自動車やバイクなどの自動二輪車、自転車と人が接触する交通事故が発生した際、被害者側が怪我をすることもあるでしょう。
例えば、交通事故によって顔を怪我してしまい、さらにその傷が残ってしまった場合はどうなるのでしょうか。
本記事では、交通事故によって顔に傷が残った場合、どのように後遺障害等級として認定されるのかまとめました。
交通事故における後遺障害等級の認定の基本的な内容から慰謝料の相場、実際の事例などをふくめて解説していきましょう。
後遺障害等級の認定の基準
交通事故によって怪我をした被害者は、治療を懸命に行ったとしても、残念ながら、後遺症が残存してしまうこともあります。
その場合、後遺症が残ったことを認めてもらうプロセスを経る必要があります。
オーソドックスな方法としては、相手方が加入する自賠責保険会社において後遺障害等級の認定を受ける方法です。後遺障害等級に該当するかどうかの調査は、判断の公平化、客観化のために、各自賠責保険会社の立場を離れた損害保険料率算出機構が行っています。自賠責保険会社は、その調査結果に基づいて、認定された後遺障害等級の内容に従い、支払額を決定し、請求者に支払うことになります。
ここでいう「後遺障害」とは、「傷害が治ったときに身体に存する障害」(自動車損害賠償保障法施行令(以下「自賠法施行令」といいます。)2条1項2号)を指します。
「後遺障害」を「後遺症のうち、自賠責の基準によって等級が認定されたもの」を指すこともありますが、「後遺障害」を「後遺症」を区別せずに、負傷が治ったときに残存するものという意味で用語を使うこともあります。
自賠責の後遺障害等級には、介護者の要否に応じて別表一と別表二に分けられ、別表二では1級から14級の等級に分けられています。
後遺障害の認定を受けるためには、ご自身の症状がどの等級に該当するのか確認しておく必要があるでしょう。
自賠法施行で規定されている後遺障害等級の症状・認定基準を下記にまとめました。
後遺障害等級の症状・認定基準の一覧表
自賠法施行令別表一(介護を要する後遺障害)
等級
保険金額
介護を要する後遺障害
第一級
4,000万円
①神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
②胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
第二級
3,000万円
①神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
②胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
自賠法施行令別表二(それ以外の後遺障害)
等級
保険金額
後遺障害
第一級
3,000万円
①両眼が失明したもの
②咀嚼及び言語の機能を廃したもの 他⑥まで
第二級
2,590万円
①一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
②両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの 他④まで
第三級
2,219万円
①一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
②咀嚼又は言語の機能を廃したもの 他⑤まで
第四級
1,889万円
①両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
②咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの 他⑤まで
第五級
1,574万円
①一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの
②神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 他⑧まで
第六級
1,296万円
①両眼の視力が〇・一以下になつたもの
②咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの 他⑧まで
第七級
1,051万円
①一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になつたもの
②両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 他⑬まで
第八級
819万円
①一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
②脊柱に運動障害を残すもの 他⑩まで
第九級
616万円
①両眼の視力が〇・六以下になつたもの
②一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの 他⑰まで
第十級
461万円
①一眼の視力が〇・一以下になつたもの
②正面を見た場合に複視の症状を残すもの 他⑪まで
第十一級
331万円
①両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
②両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 他⑩まで
第十二級
224万円
①一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
②一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 他⑭まで
第十三級
139万円
①一眼の視力が〇・六以下になつたもの
②正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの 他⑪まで
第十四級
75万円
①一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
②三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 他⑨まで
※参考
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/jibai/payment_pop.html
後遺障害等級認定の仕組みについて
先ほどの後遺障害等級表は、補償の対象とする身体障害の程度を定めるものです。
身体の部位ごとに障害の系列と呼ばれる生理学的観点から分けられた障害軍に分けています。また、各障害は、労働能力喪失の程度に応じて一定の順序に配列されており、これは障害の序列と呼ばれています。以下、説明します。
身体の部位は、①眼、②耳、③鼻、④口、⑤神経系統の機能又は精神、⑥頭部、顔面、頚部、⑦胸腹部臓器、⑧体幹、⑨上肢、⑩下肢部の10つの部位に区分されます。
部位ごとに区分された身体障害は、更に生物学的観点から、35の系列に分類されます。例えば、口の部位の場合は、歯牙障害と、そしゃく及び言語機能障害に分類されます。
このように分類された障害は、労働能力喪失の程度、簡単にいえば、症状の重さに応じて、障害の序列が定められます。
また、後遺障害等級の認定には、①併合、②加重、③準用(「相当等級」ともいいます。)という3つのルールが定められています。
簡単に説明すると、併合は、複数の後遺障害が残存した場合、どのような等級を認定するのかというルールです。
加重とは、既に後遺障害のある者が傷害を受けたことによって同一部位について後遺障害の程度が重くなった場合、いくら保険金額を支払うのかというルールです。
準用(「相当等級」ともいいます。)は、各等級の後遺障害には該当しない後遺障害であって、各等級の後遺症に相当するものを、当該等級の後遺障害とするというルールです。
これらのルールは複雑で分かりにくいものですので、ご自身の等級認定に関し疑問が残った場合は、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
顔に傷が残った場合の後遺障害等級について
醜状傷害とは、身体に醜いありさまを残した後遺障害のことをいいます。
先ほどの後遺障害等級表は、外貌については「醜状」と表現しています。
顔に傷が残った場合、すなわち、外貌の醜状障害については、以下のとおり、3段階の等級が定められています。
① 第7級12号 外貌に著しい醜状を残すもの
② 第9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
③ 第12級14号 外貌に醜状を残すもの
以下、3段階の等級を具体的に説明します。
① 外貌における「著しい醜状を残すもの」(第7級12号)とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度のものをいいます。
なお、瘢痕、線状痕、及び組織陥没であって眉毛、頭髪等に隠れる部分については、「人目につく程度以上」の場合とは取り扱わないことになります。
ア 頭部にあっては、てのひら大(指の部分は含めません。)以上の瘢痕(はんこん)又は頭蓋骨のてのひら大以上の欠損
イ 顔面部にあっては、鶏卵以上の瘢痕又は10円銅貨以上の組織陥没
ウ 頚部にあっては、てのひら大以上の瘢痕
② 外貌における「相当程度の醜状」(第9級16号)とは、原則として長さ5cm以上の線状痕で、人目につく程度以上のものといいます。
③ 外貌における単なる「醜状」(第12級14号)とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度のものをいいます。
ア 頭部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
イ 顔面部にあっては、10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3㎝以上の線状痕
ウ 頚部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕
自賠責保険における外貌の醜状障害の認定については、例えば、2個以上の瘢痕や線状痕が残ってしまった場合どのように考えるのか等、上述に記載したこと以外にも細かいルールがあります。交通事故によって顔に傷が残ってしまった場合、それが外貌の醜状障害に該当するのかどうか疑問があれば、弁護士に相談してみましょう。
配信: LEGAL MALL