遺族年金を受け取る際、収入があると手取り額に影響があると考えている方もいるでしょう。しかし、遺族年金は基本的に収入があっても手取り額に影響しません。
ただし、遺族年金に関係なく収入が増えれば社会保険料や納税額も変動します。今までよりも多く働く予定の場合は、これまで課税されていなかった税金が課税されるケースがあるため、確認が必要です。
今回は、遺族年金と収入の関係、パート収入が増えると税額がどれだけ変動するかなどについてご紹介します。
遺族年金は収入が増えても問題なく受け取れる?
基本的に、遺族年金を受給する遺族の所得制限はありません。そのため、働きながらでも受給条件を満たしていれば受け取れます。
遺族年金には「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」の2種類があり、それぞれの条件は表1の通りです。
表1
条件 | 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 |
---|---|---|
亡くなった本人の加入状況 | ・国民年金に加入していた
・国民年金に加入していた60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた ・老齢基礎年金を受給中だった ・老齢基礎年金の受給権を有していた |
・厚生年金に加入していた
・厚生年金加入期間中の初診日から5年以内かつその時のけがや病気が原因で亡くなった ・1級もしくは2級の障害厚生(共済)年金を受給中だった ・老齢厚生年金を受給中だった ・老齢厚生年金の受給権を有していた |
該当する遺族(優先順位) | 亡くなった方に生計を維持されていた以下の遺族
1:子どものいる配偶者 2:子ども |
亡くなった方に生計を維持されていた以下の遺族
1:子どものいる配偶者 2:子ども 3:子どものいない配偶者 4:父母 5:孫 6:祖父母 |
出典:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」を基に筆者作成
なお、国税庁によれば、遺族年金はどちらも非課税のため、受給していても所得税や住民税、健康保険料の金額に影響はありません。ただし、亡くなった本人に生計を維持されていた遺族が対象のため、表1に該当する遺族でも所得が高かったり別居していたりする場合は、そもそも受け取れない可能性があります。
さらに、遺族年金は一定条件を満たすと支給停止されるケースもあるため、注意が必要です。
支給停止になる条件は?
日本年金機構によると、遺族基礎年金の受給対象となる子どもとは18歳になった年度の3月31日までの方か、20歳未満かつ障害年金の障害等級1級もしくは2級の状態にある方を指します。そのため、子どもが障害年金の障害等級1級もしくは2級の状態にない場合は、18歳になってから3月31日を超えた時点で遺族基礎年金の条件を満たさなくなるため、支給停止の対象です。
さらに、遺族厚生年金を老齢厚生年金の受給権を有する方が受け取る場合、老齢厚生年金は全額支給となり、老齢厚生年金に相当する額の遺族厚生年金は支給停止となります。例えば、遺族厚生年金が20万円、老齢厚生年金が15万円の場合、遺族厚生年金は15万円が支給停止となり5万円を受け取れます。
老齢厚生年金は働いて厚生年金に加入していた期間および収入によって決まる仕組みです。そのため、収入が増えると老齢厚生年金額が増加し、結果として遺族厚生年金が一部、あるいは全額支給停止になる可能性もあります。
パート収入が増えると健康保険料や住民税に影響が出る
遺族年金自体は支払う税額に影響しませんが、収入が増えると納める税額や保険料が増額します。所得税や住民税、健康保険料は、所得に応じて変動するためです。今回は、以下の条件で月収5万円のときと月収10万円のときの税金や健康保険料を比較しましょう。
●東京都在住
●40歳以上
●月収5万円、年収60万円のときは社会保険未加入
●月収10万円、年収120万円のときは社会保険に加入
●控除は給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除のみ
国税庁によると、まず、年収60万円のときの給与所得控除が55万円なので、税金の計算には5万円を用います。5万円の場合、所得税も住民税も基礎控除額を超えないため、所得税と住民税はかかりません。
一方、全国健康保険協会の「令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」より月収10万円だと介護保険料と健康保険料は年額約6万8088円、厚生年金保険料は年額10万7604円、厚生労働省「令和6年度の雇用保険料率」より雇用保険料が年額7200円の合計18万2892円になります。給与所得控除は55万円のため、税金の計算に用いるのは46万7108円です。
金額を基にすると所得税は0円、住民税は8711円がかかります。
配信: ファイナンシャルフィールド