破傷風

破傷風

破傷風の概要

破傷風は、土壌や動物の腸内に存在する細菌の1種である、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)が原因となる重篤な中毒性感染症です。この細菌はテタノスパスミンという強力な毒素を産生し、主に神経系に作用して、筋痛や痙攣を起こします。傷口を通じて体内に侵入するので、特に汚染された深い傷は要注意です。

初期症状は傷口周辺の痛みから始まり、次第に全身の筋肉に影響が及びます。特徴的な症状として、咀嚼筋の痙攣による開口障害や、背筋が硬直して反り返る後弓反張があります。病状が進展すると、呼吸困難や窒息の危険が生じることがあります。

治療には抗生物質や抗毒素の投与が行われますが、毒素の効果を完全に消滅させることは難しく、症状による対症療法が中心となります。破傷風の致死率は高いため、医療機関での迅速な対応が重要です。特に傷が深い場合や汚染された環境での怪我を負った場合には、早期に医療機関への受診が必要です。

一方で、破傷風は予防可能な疾患です。定期的なワクチン接種が最も有効な手段です。ワクチンは通常、乳児期から複数回にわたり接種され、その後も定期的なブースター接種が推奨されます。

破傷風の原因

破傷風は、嫌気性細菌に属する、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)の感染が原因です。この細菌は、芽胞と呼ばれる耐久性の高い状態で存在し、厳しい環境下で生存することができます。破傷風の主な原因は、この細菌が傷口を通じて体内に侵入することです。

クロストリジウム・テタニの特徴

クロストリジウム・テタニは、酸素のない環境を好む嫌気性菌であり、土壌や動物の腸管内に自然に存在しています。この細菌は、芽胞で守られた状態で存在するため、乾燥、熱、消毒剤などに対して大変抵抗力があります。そのため、数年間生存することが可能です。

感染経路

破傷風は人から人へは感染しない疾患です。破傷風の感染経路として最も多いのは、深い刺し傷や切り傷、火傷、動物の噛み傷など、傷口からの侵入です。特に、土壌や動物の排泄物に触れる可能性がある傷はリスクが高いです。
また、深い傷ばかりではなく、小さな傷でも感染する可能性があるので要注意です。その他、怪我をした後の不適切な傷の処置、衛生状態の悪い環境での手術などが感染リスクとなる場合もあります。いずれも不適切な消毒が要因です。農作業やガーデニングなどで土壌に直接触れる機会が多い場合、感染リスクが増加するので要注意です。

毒素の作用

クロストリジウム・テタニが体内に侵入し増殖すると、強力な神経毒素であるテタノスパスミンを産生します。この毒素は神経系に作用して、神経筋接合部での神経伝達物質の放出を阻害し、全身にさまざまな障害を起こします。1gで200万人を殺傷するといわれるほど強力です。

関連記事: