主に冬に流行するインフルエンザは、気管支炎、クループ、肺炎などの呼吸器の病気や脳炎・脳症を起こして重症化しやすい病気です。ですから、毎年、流行前までに免疫をつけておくために、秋になると「インフルエンザ」の予防接種が始まります。
今年は日本でも、2歳の子どもから使える「鼻から接種するインフルエンザワクチン(フルミスト®)」が使えるようになりました。効果や副作用、実際にフルミストを希望するにはどうしたらいいか、解説します。
連載「ママ小児科医さよこ先生の診療ノート」の10回目です。
鼻スプレーのインフルエンザワクチン「フルミスト」
インフルエンザのワクチンといえば、腕に打つ皮下注射(不活化ワクチン)が主流ですよね。一方で、鼻からスプレーのように噴霧する「経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(経鼻ワクチン、フルミスト®)」というものもあります。
腕に打つ皮下注射(不活化ワクチン)は、生後6カ月から接種でき、13歳未満では(2〜4週間ほどあけて)2回接種することで、免疫獲得が期待できます。一方で経鼻ワクチン(フルミスト®)は2歳以上から接種できます。鼻の穴の左右に1回ずつ、スプレーのように噴霧すれば完了です。
なおいずれのワクチンも、ほかのワクチンと同時に接種することができます。経鼻ワクチン(フルミスト®)はすでにアメリカやヨーロッパで認可され、小児にも使用されています。
子どもにとって、注射は痛くて恐怖を伴うもの。もし鼻からスプレーするだけでインフルエンザが予防できるのであれば、これはうれしいですよね。
経鼻ワクチンは、注射と変わらない効果あり
では実際に、鼻からスプレーするだけでも、効果はあるのでしょうか。
厚生労働省の資料によれば、日本人の小児(2歳以上19歳未満)において、経鼻ワクチン(フルミスト®)を使用することで、インフルエンザの感染・発症予防に有効であることが報告されています。また海外のデータですが、皮下注射(不活化ワクチン)と比べて、経鼻ワクチン(フルミスト®)の効果は劣らないというデータも示されています。
こうした報告を受けて、アメリカ小児科学会やアメリカ疾病予防管理センターでは、小児に対するインフルエンザ予防の1つの選択肢として、経鼻ワクチン(フルミスト®)を選択することを認めています(経鼻ワクチンを特別に推奨している、注射の不活化ワクチンよりも推奨している、ということではありません)。
なお以前は、経鼻ワクチン(フルミスト®)のほうが効果が低いという結果が出たため、アメリカでも推奨されなかった時期がありました。この理由としては、経鼻ワクチン(フルミスト®)の保存方法が不適切であったためです。たとえば日本で個人輸入されるようなケース(国や製薬期間が正式に認めたルートではない入手方法のケース)では、経鼻ワクチン(フルミスト®)に含まれる有効成分が、効果が認められる下限量の10%程まで低下していたという報告もあります。
こうした報告を受けて、各国で適切に経鼻ワクチン(フルミスト®)を管理できる体制が構築されてきました。日本でも、国内の製薬会社である第一三共が、アメリカと共同しながら開発し、有効かつ安全に接種できる体制が整ったため、厚生労働省からも薬事承認がおりた、という流れです。
配信: たまひよONLINE