大学に進学する意味って? 採用コンサルタント・谷出正直さんインタビュー

大学に進学する意味って? 採用コンサルタント・谷出正直さんインタビュー

小学校、中学校の義務教育を受け、高校で大学受験に向けて受験勉強し、大学に進学する――。日本人のある階層の人にとっては「当たり前」「普通」の流れかもしれない。平成28年度の文部科学省のデータよると、日本人の大学進学率(過年度卒含む)は52.0%だ。

現在の中高生にとって、大学に進学する意味は何だろうか。採用コンサルタントの谷出正直さんに話を聞いた。

<取材先>

●谷出正直(たにで・まさなお)
1979年生まれ、奈良県出身。教師を目指し教員免許を取得したが、エン・ジャパン株式会社に営業職として入社。同社および同社子会社で、新卒採用支援事業に約11年間携わる。2016年に独立し、現在は企業の新卒採用コンサルティング、採用アナリストとして活動。勉強会の主催や各種講演を通じて、就職活動に関する情報を発信している。

▼「21世紀の就職はどうあるべきか」を考えたい(TSUKUBA WAY)
http://tsukubaway.com/column/professional/1593

<聞き手>

●芹沢孝広(せりざわ・たかひろ)
クリスクぷらす編集長。1972年生まれ。大学卒業後2年間、バンド活動をしながらフリーター生活を送る。その後IT業界で、大手企業からベンチャーまで数社を経て、株式会社クリスクのCTOに就任した。エンジニアとしてシステム開発をしながら、広報業務も兼務。各界の著名人をゲストに招いた自社セミナーを主催し、多様な生き方に触れる。2児の父。

 

芹沢:谷出さんはもともと学校の先生を目指していたのに、一般企業の営業職に就くって、すごくおもしろいキャリアですね。
 
 

谷出:教師になったとして、学校で接する生徒の大多数は社会に出て働くわけですよね。社会人経験のない自分が、生徒たちにどう進路指導するのかと考えたら……そりゃ無理やろ!って(笑)。そこで、まず一般企業に就職して、社会人を経験してみようと思ったんです。
 
 

僕は常々、教師は一般企業である程度働いてから学校に入るようにしたらいいのにと思っているんですよね。例えば、教員免許を取得しても、最低2年間、一般企業での就職経験がないと教職に就けない決まりを作るとか。

このメディアは、通信制高校の資料請求サイトをやっている弊社のオウンドメディアという立ち位置なんです。通信制高校って、登校頻度が低かったり制服を着なくていい学校が多い。コミュニケーション能力に不安がある子や男女別の制服を着たくない子にとってはいい面もあるのに、中学校の先生が通信制高校への進学を選択肢として生徒たちにほとんど紹介していないんじゃないかと思うんです。
 
 

教師になる人って、小学校、中学校、高校、大学とストレートに道を歩んできた人たちが圧倒的に多いですからね。世の中には回り道、寄り道を活かした働き方をしている人たちがたくさんいるのに、教員や教育委員会の中にはほとんどいない。だから、道を外れることを好まないというか、浪人をさせるよりも受かるところに入れるとか、そういう考えになりがちなのではないでしょうか。

 

大卒かどうかは、就職にどれくらい影響するの?

今回聞きたいのが、学歴ってどれくらい人生に影響するのかなってことなんですけど。

僕自身、一応、奨学金をもらって大学に行きました。なぜか法学部を卒業して、37歳まで奨学金を返済し続けて。それで、44歳の今はWeb関係の会社の役員をしていたり、応援している企業の技術担当をしたり、自分で会社を立ち上げたりしているんですね。

学歴があんまり今のキャリアに関係ないというか、あの大学4年間ってなんだったんだろう、意味あったのかなと思うときもあります。貧困の連鎖を断ち切るためには、行きたい人が大学に入れる社会になったほうがいいとかそういう話はわかるんですが、行ける環境の人が主体性なく、なんとなく大学に行っておくかという風潮はどうなんだろうと感じることもあるんですね。

大学に行く意味って、将来の就職のためと考える人が多そうですが、谷出さんはどう考えていますか?
 
 

まず、大卒の新卒採用と、高卒の新卒採用って、そもそもルールが全然違うんですよ。学歴不問企業かどうかの前に、大学を卒業して働く人と高校を卒業して働く人は、採用業界の中では同じポジションではないんです。
 
 

えっ? そうなんですか?
 
 

大学生の就活にも、就活解禁日などのルールが決められていますよね。高校生の就活にもルールがあって、「学業優先」の考え方で大学生の就活より厳しいルールが決められているんです。細かいルールは都道府県によっても違うんですが、たとえば、大学生は志望する会社すべてに応募書類を提出できるのに、高校生はある時期まで1社しか応募できないとか、高校生の応募書類受付は9月からとか……。そういうルールがあることによって、企業にとっての高校新卒と大学新卒は、まったく別物として分類されています。
 
 

さまざまな事象が多様化されている現代にあまり合っていないルールのような……。高卒で就職したいと思ったら、卒業後の4月以降に動かなきゃいけないなんて場合もありそう。自由に就職活動できないのなら、なんとなくでも大学行っといたほうがいいのかなという気もします。


学歴による賃金格差(平成27年)
 

新卒一括採用のメリットって?

日本の新卒一括採用って、一部で悪く言われたりもしていますけど、状況は変わってきているんですか?
 
 

うーん、確かに悪く言われていますが、新卒一括採用には企業が新人を育てやすいという大きなメリットがあるんです。それまで学生で、社会のことを知らない新人たちを一斉に採用すると、研修するタイミングが一緒で育成コストが抑えられる。同期の存在ができて、切磋琢磨しやすい、励ましあいやすい。同期の存在は、新人にとってもありがたいですよね。

もしも新卒一括採用をやめると、解禁時期などがないので、通年で企業が採用活動をすることになります。すると、ずーっと探さなきゃいけないから、求職者側も大変なんですよ。「あの会社受けたいけど、今は募集していないなぁ」って、ずっとウォッチしていなきゃいけない。で、どこかのタイミングで諦める、と。
 
 

たしかにそれは大変かも。
 
 

自由になればなるほど、自己責任の世界になってきますからね。競争も激しくなるし。そして、近年は「第二新卒」といって、25歳までを新卒と同じように対応する企業も出てきました。そうすると今度は、企業が人の育成に力を入れなくなるんです。

会社に入社して1~2年働いても、「やーめた」と短期間で辞められると、育てた企業としては元を取れていないですよね。一方、その人材を「若手社会人(ほぼ新卒)」として採用する会社は得をします。つまり、自分たちがコストをかけて人材を育てる必要性がなくなり、以前のように成長を見込んだ人材を採用しなくなるんです。

そうすると、採用判定の基準がますます厳しくなって、新卒の就職率が下がります。こんな状況なので、いま仮に日本企業が新卒一括採用をやめてしまったら、どこにも就職できない新卒フリーターやニートが大量発生してしまいます。
 
 

卒業してすぐ正社員として就職しなくても、いろいろ道を探しながら職を探せる国もあると聞きますけど、その自由さは厳しさの裏返しなんですね。
 
 

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