過去でもない、未来でもない、大事なのは今
ゆり:自分で買った服やバッグは、高い物でもわりと捨てられるんです。捨てられないのが、人からもらった物。その人が時間をかけて私のために選んでくれた物を捨てるなんて申し訳ないし、バチが当たる気がして……。たとえばうちのリビングに10年以上飾ったままの置き物。友達から引っ越し祝いにもらった物なのですが、ただでさえ物があふれた空間で、存在を忘れてしまっています。
ひでこ:ゆりさん、「バチ」って何?どんなバチが当たると思う?
ゆり:……内容まで考えたことはない……ほんまや、バチって何(笑)。
ひでこ:バチとは「この先に困りごとが起きるかもしれない」ということ。でもそれは未来の話だし、そもそも、起こるかどうかもわからない。優先すべきは目の前の課題の解決。多過ぎる物を減らすことなんです。断捨離はいつでも、未来ではなく「今」志向。だから断捨離の世界にバチなんてものは存在しません。
ゆり:ひでこ先生はご著書で、「ゴミだから捨てなさい」ではなく、「大事に思うからこそ手放していい」と丁寧に書いてくださっていますよね。私のような、捨てられない人の罪悪感に寄り添った提案で、心が軽くなりました。
ひでこ:物は、私たちが愛(め)でたり使うことで生かされる。言い換えれば、愛でなくなったり、使わなくなった物は、役割を終えた物なんです。自分を楽しませてくれた物だからこそ、最期はきちんと弔ってあげないと。だから「ありがとう」と心の中で声をかけて、断捨離する。それが物への誠意ですよ。
ゆり:確かに。くれた友達だって、もう忘れているかもしれないし、「アレまだ持ってたん!?」とびっくりされたことさえあります(笑)。
ひでこ:贈り物を渡した時で、くれた人の心は満たされ、物とは切り離されている。だから持ち物の主(あるじ)のゆりさんがきちんと始末をつけてあげないと、物は気の毒なミイラになってしまうわ。
渋っているなら捨てなくていい
ゆり:いろんなことを言ってきましたが、近い将来「全部要らんやん!」みたいにパスパス捨てられるときがくる予感もあるんです。
ひでこ:いい兆しね。だとすると、捨てるのを渋っている間は、まだ捨てなくていいのよ。
ゆり:新刊(『syunkon カフェごはん8』)をつくっているとき、この本を無事に完成させることができたら、これまで大事に持っていたアイデアノートや過去の掲載誌などを捨ててもいい、と初めて思ったんです。私に自信ができたときが、手放せるときなのかも?
ひでこ:大正解。捨ててもいいと感じ始めているゆりさんには、自信が芽生えつつあるのだと思いますよ。
ゆり:ありがとうございます!……と言いながら、実際捨てようとすると「大丈夫?二度と戻ってこーへんで?」という頭の声に負けて、結局まだ捨ててないんです。修行が足りない。
ひでこ:二度とこういうアイデアを思いつかなかったらどうしよう?再びこんな文章を書けなかったらどうしよう?これは創作している人によくある思考だと思うけど大丈夫。過去の物を手放せば、空いたところに新しい物が入ってきます。私は最近、創作ノートをすべて断捨離しましたが、新しいアイデアが次々に湧いて、思考が追いつかないくらいよ。
ゆり:めちゃくちゃ素敵です!勇気が沸いてきました。この気持ちのまま大阪に帰って早くバシバシ捨てたい。ただ、断捨離さえしたら人生がうまく動き出すのはわかっているからこそ、断捨離してうまくいかなかったら、責任転嫁できなくなりますね(笑)。
ひでこ:心配ご無用。ゆりさんが断捨離した先には、これまでとはまったく違うステージが広がっていますよ。未知なる景色を楽しみに、日々の小さな断捨離を重ねてくださいね。
<教えてくれた人>
・やましたひでこさん
断捨離(R)提唱者。1954年、東京生まれ。子育てや介護を経験した後、ヨガの行法哲学から着想を得た「断捨離」理論を構築。レギュラー出演中のBS 朝日『ウチ、“断捨離”しました!』(毎週火曜夜9時)は放映200回突破。最近は中国と日本各地を断捨離講演行脚の日々。
・山本ゆりさん
料理コラムニスト。大学時代に始めたブログ「含み笑いのカフェごはん」が支持を集め、2011年に初の料理本『syunkonカフェごはん』(宝島社)を出版。その後、シリーズ化され、累計780万部を超えるベストセラーに。最新刊は『syunkonカフェごはん8』。3児の母。
参照:『サンキュ!』2024年11月号「断捨離(R)トーク ひでこの部屋」より。掲載している情報は2024年9月現在のものです。
『サンキュ!』編集部
配信: サンキュ!
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