夏休み明けの登園しぶりや登校しぶりはさぼりではなく、子どもの困りごとが隠れている!? 小児科受診が必要なことも【小児科医】

夏休み明けの登園しぶりや登校しぶりはさぼりではなく、子どもの困りごとが隠れている!? 小児科受診が必要なことも【小児科医】

猛暑の夏休みが明けました。長期休暇明けは、保護者もどっと疲れますが、子どもたちにとっても実は大変な時期です。
朝だけ「おなかが痛い、気持ち悪い」と言って、保育園や学校に行けず、午後は元気なんてことありませんか?仮病なの?と思ってしまうかもしれませんが、受診が必要な状況が隠れているかもしれません。
登園しぶりや登校しぶり、どうしたらいいのか、医学的・心理学的に対応するコツを解説します!連載「ママ小児科医さよこ先生の診療ノート」の9回目です。

子どもが「何かに困っている」サイン、と捉えるのが親の仕事

長期の休みが明けたとき、保育園や幼稚園に行きたがらなかったり、学校に登校したがらない・・・なんてことが起こることがあります。相談を受けることが多い状況を例としてお伝えします。

「4歳の男の子。夏休みが明けて、久しぶりの幼稚園です。夏休み中、朝起きる時間がすっかり遅くなってしまい、幼稚園が始まってから起こすのもひと苦労です。その後、朝ごはんもだらだら、お着替えもだらだら・・・と、なかなかいつまでも登園準備が進みません。ママのほうもなかなか進まない登園準備にイライラしてきます。
男の子もママもお互い不機嫌な状態で登園し、先生に引き渡そうとする直前に『うわーーーーーー(泣)!』と男の子はかんしゃくを起してしまい、登園をあきらめ自宅に戻ることに・・・」

「小学1年生の女の子。保育園時代にはなかった夏休みを乗り越えて、ほっとひと安心。さあ始業式の日。なんとか朝起こすも『おなかいたいな〜』のひと言。でも朝ごはんも食べられてるし、甘えてるのかな。玄関で久しぶりに重いランドセル、たくさんの荷物をかかえてひと言『行きたくない・・・.』。いやいや、急に言われても困る!とりあえず『今日は特別だよ』といって学校まで付き添ったけど、これ、明日からどうなっちゃうの?!」

休み明けの登園しぶりや登校しぶりは、心身ともに、どっと疲れますよね。
ただ医学的・心理学的に見ると、子どもなりに「何かに困っている」からこそ、しぶるという行動に出ているのです。

子どもが何に困っているかは、実際には、明確に突き止められないことも多いです。何に困っているのか、子ども自身が言葉で表現することが難しいからです。またもし原因がわかったとしても、完全にコントロールできないこともあります。「夏休みが終わってしまったから」という理由だとしても、夏休みを延長できるわけではありません。

また夏休み以外でも、たとえばきょうだいが産まれたから赤ちゃん返りとして登園したくない、とか、大好きな担任の先生が産休に入ってしまったから、クラス替えで大好きな友だちと離れた、など、どうしようもない原因のこともあります。実際に不登校の原因も、不明であることが多く、むしろ学校に行きたいと思って入るのだけれども、行けないという自分に苦しんでいる子も多い、という報告があります。

まずは「なんで行かないの?」「甘えすぎなんじゃないの?」と考える前に、「子どもなりに、何かしらの困りごとがあるんだろうな」と認識してあげることが大切です。そして、その原因を探る・コントロールするというよりは、できる範囲で、まわりの大人が環境調整をしてみること。これが登園しぶり・登校しぶりに対する、基本的な考え方です。

【しぶる要因・1】 時間感覚・曜日感覚・1日の流れがわからなくて、困っている

子どもの困りごとはさまざまですし、原因追求にこだわらないことが大事ではあるのですが、ここでは多くの子どもたちが経験し、登園しぶりや登校しぶりにつながりやすい「困りごと」とその対策方法を、3つに絞ってご紹介します。

まずは、時間感覚・曜日感覚・1日の流れがわからなくて、困っているというケースです。

「明日、お休み?」と火曜日に聞いてきて、「まだまだだよ」といったら大泣きしました・・・(4歳)
「学校、間に合わないよ?!」って何回言っても、危機感がありません。(小学1年生)

園や学校に着く時間から逆算して、朝の準備を進める・・・、というような時間間隔は、子どもにはまだありません。もっといえば、夏休みがあと何日で終わるのか、何曜日になればまた次の休みが来るのか・・・、といった曜日の感覚も、なかなかつかむのに時間がかかります。

最初の時間間隔については、時計を読ませる・時間を逆算させる、というよりは「朝やらなければいけないこと」を視覚化したほうがうまくいくケースが多いです。「ベッドから起きる」「顔を洗う」「朝ごはんを食べる」「着替える」「パジャマを洗濯機に入れる」などなど、書き出してみると、子どもにとって朝のタスクが山盛りであることに気づきます。ホワイトボードに書いたり、壁に貼ったりして、一つ一つタスクが終えられている達成感を実感させてあげましょう。

また曜日感覚については、子どもにも見えやすい場所に、大きな文字で書かれたカレンダーを貼るのは、1つの対策です。土日など、園や学校が休みの日は、赤色になっている、あるいは「おやすみ」などを大きく記入するのもいいですね。

さらに「1日の流れ」がわかりづらいことが、ストレスになる子どももいます。園であれば、たとえば登園してから9:00までは自由遊び、9:00になったらみんなで朝の会、10:00からはお散歩、11:00に帰ってきたら手を洗ってからお昼ごはん・・・、などのスケジュールがありますね。時間間隔も不十分な中、自分の好きな遊びを切り上げて、全体の活動に戻らなければいけないというストレスが日々何回か訪れることは、子どもにとって不快です。1日の時間割を壁に貼ってもらったり、もう少しで朝の会だよ、など前もって声かけをしてもらえないかなど、先生と相談してみましょう。

関連記事: