古い考え方は年齢や性別に限らず“言語”として受け継がれている
――いまは。
内田「いまはもうそれこそ私の日常になりました。隠さないことが今の私のナチュラルになったので口にできます。ただ結婚した直後の、私のトピックになってしまう間は言いたくありませんでした」
――それにしても、「女性の幸せは、結婚して、子どもを生んでナンボ」だなんて本当に言われるんですね。
内田「言ったのは同世代の女性だったんです。彼女にとっての結婚観はそれでいいと思うし、色んな価値観があっていい。でも、絶対にそれを押し付けられたくは無いなと思ったんです」
――ちょっと聞きづらい内容でもありますが、それこそ映画などの現場は考え方が古い人も多いと聞きます。
内田「いまはリスペクトトレーニングやハラスメント講習といったことを事前に受けることが、映像でも舞台でもかなり当たり前になってきました。
面白い表現を生むためにはもちろん一筋縄(ひとすじなわ)ではいかないことも沢山あります。そこへハラスメントの指導が入ることに対して、過渡期には“そんなんじゃ何もできないじゃないか”みたいな声も聞こえることがありましたが、そこの全体の認識がいっときより出来てきた気がします。
ただ性別や年齢の問題ではなく、“言語”として受け継がれてしまっているものはまだあると思います」
セクハラを相談したら「女優はモテてナンボだから頑張れ」
――過去には女性であることで大変な思いを感じたこともありましたか?
内田「たくさんありました。たぶん弱い存在だと思われているから、単純に怒鳴ったりしやすいとか、みんなで飲み屋に行っても、お茶くみじゃないけど、当たり前に、お酒を作る係や注文を取る係を回されているとか。
過去には強めのセクハラを受けたこともあります。しんどくて近しい人に相談したら、『女優はモテてナンボだから頑張れ』と言われました」
――ひどいですね。
内田「今ではないことだと思いますが、私はいろいろ狭間(はざま)の世代だったのかなと思います。
昭和、平成、令和と生きて来て、それぞれの時代の良さと悪さを知っているからこそ、どの世代もちゃんと今をアップデートして、みんなで寄り添おうとしていく必要が圧倒的にあると思っています」
――ありがとうございました。これからも応援しています。
【内田慈】
1983年3月12日生まれ、神奈川県出身。日本大学芸術学部中退後、特定の劇団に所属せずに、前川知大、前田司郎など様々な新進気鋭の作家・演出家の作品に出演しキャリアを積んできた。08 年に橋口亮輔監督『ぐるりのこと。』でスクリーンデビュー。現在は舞台のみならず、映像作品でも活躍。今年も今年も映画『夜明けのすべて』『水平線』『毒娘』ドラマ『お別れホスピタル』(NHK総合)、『9ボーダー』(TBS)、『Re:リベンジ-欲望の果てに』(フジテレビ)などで印象を残す。現在『お母さんが一緒』『逃走中 THE MOVIE:TOKYO MISSION』が公開。松尾スズキ作・演出の舞台『ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-』に出演中。
<取材・文・撮影/望月ふみ>
【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
配信: 女子SPA!
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