過去または現在てんかんに悩んでいる方でも、運転免許を取得・更新できる可能性があります。
この記事では、てんかん患者が運転免許に関して守るべきルールに焦点を当て、わかりやすく解説します。安心して運転できるための手順についてご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてください。
交通事故の加害者について知りたい方は以下の記事をご覧ください。
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1、てんかんで運転できるか考える前に|てんかんについて
まず、てんかんとは具体的にどんな症状をいうのか簡単におさらいします。
(1)てんかんとは
世界保健機関(WHO)によると、てんかんとは「脳の慢性疾患(徐々に発症して長期にわたる疾患)」と定義されています。
(2)てんかんの症状
てんかんは大脳に与えられる電気的な興奮から起こる病気です。
そして、電気的な興奮が起こる場所によって次の症状が出ると言われています。
手や顔の一部がピクピク動いたり、眼と顔が片方へ引き寄せられたりする運動発作
体の一部がしびれたり、視界がゆがむ、異臭・異音を感じるなどの感覚発作
吐気をもよおすなどの自律神経発作
聞いた言葉の意味がわからなくなったり、以前見たものが見えたり、恐怖や不安を覚えるなどの精神発作
2、てんかんと運転免許の取得
次に、てんかんと症状を患っている、又は、過去に患ったことがある方が運転免許を取得するための方法を解説します。
(1)運転免許取得までの流れ
①医師に相談
まずは、医師に相談し、診断書を作成してもらう必要があります。
なぜなら、警察の運用基準(以下、「運用基準」といいます)によると、以下のいずれかに当たる場合は、免許の拒否等(免許の拒否、保留、取消し又は効力の停止)は行わないとされているからです。
発作が過去5年以内に起こったことがなく、医師が「今後、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合
発作が過去2年以内に起こったことがなく、医師が「今後、〇年程度であれば、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合
医師が、1年の経過観察後「発作が意識障害及び運動障害を伴わない単純部分発作に限られ、今後、症状の悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合
医師が、2年間の経過観察後、「発作が睡眠中に限って起こり、今後、症状の悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合
*準中型自動車・中型自動車・大型自動車の免許、第2種免許の基準
なお、日本てんかん学会は、これらの免許については、「てんかんに係る発作が、投薬なしで過去5年間なく、今後も再発のおそれがないと認められる場合」以外は、取得を控えた方がよい、としていることに注意が必要です。
②運転適性相談窓口に相談
次に、医師への相談と同時に運転適性相談窓口にも相談しましょう。
各都道府県には、一定の病気を患い、運転に不安がある方のための運転適性相談窓口が設けられていて、相談に乗ってくれます。
相談し、医師の診断書などのチェックを経て、「免許取得が可能」と判断された場合は「運転適性相談修了書(以下、修了書といいます)」が交付されます。
修了書の交付を受けることができれば、下記④アでの免許申請時に比較的スムーズに手続きを進めることができます。
相談窓口一覧
③指定自動車教習所に通う
そして、①、②を経て「免許取得に問題ない」とのお墨付きをもらってから、指定自動車教習所(以下、教習所といいます)に通いましょう。
教習所では、技能試験、学科試験を受講の上、適性試験に合格すれば仮免許証の交付を受けることができます。
なお、仮免許証の申請の際に「質問票」の提出を求められます。
「質問票」には、病気の有無などについて「はい」か「いいえ」で答える5つの質問事項が設けられています(「はい」と答えた方は個別聴取を受けます)。
教習所での「技能検定」に合格し、教習所を卒業することができれば卒業証明書の交付を受けます。
卒業証明書の交付を受けた場合、④イで行われる「技能試験」は免除となります。
④運転免許センター・試験場に行く
仮免許証、卒業証明書、終了書などをもってお近くの運転免許センター、あるいは試験場に行きます。
ア 「免許申請書」、「質問票」を提出する
窓口で「免許申請書」と「質問票」に記入します(ここでも、質問事項に「はい」と答えた方は個別聴取を受けます。ただし、終了書の交付を受けている方は簡単な聴取で済みます)。
免許申請時の質問票に虚偽事項を記載すると「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」を科されるおそれがあります。
また、質問票を提出しない場合、記載の是正を求められたにもかかわらずこれに応じない場合は、以後の手続きが進められませんから注意が必要です。
イ 「運転免許試験」を受ける
アの手続きを経て問題ないと確認された場合、「運転免許試験」を受けることができます。「技能試験」が免除される場合は、「適性試験」と「学科試験」を受験します。
(2)運転免許試験に合格した場合
①「運転免許試験」に合格し、かつ、「運用基準」に該当する場合
運転免許を取得できます。
②「運転免許試験」に合格し、かつ、「運用基準」に該当しないものの、医師が「6月以内に「運用基準」に該当すると診断できることが見込まれる」との診断をした場合
6月以内の範囲で判断は保留され、医師の診断を待つことになります。
保留期間を経過して診断を得られなかったとしても、再度6月以内には「運用基準」に該当すると診断できることが見込まれる、と診断された場合はさらに6月以内の範囲で保留され診断を待つこともできます。
③ ①、②以外の場合
運転免許は取得できません。
配信: LEGAL MALL