるなどの症状がある場合には、早めに内科や婦人科を受診するようにしましょう。

頻尿や便秘、足のむくみ

卵巣がんやリンパ節転移の病変が大きくなると、膀胱や直腸を直接圧迫し、頻尿や便秘につながります。
また、がんが大きくなるとリンパ流路が障害により生じたりすることで足のむくみが出現することもあります。

下腹部の強い痛み

卵巣がんが破裂したり、卵巣がんがお腹の中でねじれる「茎捻転(けいねんてん)」を起こしたりすると突然の強い下腹部痛が出現することもあります。
こうした強い痛みが現れた場合には、早急に医療機関を受診するようにしましょう。

息苦しさ

卵巣がんが肺に転移すると、胸水や呼吸困難などの症状が出現することがあります。
肺や心臓などの疾患の可能性もあるため、早めに内科を受診するようにしましょう。

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