同じ境遇のはずの“上戸彩”に抱いた違和感…「当事者の漫画家」が群像劇に込めた思い<漫画>

同じ境遇のはずの“上戸彩”に抱いた違和感…「当事者の漫画家」が群像劇に込めた思い<漫画>

執筆する上で意識していること


――執筆する上では、どんなことを意識しているのですか?

スタニング沢村:トランスジェンダーの子供達に届いてほしいということと、読み手の間口が広がるように描くこと、それをどう両立させるか常に葛藤しています。どれくらい「自分ごと」として想像してもらえる形で届けられるか悩んでいますね。

 当事者ではない人にとって「自分ごと」ではないのは当たり前なのですが、「自分の友達の悩み」くらいの感じで捉えてもらえたらという思いもあって、「佐々田は友達」というタイトルを付けました。

――群像劇にした理由はあるのでしょうか。

スタニング沢村:エッセイ漫画は、本人視点を突き詰めることができるのですが、創作漫画では、本人の視点だけで伝えられることには限界があると思ったんです。友人からの視点を描くことができるので、群像劇にしたいと思いました。

 登場人物の誰かに感情移入してもらえると、その人物の視点から佐々田のことを考えてもらえるかなと思っています。

私が高校生の頃は「死神」でした(笑)


――佐々田には、沢村さん自身が投影されているのですか?

スタニング沢村:抱えている事情や、虫や森林浴や料理が好きなところが同じなので、最初はそう思っていました。でも今となっては、色々なキャラクターに自分の要素が入っているなと思います。

 例えば、自分の問題の根幹から逃げ回りがちなところは高橋と似ているし、オタク的なところは前川さん。私が通っていた高校は私服で、黒づくめの墓掘り人みたいな格好をしていたのでファッション的には「死神」の小野田くんでした(笑)

――佐々田が、陽キャの高橋に絡まれて戸惑っている様子は、学生時代はこういう場面があったなと懐かしく感じました。

スタニング沢村:たまにありますよね、陽キャ側が飽きると終わるんですよ(笑)。からまれている方としては、こそばゆいというか、「なめられてるのかな?」と思ったり。でも、ときには自分がダルがらみする側になってしまうこともあるなと思います。

――作品内のスクールカーストの分布図が面白かったです。

スタニング沢村:私のイメージですけど、軽音部はサブカル系グループ、漫画好きはオタク系グループに分かれているのですが、意外と漫画の貸し借りをしたりして繋がっているところがあると思います。

 佐々田は、周りからは陰キャと言われているかと。自然散策が好きなので、“アウトドア系”のグループがあったら入れるかもしれないですね。

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