交通事故後に必要な交通費に関する5つのこと

交通事故後に必要な交通費に関する5つのこと

3、通勤・通学といった通院以外の交通費も支払ってもらえる?

会社や学校など、交通事故がなくても行かなくてはならなかった場所への交通費ついては、基本的に支払われることはありません。

ただ、この場合、交通事故のせいで「手段」を変更せざるを得なくなったケースも考えられます。

いつもは徒歩や自転車で行っていたのに、事故によるケガでそれができなくなってしまったなどのケースです。

以下、詳しくみていきましょう。

(1)相手方に請求するのが相当な場合にだけ支払ってもらえるのが原則

通院以外の交通費を請求できるのは、通院のためのタクシー代の場合と同様に、ケガの程度・部位などから「相手方に交通費を請求することが相当といえる場合」に限られます。

相当といえる場合には、通院交通費と同様に、公共交通機関の運賃実費・自家用車の場合にはガソリン代・駐車場代はなどが支払いの対象となります。

(2)タクシーで通勤・通学等することも可能?

基本的には難しいでしょう。

ただ、住んでいる地域などの個別具体的な必要性を検討する余地はあります。

たとえば、地方に住んでおり、何をするにも自家用車で移動していた高齢の方が交通事故で骨折したというような場合に、ケガをしたことで車いすを利用しなければならなくなったなど日常生活に不便が生じているようなときには、買い物のためのタクシー代を支払ってもらえることもあるでしょう。

もっとも、保険会社としても支払いにくい交通費であることは間違いないでしょうから、通院以外のタクシー代を請求するときは、事前に保険会社に連絡をしておいたり、医師から「タクシー利用が必要」と診断してもらったりするなどの対処をしておいた方が良いでしょう。

もちろん、この場合にもタクシー代の請求には領収書の提出が必要です。

なお、出張などで長距離を移動しなければならないときにも、ケガの程度によっては、特別車両(席)の利用が認められる場合があります。

たとえば、重度の骨折を負ってエコノミー症候群のリスクが高いと医師が認める場合などには、座席の広いビジネスクラスの料金を保険会社に請求できる場合もあるでしょう。

4、本人以外の交通費も補償してもらえるの?

交通事故の被害でケガをしてしまったときには、本人以外の人にも交通費の負担がかかる場合があります。

たとえば、被害者が大ケガして入院した場合に、遠方に住んでいる家族の付き添いやお見舞いの際に発生する交通費です。

(1)付添人の交通費

入院の際に付添が必要なときの費用は、相手方に付添人の交通費を請求できます。

ただし、付添の必要性は、医師の指示の有無またはケガの程度、被害者の年齢等により客観的に判断されるものなので、「被害者が必要と感じている場合のすべて」で補償してもらえるわけではありません。

たとえば、次のようなケースでは、家族等が被害者の付き添いをする必要性が認められやすいといえます。

絶対安静となるような大けがで、被害者1人では入院生活が困難な場合
被害者が就学前の子供、高齢者といったように、1人での入院生活が難しい場合

このように、付添人がいなければ被害者自身が病院での生活を送ることが不可能といえる場合に、付添人分の交通費を請求することが可能となります。

他方で、「誰かが側にいないと不便」、「はじめての入院だから付添人がいないと不安」という程度の事情では、付き添いの必要性は認められません。

なお、入院から退院までのすべて期間の付き添い交通費を認めてもらえることは、ほとんどありません。

通常のケガであれば、症状の回復によって、退院前には付き添いが不要となるからです。

(2)家族のお見舞いにかかった交通費

家族が被害者をお見舞いするためにかかった交通費も相手方に請求できる場合があります。

ただし、お見舞いの交通費を相手方に請求できるのは、付添人の交通費の場合と同様に、「お見舞いに行くのが当然」と考えられる場合に限られます。

事故によって、「被害者が危篤になった」、「数ヶ月の入院が必要なほどの大けがを負った」という場合であれば、交通費の請求も認められやすいでしょう。

他方で、「軽い追突事故で首が痛い」という程度であれば、お見舞いの交通費を請求することは難しいといえます。

(3)お見舞いにタクシーなどを利用した場合はどうなる?

本人以外の交通費を請求できる範囲は、基本的には本人の通院交通費と同様です。

つまり、公共交通機関の料金、自家用車のガソリン代・駐車場代といった実費(相当額)が補償の対象となります。

なお、付添人やお見舞いのタクシー代は、請求が認められない場合がほとんどでしょう。

被害者以外の人はケガをしているわけではなく、バスや電車などの公共交通機関を利用すればよいからです。

本人以外のタクシー代が認められるのは、「深夜の交通事故で重傷を負ったために、すぐ駆けつけなければいけない」というような場合のように、「公共交通機関を利用できない合理的な理由」がある場合に限られると考えておくべきでしょう。

実際の裁判例でも、「本来は電車を利用すべきであった」として「自家用車(高速道路利用)の交通費」の一部しか認めてもらえなかったものがあります。

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