粉ミルクの溶けにくさが小さな育児ストレスの元に
ーー今回の「アイクレオ」リニューアルの背景を教えてください。
犀川さん(以下、犀川) 日本の年間出生数は年々減少し、少子化が進んでいます。しかし、その傾向に反して乳児用粉ミルク市場は拡大傾向にあり、粉ミルクを使う人は増加しています。
江崎グリコ提供資料より
犀川 2015年と2021年の栄養調査では、2015年に粉ミルクを利用する人は5割以下だったのに対し、2021年には6割以上の人が利用していることがわかっています。これはおそらく共働き世帯の増加によるものだと考えられます。
江崎グリコ提供資料より
犀川 子育て中の共働き夫婦はとても忙しく、さまざまなシーンでできれば「時短」したいもの。とくに低月齢の赤ちゃんの授乳回数は1日7〜8回ほどになりますから、調乳の時の粉ミルクの溶けにくさは小さなストレスの元です。お客様相談室にも、「溶けにくいんですけど、溶かしやすいコツはありますか?」といったお問い合わせがたびたび届いていました。X(旧Twitter)でも、「溶けにくい」という投稿を目にしていました。そこで、お客さまに寄り添った製品を提供したいという思いから、粉質改善のため岐阜に粉ミルク工場を新設し、最新設備の導入を進めました。
ーー粉質改善のために新しい工場を設立する、というのはすごいですね!
犀川 アイクレオは、100年以上前の1913年に小児科医グループが赤ちゃんの健康を願って開発した「SMA」ミルクが原点です。私たちには、子どもの心身の健康の向上に取り組みたいという強い思いがあります。また、共働き世帯が増加する中で、男性の育児参加に貢献したいという思いもありました。
江崎グリコ提供資料より
それだけでなく、新工場では生産効率面や作業者の負担軽減の面から、生産設備を自動化したことも特徴です。以前の工場では、ミルク缶にフタをつける作業や、2缶セットの袋詰め作業は人が行っていましたが、今はそれもすべて機械が行っています。また、原料受け入れにおける自動開封機や、包装資材の無人搬送ロボットなども導入し、作業者に負担がかかる作業をなくすとともに、生産効率の向上を図っています。
現在は、日本に流通する粉ミルクタイプのアイクレオはすべてこの工場で製造しています。
重力を利用した製造方法でさらさらの溶けやすい粒子に改善
ーーリニューアルした「アイクレオ」は、なぜ溶けやすくなったのでしょうか?
犀川 新工場は地上6階建ての高い設備です。ポイントは上階にあるスプレードライヤーという工程で、原料の調合液を乾燥して粉状にし、その粉を重力を利用して上から下に落としながら、さらに液体原料をスプレーする製法です。これにより、大きさの異なる粒子同士が結合した、大きい顆粒状でさらさらしたパウダースノー粒子ができあがります。
江崎グリコ提供資料より
犀川 この設備では、重力を利用して上から下に落とすように製造してコンテナ状の輸送容器に充填しています。以前は別の方法で輸送していたのですが、従来の方法と比較して現在のほうが、粉ミルクがさらさらの粒子の形状を保ちやすく、安定した粉質を保つことができます。
ーー粒子が大きいと溶けやすくなるのですか?
犀川 「粒子が小さいほうが水に溶けやすいのでは?」というイメージがありますよね。ところが、小さな粒子は水に浮いてダマになってしまうので溶けにくいのです。一方、結合した大きな粒子は隙間に水が入るので、ダマができにくく水になじみ溶けやすくなります。できあがりの量200mlを作るのに、従来品は70度のお湯に溶けるまで平均85秒かかっていたのが、リニューアル後は32秒と、約50秒もの時間短縮が実現しました。乳児用粉ミルク「アイクレオ」シリーズ全体として、業界トップレベルの溶けやすさに改善しました。
江崎グリコ提供資料より
配信: マイナビ子育て