ジャニーズ楽曲を中心に、歌謡曲やRock、R&B、演歌、アニメ、童謡など数多くの作品を生み出してきた作詞家・相田毅(あいだたけし)さんに話を聞いた。
作詞家ってどんな仕事?
――まずは、作詞家の仕事について教えてください。
僕らの仕事が小説や普通の詩を書くことと決定的に違うのは、メロディーがあることです。
送られてきた曲に合わせて詞を書くことを曲先(キョクセン)、音楽になることを想定して先に詞を書くことを詞先(シセン)といいます。ポップミュージックでは曲先が多く、演歌では詞先の方が多いですね。
――音楽の詞を考えるときは、普通に言葉を考えるときと違いはありますか?
作詞の仕方は作詞家それぞれだとは思いますが、僕の場合は音と一緒に言葉を考えています。曲が先にある場合は、曲を聴いてイメージを膨らませて、音に乗せたときの発音なども考慮しながら言葉を選んでいきます。
演歌の作詞をするときなど、詞を先に書く場合も、なんとなく曲をイメージしながら言葉を選んでいます。サビの部分がこういうイメージで、Aメロの部分がこういうイメージで、歌詞はこういう感じで……と。そうしないと、詞全体の組み立てが難しいんです。
――相田さんは、言葉を「文字」として捉えているのではなく、「音」として捉えているのですね。
詞は、文字だけで完成するものではなく、音楽に乗ったときにはじめて完成するもの。極論かもしれませんが、文字で見たときに文法的に間違っていてもいいんです。あくまで、音に乗ったときが完成なのですから。文字上では平易な言葉に見えても、音としてメロディーに乗せると全く違う響きになったりします。
作詞家は音を奏でる人ではないですが、音楽家だと思っています。人類が最初に手にした楽器は自分の声帯でしょう。文明が発達して、意味のある言葉に節と音程をつけて「歌」として発声できるようになった。作詞家は、歌う言葉を選ぶ仕事なんです。
作詞家にはどのようにしてなるの?
――相田さんはどのような経緯で作詞家になったのでしょうか?
もともと音楽が好きで、ミュージシャンを目指すほどでした。いつも音楽のそばにいて、いい曲が生まれる瞬間に携わっていたかったので、レコード会社のソニー・ミュージック・エンターティンメントに入社したんです。
そこでコピーライターをしているときに、知り合いのディレクターから、曲は書けるんだけど作詞が苦手なデビュー前のアーティストを紹介されました。会ってみたら意気投合して、歌詞を提供することになって。それが作詞家になったきっかけです。
ちなみに、結局彼はミュージシャンとしてはデビューできませんでした。でも、ジャニーズの仕事に関わるようになっていて、ある日、彼から「今度ジャニーズから新しいグループがデビューするんだけど、作詞をやらない?」と、連絡が来たんです。そのグループがSMAPで。その後、SMAPの曲を40曲担当しました。Kinki Kidsや嵐、関ジャニ∞、KAT-TUN、Hey! Say! JUMP、Kis-My-Ft2、タッキー&翼などの作詞も手掛け、ジャニーズ全体だと65曲を担当しました(いずれもCD化音源のみの曲数)。
昨年SMAPが解散したときは、グループの活動とほぼ同じ年数を作詞家として活動してきた自分の中で、ひとつの時代が終わったような気持ちになりましたね。
――作詞家は、一般的にはどのような道筋を経てなるものでしょうか?
作詞のコンテストに応募したり、レコード会社の作詞家教室で作詞を習ったり、とにかく詞を書いて作詞家事務所に登録しておいたり、すでに作詞家として活躍している人に弟子入りしたり……と、いろいろですね。ちなみに、作詞家のほとんどが会社に所属しないフリーランスとして働いていると思います。
作詞家になる人は、バランスの悪い人が多いのではないでしょうか。いろんなことが器用にできる人というよりも、好きな音楽にのめり込んで、作詞に特化している人たち。それから、想像力の強い、変わった人が多いんじゃないかなと感じています。
配信: 非公開: クリスクぷらす