腰椎圧迫骨折の治療
腰椎圧迫骨折の治療法は、骨折の重症度や患者の全体的な健康状態に基づいて選択されます。軽度の骨折では、保存的治療が中心となりますが、重度の場合や神経症状がある場合には、手術が検討されることがあります。
保存的治療
安静:
軽度の圧迫骨折の場合、まずは安静が重要です。骨が癒合するまでの間、無理な動作を避け、ベッド上での安静を保つことで、骨折の治癒を促します。
コルセットの使用:
腰部を固定し、骨折部位を安定させるために、コルセットやブレースが使用されます。これにより、痛みを軽減し、骨の治癒をサポートします。コルセットの装着は、数週間から数か月にわたり、医師の指導に従って行います。
鎮痛薬:
痛みを和らげるために、鎮痛薬が処方されることがあります。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンが一般的に使用されます。強い痛みがある場合には、オピオイドが一時的に処方されることもあります。
理学療法:
骨がある程度癒合した段階で、理学療法が開始されることがあります。理学療法では、腰や背中の筋肉を強化し、再発を防ぐためのエクササイズが行われます。これにより、背骨の安定性が向上し、日常生活に早く復帰できるようになります。
手術療法
経皮的椎体形成術(バルーンカイフォプラスティ:BKP):
この手術は、骨折した椎骨の中にバルーンを挿入して膨らませ、その後に骨セメントを注入することで、椎骨を安定させる方法です。この手術により、痛みの軽減と骨の再構築が期待されます。比較的低侵襲な手術で、早期に回復できることが特徴です。
脊椎固定術:
重度の圧迫骨折や、椎骨が大きく変形している場合、脊椎固定術が行われることがあります。この手術では、椎骨を金属製のネジやプレートで固定し、背骨の安定性を保ちます。この方法は、骨折による背骨の不安定性を根本的に解消するための治療です。
腰椎圧迫骨折になりやすい人・予防の方法
腰椎圧迫骨折になりやすい人
腰椎圧迫骨折は、特定の要因を持つ人々に発症しやすい傾向があります。
以下は、腰椎圧迫骨折のリスクが高い人々です。
骨粗しょう症の患者:
骨密度が低下しているため、軽い衝撃や日常的な動作でも骨折しやすくなります。
高齢者:
加齢による骨の弱化や筋力の低下により、転倒や事故のリスクが高く、圧迫骨折を起こしやすいです。
閉経後の女性:
エストロゲンの減少により骨密度が低下し、骨粗しょう症が進行しやすいため、腰椎圧迫骨折のリスクが高まります。
骨転移のあるがん患者:
骨に転移したがん細胞が骨を弱らせ、圧迫骨折を引き起こすことがあります。
予防の方法
腰椎圧迫骨折を予防するためには、以下のような生活習慣や対策が有効です。
骨密度を保つ:
骨粗しょう症を予防するために、カルシウムやビタミンDを十分に摂取することが重要です。また、骨を強化するために、適度な運動を行うことが推奨されます。特に、ウォーキングや筋力トレーニングは、骨密度の維持に役立ちます。
転倒防止:
高齢者や骨粗しょう症の患者は、転倒を防ぐための工夫が必要です。例えば、家の中の障害物を取り除いたり、滑りにくい靴を履いたりすることで、転倒のリスクを減らすことができます。
定期的な骨密度検査:
骨粗しょう症のリスクが高い人は、定期的に骨密度を測定し、骨の健康状態をチェックすることが重要です。早期に骨密度の低下を発見することで、予防的な治療を開始することができます。
適切な運動:
腰や背中の筋肉を強化するために、適度な運動を取り入れることが推奨されます。特に、体幹を鍛えるエクササイズは、背骨を支える筋肉を強化し、骨折を防ぐ効果があります。
腰椎圧迫骨折は、高齢者や骨粗しょう症の患者に多く見られる疾患ですが、適切な予防と早期の治療によって、合併症を防ぎ、快適な生活を維持することが可能です。
参考文献
骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折 日本骨折治療学会
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン
UpToDate 骨粗鬆症性胸腰椎圧迫骨折:臨床症状と治療
配信: Medical DOC
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