リンパ浮腫の治療
リンパ浮腫はリンパ管という全身に張り巡らされた管が詰まり、リンパ液の流れが悪くなることで起こります。リンパは一度詰まると元に戻ることはできません。しかし放っておくと徐々に悪化してしまいます。そのため、いかに早く見つけて、治療を開始できるかが重要なポイントです。
治療方法は複合的治療と手術治療の2つの方法があります。基本は複合的治療をおこないますが、むくみがひどくなる場合や蜂窩織炎(ほうかしきえん)を繰り返す場合は手術治療を検討します。現在、リンパ浮腫に有効な薬はありません。
複合的治療
圧迫療法、スキンケア、圧迫しながらの運動療法、用手的リンパドレナージ、セルフケア指導を組み合わせた治療を、複合的治療といいます。
圧迫療法とは、弾性包帯(パンテージ)や弾性着衣(ストッキングやスリーブ)を日常的に腕や足に身につけて圧迫することで、リンパの流れをよくします。圧迫療法はむくみを軽減し効果を維持するために重要です。用手的リンパドレナージは皮膚を手でマッサージし、むくみとして溜まったリンパ液を正常に働いているリンパ節に移動させる方法です。一般的なマッサージとは異なり、専門的な知識や技術を持つ医療従事者の指導のもとでおこないます。
手術治療
手術方法には、リンパ管細静脈吻合術・血管柄付きリンパ節移植術・脂肪吸引術・切除減量術があります。リンパ管細静脈吻合術・血管柄付きリンパ節移植術は、リンパ組織を移植したり、リンパ管と同じ大きさの静脈やリンパをつなぎ合わせることでリンパの流れを改善させる手術です。
脂肪吸引術や切除減量術は、増えた脂肪組織を取り除きリンパ浮腫を小さくする手術です。リンパ浮腫が進行すると、その部分に皮下脂肪が溜まり、ますますリンパや血管を圧迫して重症化するという悪循環が起こります。リンパ液の流れを改善しただけでは、脂肪を減らすことはできないため、重度の場合は脂肪を取り除きます。手術直後から目に見えてリンパ浮腫は小さくなりますが、リンパの流れはかえって悪化するため、継続的により強い圧迫療法が必要となります。リンパの流れがまったくない場合の最終手段といえるでしょう。
リンパ浮腫になりやすい人・予防の方法
がん治療後は、リンパ浮腫になりやすいといわれています。リンパ浮腫を引き起こしやすいがんは、乳がん・子宮がん・卵巣がん・前立腺がんなどです。術後10年以上経ってから、発症することもあります。
(出典:国立研究開発法人国立がん研究センター「リンパ浮腫もっと詳しく」)
リンパ浮腫の予防は、日々の管理が重要であり、そのためにはセルフケアがかかせません。セルフケアは、体重管理や感染症予防としてスキンケアをおこないます。体重が増えるとリンパ管が脂肪に圧迫されリンパの流れが悪くなります。そのため適正体重を保つことが重要です。定期的に体重を測る習慣をつけましょう。
またリンパ浮腫がある方は、正常の肌に比べて感染症にかかりやすい状態にあります。感染症予防のためには、スキンケアが効果的です。
スキンケアの3つのポイント
皮膚を傷つけない
虫刺され、巻き爪、日焼け、火傷、けが、ペットのひっかきに注意しましょう。外出時は、長袖・長ズボンなどで肌の露出を減らします。
皮膚のうるおいを保つ
保湿クリームをこまめに塗る習慣をつけましょう。しっとりやわらかな肌を保つことで、刺激から肌を守れます。
清潔を保つ
体を洗う際には、石鹸の泡でやさしく丁寧に洗いましょう。また入浴時に合わせて、乾燥や赤み、傷はないかなど皮膚を観察することをおすすめします。
関連する病気蜂窩織炎
象皮症
リンパ漏
リンパのう胞
参考文献
日本癌治療学 がん診療ガイドライン(リンパ浮腫)
日本リンパ浮腫学会 リンパ浮腫診療ガイドライン2018年度版
血管とリンパ管の独立性が維持される仕組みを解説
リンパ浮腫
リンパ浮腫を知る-その発生機序と看護師の役割-
配信: Medical DOC
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