「嫌疑不十分」とは?
今回は「嫌疑不十分」が「無罪」とはどう異なるのか、さらに「嫌疑不十分」となった場合、何が起こるのか、などについて詳しく解説します。
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1、嫌疑不十分とは?
嫌疑不十分は、検察官が被疑者を不起訴とする場合の理由の一種です。
不起訴とは、刑事事件について裁判による判断を求めないことを意味します。
検察官は裁判にするか否かを判断する権限を持っており、警察から送られてきた事件について、裁判をしない不起訴処分にすることもできるのです。
嫌疑不十分は、不起訴処分の中でも、「捜査の結果、被疑者が犯罪をした疑いは残るものの裁判で有罪とするほどの証拠がない」という場合をいいます。
裁判で有罪にするには、「犯罪をしたことについて、一般人が合理的な疑いを抱かない」といえるほどの高いレベルの立証が必要になります。
「8割方犯罪をしているだろう」といった程度では有罪となりません。
そのため、疑いがあるというだけで検察官が起訴するのは困難です。
そうした「シロとはいえないがクロともいえない」事件では嫌疑不十分により不起訴処分となるのです。
2、嫌疑不十分以外の不起訴の理由
不起訴となる理由は嫌疑不十分のほかにもあり、その数は20種類にものぼります。
その中で主なものを以下で紹介します。
(1)罪とならず
「罪とならず」とは、被疑者の行為がそもそも犯罪にあたらないという場合です。以下の場合が考えられます。
①犯罪の構成要件に該当しない
犯罪が成立する条件を満たさない場合には「罪とならず」として不起訴となります。
例えば、脅迫の容疑がかけられたものの、発言が遠回しであったため罪には問えなかったような場合です。
②犯罪を不成立とする事実がある
犯罪の要件にあてはまる行為をしていても、不成立となる何らかの事情がある場合には「罪とならず」として不起訴となります。
例えば、暴行の容疑がかけられたものの、被害者とされた人の攻撃に対抗して暴行したに過ぎず正当防衛が成立するような場合です。
(2)心神喪失
責任能力がない場合には「心神喪失」として不起訴となります。
精神疾患の影響を強く受けて犯罪に及び、鑑定を経て責任能力がないとされた場合です。
(3)嫌疑なし
犯罪の疑いが晴れた場合には「嫌疑なし」として不起訴となります。
真犯人が名乗り出て人違いとわかった場合やアリバイが成立した場合などです。
(4)親告罪の告訴・告発・請求の欠如・無効・取消し
親告罪の告訴等が無効・取消しとなった場合は不起訴となります。
親告罪とは、被害者などの告訴がなければ処罰できない犯罪のことです。
具体例としては名誉毀損罪、器物損壊罪が挙げられます。
親告罪についての告訴がもともと無効であったり、示談が成立して告訴が取下げられたりすれば、処罰するための前提条件が欠けることになるため、不起訴とされます。
(5)起訴猶予
犯罪をしたことが事実で、十分な証拠があり有罪とできる場合でも不起訴となることがあり「起訴猶予」と呼ばれます。
検察官は起訴するかどうかの裁量を持っているため、以下のような事情を総合的に考慮し、起訴猶予として不起訴にすることが可能です。
犯人の性格、年齢、境遇
犯罪の軽重・情状(被害の程度、犯行の動機・態様など)
犯行後の情況(反省の程度、示談の有無など)
万引きのような軽微な犯罪で、犯行したのが初めてで示談もしている場合には起訴猶予とされることが多いといえます。
配信: LEGAL MALL