撮影罪とは?処罰対象となる行為や刑罰、具体例について弁護士が解説

撮影罪とは?処罰対象となる行為や刑罰、具体例について弁護士が解説

5、性的目的でなければ撮影罪に該当しない?

人の裸や下着を撮影しても、性的目的でなければ撮影罪に該当しないのではないかという疑問をお持ちの方もいることでしょう。ここでは、その疑問に対してお答えします。

(1)正当な理由があれば撮影罪に該当しない

正当な理由に基づき撮影する場合は、撮影罪には該当しません。

しかし、ひそかに人の性的姿態等を撮影する行為に正当な理由が認められるケースは、医師が医療行為のためにルールに従って撮影する場合や、子どもが上半身裸で水浴びしている姿を親が成長記録として撮影する場合、子どもの相撲大会など上半身裸になるイベントの模様を撮影する場合など、極めて限定的です。

配偶者や恋人の裸を、芸術のためや記念に残しておきたいと考えた場合でも、「ひそかに」撮影することについて正当な理由は認められないと考えられます。

結局、日常生活の中で正当な理由が認められるケースは親が子を撮影する場合を除いて、ほとんどないといってよいでしょう。

(2)故意がない場合も撮影罪に該当しない

過失による撮影を処罰する規定はありませんので、故意なく偶然に人の性的な部位が写り込んでしまった場合は、撮影罪に該当しません。

例えば、アイドルなど有名人の撮影会や、スポーツの競技会で女性アスリートのユニフォーム姿を撮影した場合、偶然に下着が写り込んだとしても罪には問われません。

集合写真やスナップ写真を撮った際に、女性の下着や胸元などが偶然に写り込んだような場合も同様です。

ただし、ことさらに下着など性的な部位を狙って撮影した場合は撮影罪が成立するので、疑われないためには性的な部位が写ったデータは早めに削除した方がよいでしょう。

(3)肖像権を侵害する可能性はある

故意がなく撮影罪が成立しない場合でも、写り込んだ人の肖像権を侵害し、民事で慰謝料などの請求を受ける可能性はあります。

肖像権とは、みだりに他人から写真を撮られたり、撮られた写真をみだりに世間に公表されたり利用されたりしない権利のことです。

明文規定はありませんが、憲法13条で保障されている幸福追求権を根拠として、判例上認められている権利です。

例えば、女性の下着や胸元などが偶然写り込んだ写真を、そのままSNSやインターネット上の画像掲示板サイトなどに投稿すると、写り込んだ人から肖像権侵害を理由として慰謝料請求をされるおそれがあります。

SNSなどでプライベートな写真を公開する際、無関係の第三者が写り込んでいる場合にはマスキングやモザイク処理などで、その人の容貌や性的部位が見えないようにしましょう。

6、撮影罪でよくある質問

撮影罪に関しては、他にも様々な質問を受けます。ここでは、よくある質問に対して、まとめてお答えします。

(1)撮影罪の具体例は何ですか?

撮影罪の具体例には様々なものがありますが、狭義の撮影罪(性的姿態撮影等処罰法2条)に該当する典型例として、次のような例が挙げられます。

駅の階段やエスカレーターで、女性のスカートの中をスマートフォンで撮影(1項1号イ)
トイレ内や更衣室内に小型カメラを設置して利用者の性的な部位や下着を撮影(1項1号イ)
恋人との性行為の様子を小型カメラでひそかに撮影(1項1号ロ)
飲み会などで泥酔した知人女性の下着や胸元を撮影(1項2号)
インターネットで公開する意図を隠して、「絶対、誰にも見せないから」と約束して恋人の裸を撮影(1項3号)
マッチングアプリで出会った15歳の少女の裸を、20歳以上の者が撮影(1項4号)

撮影罪は、未遂でも処罰されることにも注意しましょう(性的姿態撮影等処罰法2条2項)。

例えば、トイレ内や更衣室内に盗撮目的で小型カメラを設置した場合、結果として誰も写らなかったり、性的な部位や下着が写らなかったとしても、撮影未遂罪が成立して処罰対象となります。

(2)撮影罪の証拠となるものは?

撮影罪の証拠としては、まず、撮影に使用したスマートフォンや小型カメラなどに保存さている映像のデータがあります。

警察に事情を聴かれた際、これらのデータを確認され、逮捕されることが多いです。

また、パソコンやUSB、DVDなどに保存した過去の撮影データも証拠となります。

立件された場合は、家宅捜索によってこれらの媒体物を押収され、余罪の証拠とされることが多いです。

また、犯行の様子を捉えた防犯カメラの映像や、犯行を目撃した人の供述も、犯人性と実行行為を裏付ける重要な証拠となります。

盗撮をはじめとする撮影罪は「バレなければいい」と考えて犯す人が多いですが、防犯カメラの映像や目撃者の供述によって発覚するケースは意外に多いです。

警察に発覚した場合、撮影データが残ってると言い逃れできず、初犯でも罰金刑などで処罰される可能性が十分にあります。

盗撮罪や撮影罪で逮捕された人の多くは「魔が差した」などと言い訳します。

人生を棒に振らないためには、盗撮罪や撮影罪には手を染めないようにしましょう。

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