家賃滞納のままでも債務整理できる? 部屋を失わずに借金問題を解決する方法

家賃滞納のままでも債務整理できる? 部屋を失わずに借金問題を解決する方法

3、債務整理|個人再生をした場合の滞納家賃について

個人再生は、債務整理のうちで最も複雑な手続きです。

そのため、滞納家賃の取扱いも複雑になるので、弁護士の指示にしたがう必要があります。

(1)個人再生を申し立てる場合の家賃の支払い方

個人再生を申し立てる場合の家賃の支払い方は、自己破産の場合と同様で

滞納家賃がある場合には弁護士・司法書士に債務整理を依頼した後に返済してはいけない
毎月の家賃はきちんと支払う

ということが原則的な支払い方法となります。

個人再生において偏頗弁済(へんぱべんさい)があるときには、偏波弁済がなされた金額分だけ、手続きで返済しなければならない金額が増えます。

ただし、家賃滞納の状況によっては、偏頗弁済となることを承知した上で滞納家賃を先に解消させてしまうという判断をすることもあるかもしれません。

弁護士とよく相談した上で、指示にしたがうことが一番安全な選択肢になります。

(2)個人再生した場合の滞納家賃の取扱い

個人再生をした場合の滞納家賃も、自己破産の場合と同様に債務整理の対象となります。

個人再生の対象となる負債は、債務者が作成・提出し裁判所の認可を受けた借金の一部を分割返済するための「再生計画」に基づいて、返済していきます。

したがって、滞納家賃についても「再生計画で定められたどおり」に返済していかなければなりません。

①個人再生の対象となった滞納家賃は「一部免除」となる

個人再生では再生計画の認可によって、「権利の変更」がなされます。

権利の変更とは、簡単にいえば「借金の一部免除」です。

実際の再生計画(案)では、権利の変更については下記のように記載するのが一般的です。

たとえば、滞納家賃が2ヶ月分の10万円で、再生計画による免除率(減額率)が80%だったというケースであれば、滞納家賃も80%免除となるので、2万円を分割返済すればよいということになります。

なお、この場合の免除率(減額率)は、債務者が抱えている負債の総額と所有している(差押え可能な)財産の総額との関係で決まります。

②分割返済は「すべて借金を同じように返済する」のが原則

再生計画が認可された場合には、債務者は「再生計画を厳守して」分割返済を実施しなければなりません。

「厳守して」というのは「再生計画とちょっとでも違う返済をしてはいけない」ということです。

イメージしやすくするために、①でも紹介した以下の例を用いて説明してみましょう。

滞納家賃:10万円(2ヶ月分)
他の負債(カードローンなど)の総額:490万円
免除率:80%(計画返済総額100万円)
返済期間:3年(12回払い)

上のケースにおいて滞納家賃は8割免除となるので、「2万円」を再生計画にしたがって返済することになります。

個人再生では「3ヶ月に1回以上の頻度」で返済を実施する必要があるので、3年間の返済期間であれば3カ月に1回の支払いの場合は12回払いとなります。

この条件は、すべての借金に平等に適用されるため、2万円の滞納家賃についても約1700円ずつの12回払いで返済していくのが原則となります。

つまり、「今月はお金に余裕があるから家賃は5000円返済しよう」ということや、お金ができた(他の借金が免除されて支払いが楽になった)ので、「滞納家賃だけは2万円ではなく10万円全額しよう」ということは許されません。

債務者が再生計画に従わなかった場合には、再生計画の認可が取り消されることもあるので十分注意しましょう。

(3)滞納家賃を完済できるのは、再生計画の履行が終わってから

返済義務の免除と「滞納を解消しなくても追い出されない」ということが別の問題であることはすでに説明したとおりです。

したがって、「今の部屋にそのまま住み続けたい」というのであれば、家賃の滞納は解消しなければなりません。

しかし、個人再生の場合には、再生計画の履行が完全に終わるまでは、「債権者平等の原則」によって一部の債権者だけに弁済することはできませんので、上で用いたケースであれば、免除された8万円分の滞納家賃は、再生計画の終了を待ってから支払うということになります。

なお、滞納家賃を裁判所に申告しなかった場合には、2万円分の分割返済も禁止されることになるので、大家さんにとってはさらに不利な状況になってしまうこと(強制解約に踏み切られるということ)にも注意しておきましょう。

4、部屋を追い出されずに借金問題を解決するために注意すべきこと

多額の借金に加え、家賃の滞納があるときには、特に次の点に注意する必要があります。

(1)1日でも早く債務整理の相談をする

金融機関からの借金だけでなく、家賃の支払いも苦しいというときには、とにかく1日でも早く弁護士に相談することが重要です。

現状よりも家賃の滞納額が増えることで、いまの家を強制退去させられるようになれば、生活もさらに追い詰められてしまうからです。

たとえば、弁護士に債務整理を依頼すれば金融機関への借金返済をストップさせることができるので、毎月の家賃を確実に支払えるようになる場合が多いでしょう。

また、状況が悪化しすぎる前であれば、自己破産・個人再生ではなく、任意整理で借金を解決できる可能性も高くなります。

(2)大家との信頼関係が壊れないように誠実に対応する

家賃に滞納がある場合に債務整理をするときには、「大家さんの理解」がとても重要になります。

自己破産・個人再生した場合には、大家さんは必ず手続きに巻き込まれてしまうからです。

たとえば、大家さんが自己破産や個人再生について詳細な知識を持っていなければ、「債務整理されたら滞納家賃は回収できない」と思い込んでしまって、「賃貸契約の解除」を真剣に考えてしまうかもしれません。

また、個人再生を利用する場合であれば、計画返済中は「滞納を解消したくても解消できない」ということも理解してもらわなければなりません。

これらの大家さんとの交渉ごとは、最低限の信頼関係がないと行うこともできません。

すでに家賃を滞納してしまっている状況では、対応の仕方を間違えると回復不可能な程度にまで関係が悪化してしまうこともあるので、慎重に対応しましょう。

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