商品をつくり届けるだけでなく、共生社会をつくる一歩にしたい
現在は「cocoe」の育児ノート以外にも、「福祉用品にも選ぶ楽しさを。」をコンセプトにしたサブブランド「cocoe Lite(ココエライト)」を展開するなど、引き続きさまざまな取り組みに挑戦している山崎さん。今後の展望についてもお話を聞きました。
「今いちばん反響をいただいているのが、cocoe Liteで開発した車いすマークホルダーです。一見車いすとわかりにくい車いすバギーなどにつけていただくマークなのですが、実際に使っていただいた方からは『外出するのがすごく楽しみになった』『まわりの視線を気にしなくてよくなった』という声や、『人の優しさを改めて感じた』なんてうれしい言葉をいただいています。
cocoeやcocoe Liteというブランドを通じて、医療的ケア児やそのご家族に寄り添った商品を提供していくことはこれからも変わりません。ただ私たちは商品づくりが目的なのではなく、その先の“共生社会をつくる”ための一歩にしたいという強い思いがあります。障害があるからといって特別扱いしてほしいわけではなく、少しだけ見た目やできることが違うだけだということを、もっと多くの人に知ってもらえたら。
世の中により理解が広がれば、障害を持っていたり医療的ケアが必要な方やそのご家族も外に出るのがもっと楽しくなりますし、暮らしの幅も広がるはず。そのきっかけがcocoeの商品であったらいいなと思います。
今後の展開としては、“雇用”の問題にも向き合っていきたいですね。医療的ケア児を育てる親は24時間つきっきり生活だったり交代制だったりして、働く時間も場所も限られています。そんな中でも、やはり働くことで社会とのつながりを持ちたいという方もたくさんいらっしゃるので、そういった課題を解決する一助としてママたちが働ける場をつくっていきたいなと。
実は今年の10月から、cocoeでは医療的ケア児を育てるママがスタッフとして商品開発のお手伝いをしてくれています。それを1つのモデルケースとして、将来的には全国でそういった展開をしていけたらと思っています。
商品開発の部分では、これまでは当事者側からサインを出す商品がメインでしたが、当時者側からだけではなくまわりのお店や企業が『車いすでも入店できますよ』というようなサインを出せるような商品づくりを考えています。
たとえば、お店や施設の入り口にウエルカムサインのようなステッカーが貼られていたら、私たちはもっと安心して街に出かけることができるし、すごくうれしい。共生社会の実現にはお互いに理解し歩み寄る気持ちが大事だと思うので、そういった架け橋となるような商品開発を行っていきたいです」(山崎さん)
生翔くんは現在小学4年生。少しずつ成長を感じる日々
現在、小学4年生になった生翔くん。肢体不自由の子どもが通う特別支援学校へ通っています。最近では意思表示が増えコミュニケーションも変化してきたと山崎さんは言います。
「できることは少しずつ増えていっています。意思疎通がむずかしい中でも、『ああ、通じているな』と実感することが増えてきました。こういうときはこうする、という状況把握も少しずつできるようになってきて。たとえば学校へはいつも福祉タクシーで行っているんですが、福祉タクシーに乗り込む前に必ず私に手を上げてくれるんですよ。行ってきます!みたいな。そんな様子を見るととても成長を感じます。
特別支援学校でもいろいろな経験を積んでいますが、学校でも家でもいちばん好きなのは音楽です。私がよくピアノを弾くこともあり、赤ちゃんのころから毎日のように音楽に触れていたのが影響しているのかもしれません。中でも生翔は鍵盤楽器や打楽器が好きで、楽しい!とかおもしろい!という気持ちを全身を使って表現してくれます」(山崎さん)
配信: たまひよONLINE