インドのザイダス病院らの研究グループは、1日に400mgを超えるカフェインを摂取すると健康な人の心血管疾患のリスクを高める可能性があることを明らかにしました。この内容について中路医師に伺いました。
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監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
研究グループが発表した内容とは?
インドのザイダス病院らの研究グループが発表した内容を教えてください。
中路先生
今回発表された研究は、インドのザイダス医科大学病院らの研究グループが実施したもので、研究成果は「米国心臓病学会アジア学術集会」で発表されていますが、査読を受けて医学誌に掲載されたものではありません。
今回の研究対象となったのは18〜45歳の正常血圧で健康な成人92人で、カフェイン含有飲料を週に5日以上を摂取する生活を1年以上続けることによって、心臓にどのような影響があるのかが検討されました。全ての対象者は、3分間の踏み台昇降運動をおこなった後、運動の1分後と3分後に血圧と心拍数の測定を実施しました。研究の結果、1日あたり400mg超のカフェインを摂取していたのは対象者の19.6%でした。カフェイン摂取量は、1日あたり4杯のコーヒー、2本のエナジードリンク、または10缶の炭酸飲料の摂取に相当します。カフェイン摂取量が特に多くなったのは、「女性」「ビジネスや管理職に従事している人」「都市居住者」という傾向が出ました。
得られた情報の解析をおこなったところ、1日400mg超のカフェインの慢性的な摂取は自律神経系に影響し、時間が経つとともに心拍数と血圧を有意に上昇させることが示されました。さらに、1日600mgを超えるカフェインを摂取している人は、3分間の踏み台昇降運動から5分後の血圧と心拍数の測定でも、値が有意に上昇したままであることがわかりました。
今回の結果について、研究グループは「カフェインは自律神経系に影響を及ぼすため、カフェインを習慣的に摂取すると健康な人でも高血圧やそのほかの心血管疾患のリスクにさらされる可能性がある。これらのリスクに対する認識を高めることは、全ての人の心臓の健康を改善する上で不可欠だ」と述べています。
研究グループが発表した内容への受け止めは?
研究グループが発表した内容に対する受け止めを教えてください。
中路先生
本研究は、カフェイン摂取と心血管疾患の関連を示唆した貴重な研究と言えます。ただし、症例数が少なく、カフェインの摂取以外にも、年齢、性別、人種、喫煙、飲酒、塩分摂取量などがデータに影響を及ぼす「バイアス」の存在が考えられます。また、カフェインに対する感受性にも個人差があるため、その解釈には注意を要します。
配信: Medical DOC