「各自治体によって、さまざまな助成制度が設けられているので、妊活中のご夫婦は事前に調べておくといいですよ」
そう話すのは、親子カフェや一般企業など、多くの顧問先を持つ社会保険労務士法人ジェイズ事務所の代表・片桐めぐみさん。どんな制度があるのか、片桐さんに詳しく聞いてみました。
働くママは会社の制度もチェックしよう
昨今、共働き夫婦は増加傾向にあり、会社に属していながら妊娠するママも少なくない。そういった人のためにも助成制度があるといいます。
「会社にお勤めでご自身が勤務先の健康保険に加入されているなら、『出産手当金』という助成制度があります。これは労働基準法で定められた産前産後の期間中、給料の6割くらいを給料の代わりとして、健康保険から受け取ることができる制度です。ただし、産前産後休暇をとっていたり、健康保険に加入していることなどが条件になり、旦那さんの扶養範囲内の方は対象外になります」(片桐さん、以下同)
産前産後の期間とは、出産日の42日(多胎の場合は98日)前から出産日の翌日以降56日まで。また、ある一定の条件を満たせば、退職後に受給もできるため、働くママは全国健康保険協会のウェブサイトをチェックしましょう。
妊娠時の体調不良をサポートする制度
前述の制度は働くママの給料を助成するものですが、ほかにも妊婦の医療費を助成する制度があります。
「たとえば東京の場合、『妊娠高血圧症候群等の医療費助成』という制度があります。体調を崩しやすい妊婦さんをサポートするもので、妊娠高血圧症候群や糖尿病、貧血などの“入院医療”が必要になった際に、入院費の一部が助成されるというものです」
糖尿病は中年男性がかかりやすいイメージがありますが、妊娠中にかかりやすい病気ともいわれています。助成に関する問い合わせは、東京都の場合、東京都福祉保健局で受け付けているようです。
自治体によってはタクシー利用券や買い物券もある
少子高齢化による人口の減少が危惧される昨今、市区町村によっては、妊娠・出産後の家庭に対して、充実した制度を設ける自治体もあります。
「少し変わったところを紹介すると、東京都の場合、葛飾区では3人乗り自転車の購入費の2分の1(上限3万円)を助成する制度があります。ほかには、中央区では、『タクシー利用券1万円』や『共通買い物券3万円』、里帰り出産時の他県で検診を受けた際にかかった費用の一部助成などがあります」
市区町村によるサポート制度は数多く、いくつか事例をお聞きしました。
・東京都日の出町「次世代育成クーポン」
子どもが中学卒業するまでの期間、子ども1人につき月額1万円分のクーポンをもらえ、保育料や給食費、特定事業者として登録のある店舗などでの支払いに使える。
・埼玉県北本市「0歳児おむつ無料化事業」
0歳児のおむつを無料で交換できるクーポン。同市と契約した取扱店で、35袋分の紙おむつと交換可能。布おむつを希望する場合は、同市・こども課窓口で1年分の現物支給。
・茨城県利根市「子育て応援手当支給制度」
18歳未満の子どもを持つ家庭で、第二子を出産した際に総額50万円、第三子以降は総額100万円が支給される。
※上記のサポートを受けるためには、一定の条件を満たしている必要があります
「このように自治体によって制度が異なるのは、都心ではドーナツ化現象が起こっていて、地方では若者が都心へ出て行ってしまうなど、各地域に悩ましい問題があり、それらを解消するためのひとつとして、子育て世代を呼び込みたいという思いがあるのではないでしょうか」
妊娠・出産時にも費用はかかりますが、子どもが大人に成長するまでの間には、1000万円以上のお金がかかるといわれています。少しでも経済的負担が軽くなるように、子育てがしやすい地域を探してみてもいいかもしれません。
(文・奈古善晴/考務店)
※記事内容は2017年5月12日現在の情報です