「ファブリー病」を疑うべき初期症状はご存知ですか? 原因を併せて医師が解説

「ファブリー病」を疑うべき初期症状はご存知ですか? 原因を併せて医師が解説

ファブリー病の前兆や初期症状について

ファブリー病の初期症状としては強い四肢末端痛が特徴的で、幼児期や学童期から見られます。「燃えるように熱い」「耐えがたい」といった、苦痛が強い症状とされています。
その他、汗をかかない・かきにくいといった発汗障害、付随する体温上昇も早めに出現しますが、いずれも30歳以上に自然軽快する傾向があります。理由は不明です。
個人差はありますが、その後にタンパク尿や被角血管腫が見られ、20代以降になると角膜混濁、腎障害、脳血管障害、心肥大、難聴、下痢などの消化器症状、精神症状など多彩な症状を認めることがあります。

被角血管腫(Angiokeratoma)は血管の良性腫瘍で、表皮直下の血管拡張とそれを被う表皮の過角化を伴うものです。比較的よく見かける皮膚腫瘍であり、特に陰嚢に多発することが多いです。

ファブリー病で見られる主な症状には、臓器ごとに分類すると以下のようなものがあります。いずれもGL-3の蓄積が原因です。


脳血管障害(若年性脳梗塞、家族性脳梗塞の原因として重要)
皮膚
発汗障害、被角血管腫
神経
四肢疼痛、知覚障害

角膜混濁、白内障

突発性難聴
心臓
心肥大、不整脈
腎臓
タンパク尿、腎不全
消化器
下痢、便秘、嘔吐

ファブリー病の臨床病型

また、ファブリー病では病型に男女差があります。
男性では幼児期・学童期より症状を発症する古典型と、成人期以降に心肥大のみを呈するものから末期腎不全に進行する症例まで多彩な遅発型に分類されます。遅発型は、症状により腎亜型と心亜型に分れます。特徴的な四肢末端痛や発汗障害は認めません。
女性ヘテロ患者は男性に比べて発症年齢や症状の進行は遅い傾向にありますが、男性の遅発型と同様に症状はさまざまです。

ファブリー病が疑われる場合は、子どもは小児科、成人は内科のかかりつけ医を受診しましょう。多彩な症状を呈するため、複数の診療科と連携した治療が必要です。

ファブリー病の検査・診断

まず、ファブリー病が疑われる症状の有無を調べます。
四肢末端痛、発汗障害、皮膚の赤い発疹、心肥大、タンパク尿やマルベリー小体・細胞の検出、腎生検によるゼブラボディなどが認められると、ファブリー病の疑いは強くなります。
これらの症状が見られる場合に検査が行われますが、診断に至るまでは男女で異なります。

男性の場合、白血球GLA活性測定による酵素活性検査を行いGLAの活性がない、もしくは活性が低い場合にファブリー病と診断されます。
女性の場合は、GLA活性が低下していなくても、ファブリー病ではないと断定できないため、確定には遺伝子検査が必要です。家族歴があって病原性の変異が分かっている場合はターゲットを絞って解析しますが、分かっていない場合は全ての遺伝子を解析します。
蓄積しているGL-3の量、遺伝子変異の有無、症状を総合的に判断して確定診断となりますが、日本人のファブリー病家系の約5%でGLA遺伝子変異が特定できないとの報告もあります。

その他、尿沈渣、生検による病理診断、心臓エコーやMRIなどの画像診断などが行われることもあります。
尿沈渣はファブリー病に特異的なマルベリー小体やマルベリー細胞の検出が可能であり、スクリーニング検査としても利用されています。

遺伝子検査で考慮されること

ファブリー病はX連鎖遺伝形式の遺伝性疾患です。既に発症している患者さんに対してではなく家族の診断のために行う場合は、十分に考慮した上で遺伝カウンセリングを行う必要があります。

遺伝情報が生涯変化しない

未発症患者の診断や、出生前診断に利用できる

血縁関係にある親族の遺伝子型や表現型が比較的正確に予測できる

発症前に将来のリスクが予測できる

といった点は、遺伝子検査前に留意する事柄です。

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