厚生労働省が発表した残業時間の公表義務に賛否

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18日、厚生労働省は2020年をめどに大企業の残業時間の公表を義務付けることを発表したと『日本経済新聞』が報じました。。働き方改善への大きな一歩に見えますが、不十分さも見えるようで、さっそくこの内容に関して賛否両論、意見が分かれているようです。

●そもそも残業時間を公表する義務とは…?

まず、残業時間の公表義務とは具体的に、どんなルールになるんでしょうか。社員の残業時間を公表しなければ行けない企業は、従業員が301人以上の、いわゆる大企業。1カ月あたりの平均残業時間を、年1回公表しなければならなくなるそうです。

発表内容に虚偽が疑われる場合は行政指導が入り、悪質な場合は罰金20万円が貸されるという内容。一方、従業員が300人以下の中小企業には、罰則は無しの、いわゆる努力義務にとどまるそうです。

厚労省

●残業時間の抑制へ一歩前進になるか?

厚生労働省は先日、労働基準法関連で違反した企業を発表しています。悪いイメージは採用活動や株価などにも大きな影響を与えかねず、今回の取り組みが残業時間を減らすことになる大きな一歩と評価する声も多い反面、罰金の金額の少なさや、公表するのが平均値であることから、無視や数値の操作を懸念するの声も…。肯定派・否定派両意見をいくつかご紹介します。

肯定的な意見としては、電通の過労死自殺のように、大企業ならではの過酷な労働条件で働く人を守ることができそうと言うもの。今回の発表では、大企業が対象とされましたが、日本の企業のなかで大企業はわずか。それでも法外な労働時間を強いる企業や、これまであまり行政が具体的な対策をしてこなかった労働環境の改善に対して、このようなルールがいくつも作られていくことが大事だという意見が散見されました。

否定的な意見には、「中小企業の方がブラックな企業は多いのでは?」という疑問の声や、平均値ではなく、実測値や分布を出さないと、総務など比較的残業の少ない人員を増やすだけで誤魔化せてしまうと言う指摘、大企業が残業を抑制すると結局下請けの中小企業が苦しむなどの声が多いようです。

また、このルールではそもそも残業時間としてカウントされないサービス残業を無くすことには繋がりませんし、裁量労働制など、長時間労働を合法的にさせることの可能なシステムがあるという抜け道もあります。これらの問題を残したなかで、一体どれだけの効果が得られるのか、今後抜け道を塞ぐルールも用意されるのか、今後の運用やルール作りに注目が必要そうです。
(文・姉崎マリオ)