脳出血(脳内出血)

脳出血(脳内出血)

脳出血(脳内出血)の治療

治療の目的は、出血の拡大を防ぎ、脳圧を管理し、患者さんの生命と機能を最大限に維持することです。治療方法には内科的治療(保存的治療)と外科的治療があります。

内科的治療(保存的治療)

出血量が少ない場合には保存加療による経過観察となるため、以下の薬を投与します。
降圧薬
血圧管理のために使用されます。急激な血圧の変動を避けるため、適切な管理となります。
浸透圧利尿薬
脳内出血が起こると、その周囲の脳が浮腫むため、浮腫みを軽減し脳圧を下げるために使用されることがあります。

外科的治療

外科的治療の必要性を判断する際には、「出血部位」「意識レベル」「脳ヘルニアのリスク」が重要となります。脳ヘルニアのリスクが高い場合には、血腫を除去する手術が必要となります。ただし、手術の目的は生命維持や意識の改善などであり、麻痺などを治すためではありません。

※脳ヘルニア:脳は頭蓋骨によって守られているため、出血や脳の浮腫みにより、正常な脳が圧迫されます。さらに、脳の浮腫みが増し圧迫が進むと、脳の一部が本来の位置から押し出されます。この状態を脳ヘルニアといいます。脳ヘルニアが起こると、呼吸や意識などを司る脳幹の障害が不可逆的となり、生命維持に影響します。

開頭血腫除去術
頭を大きく開き、頭蓋骨を外し、血腫(出血の塊)を吸引することで除去します。血腫を除去することで、脳の圧迫を軽減します。出血点を見つけ止血できたら、頭蓋骨を戻し縫合します。特に大きな血腫や脳圧亢進症状がある場合に行われます。なお、脳の浮腫みが強い場合には、しばらくの間頭蓋骨を外した状態にし、脳の浮腫みが引いた時点で頭蓋骨を戻す場合があります。これを開頭外減圧術といいます。

内視鏡的血腫除去術
頭蓋骨に500円玉ほどの穴を開け、そこにシースと呼ばれる筒を挿入します。筒の中に内視鏡と吸引管を挿入し、血腫を除去します。開頭血腫除去術とは比較すると、開頭範囲が小さく手術時間が短いため、低侵襲といえます。
しかし、術野が狭く、術中の激しい出血がある場合には出血点が見つけられず止血困難となる場合があります。その場合は、術式を開頭血腫除去術に切り替える場合があります。そのため出血量や出血部位などを考慮し、安全な術式を選択する必要があります。

脳出血(脳内出血)になりやすい人・予防の方法

脳内出血のリスクが高い人・予防の方法には、以下があげられます。

高血圧

高血圧は脳内出血の主要なリスク因子です。慢性的な高血圧により血管が脆弱になります。そのため日常的な血圧管理が重要です。定期的に血圧を測定し、生活習慣の改善や薬による血圧管理を行う必要があります。

脂質異常症

血管が脆弱になる原因の一つです。食生活の改善や薬による管理を行う必要があります。

高血糖

血管が脆弱になる原因の一つです。生活習慣の改善や薬による管理を行う必要があります。

喫煙

喫煙は血管を損傷し、出血リスクを高めます。禁煙は重要な予防策です。医療機関の支援(禁煙外来)を利用することも有益です。

飲酒

過度の飲酒は血圧を上昇させ、出血リスクを増大させます。過度な飲酒は控え、健康的な範囲で楽しむことが重要です。

高齢者

加齢により血管が脆弱になり、出血リスクが増大します。定期的な健康チェックが重要です。

既往歴のある人

過去に脳出血を経験したことがある場合、再発リスクが高まります。予防的な治療や生活習慣の見直しが必要です。

運動習慣

運動不足により血流が悪くなります。適度な運動は血圧を安定させ、健康を保つために重要です。特に有酸素運動が推奨されます。

参考文献

日本脳卒中学会. (2021). 脳卒中治療ガイドライン2021. 東京: 医学書院.

救急医学 2021年12月号 第45巻第14号 アップデート&ブラッシュアップ;脳卒中診療の最前線

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