3、50代の離婚では年金分割も忘れずに
50代の離婚では、老後の生活費を確保するために年金分割も忘れずに行うようにしましょう。
年金分割とは、厚生年金(従前の共済年金も含む)の納付実績を離婚時に夫婦で分割する制度のことで、それによって分割を受けた側は将来の年金受給額が増えることになります。
ただし、夫が自営業で国民年金にしか加入していなかった場合は、妻から年金分割を求めることはできません。
むしろ、妻が厚生年金に加入していた時期がある場合には、夫から年金分割を求められる可能性もあるのでご注意ください。
年金分割も、財産分与と同様に離婚原因とは無関係に求めることができます。
年金分割の内容や請求方法については、こちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
4、その他50代の離婚ですべき準備とは?
50代の離婚では、離婚後の生活設計をしっかりと立てておくことが非常に大切です。そこで、財産分与や年金分割の他にも、以下の準備を事前に進めておきましょう。
(1)離婚後の住まいを決める
まずは、離婚後の住まいを確保しましょう。
多くの場合は、賃貸住宅を探すことになります。
以前は、50代で離婚した場合には連帯保証人を探すことに苦労するケースが多かったのですが、最近では連帯保証人ではなく家賃保証会社の利用を求める物件が多くなっています。そのため、50代で離婚した人でも賃貸住宅に入居しやすくなっています。
家賃の支払いが厳しいという場合は、公営住宅に申し込んだり、実家に戻ることも検討してみるとよいでしょう。
また、勤務先に社宅がある場合には、社宅に入居することも考えられます。専業主婦の方なら、社宅がある就職先を探してみるのもよいでしょう。
さらに、現在住んでいる自宅の所有権を財産分与で譲ってもらい、住み続けるという選択肢もあります。この場合、夫との話し合い次第ですが、住宅ローン残高の返済や固定資産税の支払いをしなければならない可能性もあるので注意が必要です。
(2)離婚後の生活費等を計算する
総務省統計局の家計調査によると、2019年における一人暮らしの人の生活費の平均額は、1か月あたり16万3,781円とされています。
参考:総務省統計局|家計調査
このデータに基づいて、費目ごとに内訳をおおまかにまとめてみると、次の表のようになります。
費目
1か月あたりの必要額(概算)
家賃
21,000円
食費
40,000円
水道光熱費
12,000円
日用品購入費
5,000円
被服費
5,000円
医療費
7,000円
通信費
7,000円
交通費
15,000円
娯楽・交際費
33,000円
その他の支出
19,000円
合計
164,000円
なお、家賃について、統計では持ち家がある人も多く含まれているので相場の金額が低くなっています。離婚後に賃貸住宅に入居する予定の方は、月額3万円~5万円程度はみておいた方がよいでしょう。
また、お住まいの地域や各自の生活スタイルによっても生活費は異なりますので、上記の金額はあくまでも参考としてお考えください。
(3)離婚後の生活費等の工面方法を明確にする
上記のように離婚後の生活費等にはそれなりの金額が必要になりますので、そのお金をどのように工面するのかも考えておきましょう。
まずは夫と財産分与について話し合う際に、離婚後の生活費等の試算結果を示し、「最低でも○年分の生活費として○百万円は欲しい」と伝えて、配慮を求めるのもよいでしょう。
年金分割によって将来の受給額がいくらになるのかも確認しておくべきです。
また、50代であればまだまだ仕事も大切です。
看護師や介護福祉士、美容師その他の資格をお持ちであれば、ブランクがあっても仕事は見つけやすいといえます。
特段の資格や経験がない場合でも、以下の職種なら採用されやすく、働きながら資格を取ることも可能です。
ヘルパー
生命保険のセールスレディ
タクシードライバー
他にも、50代で離婚した女性が多く採用されている職種として、以下のようなものが挙げられます。
コールセンター
データ入力
清掃やベッドメイク
飲食店のホール係などのサービス業
スーパーやコンビニでのレジ打ち
お持ちの資格や経験、希望するライフスタイルなどに応じて、働きやすい職種を探されるとよいでしょう。
(4)子どもへの説明
50代で子どもがすでに大きくなっているとしても、両親が離婚するということは子どもにとってショックなことに変わりありません。そのため、50代の離婚においても子どもの気持ちや立場を考慮することは大切です。
離婚する(したい)ことを子どもに伝えるときは、単に「自由に生きたい」というだけでは反対される可能性もあるでしょう。成人した子どもに対しては、離婚したい理由を正直に説明するようにしましょう。
また、成人した子どもなら、親の離婚後の生活費や将来の介護の負担なども気になるものです。両親が離婚することによって子どもの負担が増えるようでは、子どもが不満を持ち、親子関係が悪化するおそれがあります。
そのため、離婚後の生活設計はしっかりと考えていることや、介護が必要となったときのために費用も確保する予定であることなども説明しておいた方がよいでしょう。
配信: LEGAL MALL