個人再生を利用して借金を克服したにもかかわらず、再び多額の債務に直面することがあります。また、分割返済の途中で行き詰まることもあるでしょう。
今回は、このような状況で「2回目の個人再生」を申し立てることができるのかについて検証してみましょう。
個人再生の基本に関しては以下の関連記事をご覧ください。
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1、2回目の個人再生における2つのパターン
2回目の個人再生となってしまう場合には、大きくわけて次の2つのパターンがあります。
過去の個人再生(債務整理)を完了させて、別の借金で2回目の個人再生を申し立てる場合
再生計画の履行中に支払いに行き詰った場合
(1)過去に個人再生の経験がある場合
2回目の個人再生となる最初のパターンは、過去に個人再生(や他の債務整理)を無事に完了させてから別の借金が原因で2度目の個人再生となる場合です。
この場合には、前回の個人再生(や自己破産)の手続の種類や、手続終了から経過した期間がポイントになります(詳しくは後段2、で解説を加えます)。
(2)再生計画の履行中に支払いに行き詰った場合
2つ目のパターンは、裁判所から認可された再生計画(分割返済の計画)の遂行ができなくなってしまった場合に、再度の個人再生を検討するという場合です。このパターンでは、再生計画の履行ができなくなった理由などがポイントになってきます(後段3、で詳しく解説します)。
2、過去に債務整理をした人が2回目に個人再生するときの注意点
過去に債務整理の経験のある人が2回目の債務整理として個人再生を申し立てる場合には、最初の債務整理の種類によって、更に次の3つのケースに分けて整理することができます。以下では、それぞれのケースにおける注意点について確認していきましょう。
(1)任意整理→個人再生のケース
最初のケースは、1回目(前回)の債務整理が任意整理であったという場合です。このケースもさらに、両方の手続の対象となる借金が同じ場合と異なる場合とに分けて考えることができます。
①任意整理の対象にした借金とは別の借金で個人再生する場合
このケースは、任意整理によって借金を解決させた(和解内容の履行が終わった)数年後などに別の借金が原因で個人再生するような場合が典型例といえます。
この場合には、過去に債務整理をしていたということが個人再生の手続に悪い影響を与えることは基本的にはありません。過去に任意整理の経験があるかどうかによって、個人再生の利用が制限されるということはありません。
ただし、任意整理の債権者と個人再生の債権者が同じという場合には、個人再生における再生計画案の議決の場面で悪い影響が生じる可能性がないわけではありません。数年間で2度も債務整理をされてしまえば、債権者の心証が悪くなってしまうことも否定できないからです。
②任意整理した借金についてさらに個人再生を申し立てる場合
任意整理は、債権者との間で借金の残元金を数年間程度の分割払いで返済し直す内容の和解を交わすことが一般的です。この分割払いの途中で、支払いに行き詰まってしまったことで個人再生を申し立てるというのが2つ目のケースです。
この場合も、任意整理に失敗したことで個人再生ができないということはありません。ただし、この場合にも、前後の債務整理の債権者が同じ(で借金も同じ)ということになるため、債権者が再生計画案に反対するという可能性がないわけではありません。
(2)個人再生→個人再生のケース
個人再生も裁判所の手続きが終わった後に数年間(原則3年間)の分割返済があるという点では任意整理と同様といえますので、分割返済(再生計画の履行)を終えてから別の借金について個人再生をするという場合と、分割返済に失敗して同じ借金について個人再生を検討するという場合とに分けることができます。ただ、後者のケースについては、後段3、で別にとりあげることになるので、ここでは、前者の場合のみについて解説します。
この場合には、前回の個人再生の手続の種類と、個人再生終了からの期間によって2回目の個人再生の取扱いが異なってきます。
①前回の個人再生が「小規模個人再生」であった場合
個人再生の手続は、小規模個人再生という方式と、給与所得者等再生という方式の2つの方式があります。前回(1回目)の個人再生が小規模個人再生であった場合には、2回目の個人再生についての制限は生じません。
②前回の個人再生が「給与所得者等再生」であった場合
これに対し、前回の個人再生が「給与所得者等再生」であった場合には注意が必要です。この場合で、前回の個人再生(再生計画認可決定確定の日)から7年以上経過していないときには、再度の給与所得者等再生の利用は認められないからです。
前回の個人再生が小規模個人再生か給与所得者等再生かで2回目の取扱いが異なるのは、小規模個人再生は債権者の意向を再生計画案の認可に反映できるのに対し、給与所得者等再生では債権者の反対があった場合でも再生計画が認可され得る(債権者の意向を無視して借金が減額されうる)ことを理由としています。
ただし、前回が給与所得者等再生であり、かつ、前回から7年以内という場合であっても債権者の同意を前提とする小規模個人再生によって個人再生を申し立てることは可能です。
なお、実際に利用される個人再生のほとんどは、小規模個人再生ですので、前回の個人再生から7年以内の申立てであることを理由に個人再生ができないというケースはほとんどないといえるでしょう。
(3)自己破産→個人再生のケース
前回の債務整理が自己破産であった場合の個人再生の申立ては、上で解説した前回が給与所得者等再生であった場合に準じた取扱いとなります。自己破産をしたケースでは、破産免責によって借金の返済義務が(債権者の意向とは関係なく)完全に免除されることになるからです。
したがって、前回の自己破産(免責決定確定の日)から7年以内の個人再生は、小規模個人再生の方式でしか行うことができません(給与所得者等再生の利用を申し立てた場合でも、裁判所は小規模個人再生を開始する決定を下します)。
ただ、この点も、実際に利用されている個人再生のほとんどは小規模個人再生となりますので、この制限によって個人再生ができないというケースはさほど多くないといえます。
また、前回の自己破産において「免責不許可」となってしまった場合には、過去の自己破産直後であっても給与所得者等再生を利用することができます。
(4)2回目の個人再生が難しい場合は自己破産
ここまで解説してきたように、過去に債務整理の経験があるということを理由に2回目の債務整理として個人再生ができないということは、実際にはあまりありません。
ただし、債権者との関係によっては、再生計画案の可決が難しいというケースもないわけではないといえます。たとえば、負債総額の50%を超える大口債権者が再生計画案に反対することが濃厚といえる状況では、個人再生の申立ては事実上難しいといえるからです。また、債務者の収入状況によっては、再生計画案の履行が難しいということもあるかもしれません。
そのような場合には、自己破産を申し立てることで借金を解決するのが最もスタンダードな方法となります。自己破産(破産免責)であれば、債権者の同意も、手続後の返済(収入)も不要だからです。
配信: LEGAL MALL