クループ症候群(急性声門下喉頭炎)

クループ症候群(急性声門下喉頭炎)

クループ症候群の治療

クループ症候群の治療は、主にステロイドの内服とアドレナリンの吸入です。まずはステロイドの内服を行い、中等症以上と判断された場合はアドレナリンの吸入を行います。

ステロイド内服

ステロイドは抗炎症作用によって喉頭の浮腫を軽減させ、入院率や再診率の低下につながります。そのため、軽症の患者さんに対しても投与が考慮されます。経口投与と経静脈投与で治療効果に有意差を認めないため、呼吸苦が強くなく経口摂取が可能であれば内服薬で加療します。ステロイド製剤のうち、デキサメタゾンは1回投与で長時間の効果が期待できるため、第一選択となります。

アドレナリン吸入

安静時にも喘鳴が認められる中等症以上が適応となります。アドレナリン製剤を5〜10倍に希釈して、ネブライザーで吸入します。10〜30分で症状の改善が期待できますが、作用時間は2時間程度のため、外来で使用する場合には帰宅後の症状の増悪のおそれがあることに注意します。可能であれば、吸入した後に2時間経過を見ることが望ましいとされます。

抗菌薬投与

クループ症候群の多くはウイルス感染が原因のため、抗菌薬の投与は必要としません。しかし、臨床経過や血液検査、培養検査などの結果から細菌感染が疑われる場合は抗菌薬の投与を行います。

入院が必要な場合

クループ症候群では軽症例が多く、入院を要するほどの重症な患者さんはごく一部です。
しかし、ステロイド内服やアドレナリン吸入で症状が改善しない場合、呼吸状態が悪く酸素投与を必要とする場合、生後6か月未満、短期間に繰り返し外来を受診している、といった場合には入院を考慮する必要があります。呼吸不全の状態であると判断した場合には、気管挿管を考慮します。
クループ症候群では喉頭や声門の浮腫により、気管挿管に高度な技術を要します。そのため、重症化が懸念される場合には早期に高次医療機関への転送を検討します。

クループ症候群になりやすい人・予防の方法

クループ症候群になりやすい人

クループ症候群は、生後6か月から3歳の子どもに多い傾向です。乳幼児期の子どもは、喉頭や声門が狭く、炎症が生じた際に狭窄を起こしやすいからです。男児の方が女児よりもかかりやすいという統計が出ています。

また、クループ症候群は普通の風邪に続いて発症することが多いため、風邪を引きやすい秋から冬にかけて増加する傾向があります。基礎疾患として声門下狭窄症、喉頭軟化症、気管軟化症などの先天的な気道の解剖学的狭窄がある場合は、クループ症候群の罹患リスクが高いといえます。

予防の方法

クループ症候群は風邪のウイルスが原因で発症することが多いため、風邪を引かないようにすることが予防において重要です。手洗いや、可能であればマスクをするなどの一般的な飛沫感染対策がクループ症候群の予防にもつながります。

細菌感染によるクループ症候群の予防のためには、Hib、ジフテリアなどの予防接種を受けることが重要です。クループ症候群の原因となる細菌の予防接種は生後2か月から始まるため、推奨スケジュール通りに接種することで、好発年齢である生後6か月までにはHib、ジフテリアに対して3回の接種を終えることができます。

参考文献

小児の咳嗽診療ガイドライン 2020

JAID/JSC 感染症治療ガイドライン-呼吸器感染症

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