菊のまち・二本松を歩く/内田晃「ゆるゆる『歩き旅』のススメ!」

 福島県二本松市で開催される日本最大級の菊の祭典「二本松の菊人形」(今季は11月20日まで)を見物しに来た。今年68回目。会場の霞ヶ城公園は二本松城跡なので、城歩きも楽しもうというしだいだ。

 JR東北本線二本松駅から大手門跡( 通称・坂下門)が残る久保丁坂の上り坂を超えると、ほどなく霞ヶ城公園に着く。駅からは徒歩20分ほどだ。そそり立つ石垣と櫓がにらみを利かせる箕輪門をくぐった先の三の丸広場がイベント会場になっていた。

 会場内は福島県と二本松市の菊花愛好者が出品するそれぞれの品評大会と菊人形ゾーンに分かれる。菊人形は菊の花や葉を飾りつけ人形の衣装とする細工物で、今年は「紫式部」をテーマにしていた。

 スタッフに見どころを聞くと、展示場まで案内してくれたのが千輪咲だ。半球状の姿で黄色の花々が整然と隙間なく並んでいる。複数の菊を使った作品と思いきや、根本を見るとなんと! 茎は1本しかない。

「菊職人が意図的に枝分かれさせ、花芽を増やした生花です。一般的に1本の茎から500以上の花をつけた大多輪を千輪咲と呼んでいます。2年掛かりで栽培する大作ですよ」

 スタッフの話を聞くと菊職人の思いも重なり、より美しく見えた。会場を出て、本丸跡を目指す。二本松城は諸説あるが、室町期に畠山満泰が築城したと伝わり、伊達政宗、蒲生氏郷、上杉景勝などの支配を経て、1643年から明治期まで丹羽氏が城主となった。

 本丸は白旗ケ峯(標高345メートル)の頂上部にあり、三の丸からは軽い山登りになる。霞ヶ池を望む江戸期の洗心亭(茶屋)、東西約14メートルに広がり樹齢350年を超す傘松、城の防備のために安達太良山麓から尾根伝いに18キロも引いた二合田用水などを見て、搦手門跡からひと上りすると、本丸の石垣が現れる。

 この石垣は1993年8月から学術調査と合わせ、全面修築・復元したもので、95年6月に完成した。自然石と荒割石を巧みに組み合わせた野面積みなどの様子がよくわかる。

 石垣を上がると本丸を囲んで北側に天守台、東側と西側に櫓台が築かれていた。ただ天守は建築されなかったそうだ。天守台に上ると安達太良山や市街地など360度の大パノラマが目を楽しませてくれた。

 三の丸広場まで下ったら、丹羽家菩提寺にして、二本松少年隊をはじめ戊辰戦争殉難者を弔う大隣寺を訪ねて、静かに手を合わせた。

内田晃(うちだ・あきら):自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。街道、古道、巡礼道、路地裏など〝歩き取材〟を得意とする。

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