破傷風の前兆や初期症状について
感染から発症までは潜伏期間、初期症状、進行期、そして重篤な場合の末期症状に分けることができます。症状は、顔面から体幹、四肢へと下降性に出現します。
潜伏期間
潜伏期間は通常3〜21日で、平均的には7~10日です。この期間はクロストリジウム・テタニが体内に侵入してから毒素を産生するまでの経過時間です。潜伏期間の長短は感染部位の場所や傷の深さ、患者さんの免疫状態などにより変わります。
初期症状
最初に認められる症状は、傷口周辺の痛みや硬直です。これに続いて、特徴的な症状である、咀嚼筋の硬直による開口障害が起こります。さらに、首や肩の筋肉の硬直が認められることがあります。
進行期
進行期になると、全身に症状が波及し、全身の筋肉が硬直します。具体的には、咀嚼筋の硬直により、口を開けることがさらに難しくなり、食事や会話が困難となります。顔面筋が痙攣し、笑顔のように見えるが不自然な表情となる、ひきつり笑いが起きます。 さらに症状が進行すると、背筋が硬直し、身体が弓なりに反り返る、後弓反張(オピストトナス)が起きます。この症状は破傷風に特徴的なものです。意識清明な状態で、激痛を伴うので辛い症状です。その他、全身の筋肉が激しく痙攣する強直性痙攣が認められることがあります。最終的に、呼吸筋が障害されるため、呼吸困難や窒息のリスクが高まります。開口障害から全身痙攣出現までの経過時間が48時間以内であれば予後が悪いとされています。
重篤な場合の末期症状
治療が遅れた場合は致命的となります。以下の症状は要注意です。自律神経障害として、心拍数や血圧の上昇、発汗、発熱などが起きた場合です。呼吸筋の痙攣や麻痺による呼吸困難が生じ、窒息による死亡リスクとなります。その他、全身の痙攣発作が頻繁に起きる場合は、意識消失に至ることもあります。
破傷風の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、感染症科、内科です。破傷風は感染症であり、感染症科や内科で診断と治療が行われています。
破傷風の検査・診断
破傷風には、特異的な検査法はありません。症状による臨床診断に基づいて診断されます。
臨床診断
臨床診断は以下の症状に基づいて行われます。咀嚼筋の硬直により開口が困難になる、開口障害。背筋が硬直し、身体が弓なりに反り返る、後弓反張。笑顔のように見える不自然な顔面筋の痙攣である、ひきつり笑い。全身の筋肉が硬直し痙攣が頻発する、強直性痙攣。これらの症状を認めた場合は破傷風を強く疑います。特に、症状出現の直近において、傷や怪我がある場合は可能性が高くなります。その他、破傷風トキソイドワクチンの接種状況や職業歴を聴取することも、臨床診断の一助となります。
補助的検査
血液検査では、一般的な炎症反応を認めますが、特異的な指標はありません。筋電図(EMG)では、筋肉の活動異常を検出しますが、特異的ではありません。クロストリジウム・テタニの培養や毒素の検出を目的に微生物学的検査を検討したい所ですが、菌の検出が難しく実用化されておりません。
総括
以上をまとめると、破傷風は感染症に属していますが、細菌学的検査の感度・特異度が低い疾患です。理由として、破傷風菌の量が少ない場合でも発症することが多々ありますし、破傷風ではない患者さんの創部から破傷風菌が分離される場合もあるからです。紹介したその他の検査も破傷風の診断には特異的ではありません。以上より、破傷風の診断は臨床診断に基づいて行われることが一般的です。
配信: Medical DOC