「ヤングケアラー」とは、家事や家族の世話などを日常的に行っている18歳以下の子供のこと。本作の主人公は、小学3年生で洗濯・買い物・料理・掃除など家族の世話を担っている。多くは家族・親族に病気や障害があり、彼らの介護や面倒に忙殺されている状況にある。そのため、早退や遅刻も多く、同世代の子と友好関係を築くことができない。そんなヤングケアラーの実話をフィクションとして描く水谷緑(@mizutanimidori)さんの「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(文藝春秋)を紹介する。
■小学3年生で家族の重荷を背負う!!声を上げられないヤングケアラー
本作を描くきっかけについて、作者の水谷緑さんは「精神疾患に関する取材経験はあるものの、精神疾患を持つ親の子供について考えたことはありませんでした。ヤングケアラーの話を聞いて興味を持つようになりました。彼らは精神年齢が高く、魅力的で達観している人が多いため、家族の在り方の参考になります。元ヤングケアラーの話を聞くことで、『家族とはこういうもの』という思い込みが解体され、親子関係について考えさせられました」と心情を明かしてくれた。
水谷緑さんは、「本作の取材は約2年間にわたり、20代から50代の約10人のヤングケアラーに話を伺いました。オンラインや対面、メールで何度も話をお聞きしました。協力いただいた方々に深く感謝しています。彼らはカウンセリングを受けたり、本を読んだりし、自分自身を振り返って言語化する力を持っていました」と当時を振り返ってくれた。
さらに、同じ状況にいる人たちへの対処法について、水谷緑さんは「問題に気づかないことが多いですが、『自分には権利がある』と意識することが重要です。助けを求める発想につながります。若い人は、SNSで似た境遇の人や支援団体を見つけるとよいでしょう。支援したい人はたくさんいます」と助言してくれた。
ヤングケアラー自身が助けを求めることが大切ですが、それ以上に周りの大人が気づいてあげることも重要であると考えさせられる本作。ぜひ一度読んでみてほしい。
取材協力:水谷緑(@mizutanimidori)
配信: Walkerplus
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