根強く残る和式…小学校のトイレ事情は?

第3回 小学生が真剣に困る 学校でトイレに行けない!
小学校のトイレといえば、和式だったり、ニオイがきつかったりと、子どもが入りづらい印象が強い。小学校のトイレ事情は、今どうなっているの? 学校のトイレの研究会主任研究員の井尾加奈子さんに聞いた。

「小中学校の教職員にアンケートすると、エアコンなどの機器を増やすことよりも、まずは壊れたトイレの修繕や、子どもが苦手な和式を洋式に改修が必要という回答が圧倒的に多いようです。子どもたちが学校で排便することに苦手意識を強く持っていると健康を阻害する可能性が高いため、特に養護教諭の先生から多くの声が挙がっています」(井尾さん 以下同)

文部科学省発表の調査によると、公立小中学校にある約140万個のトイレのうち、洋便器は約61万個(43.3%)、和便器数は約79万個(56.7%) 。建物自体が経年25年以上の要改修の状況にある学校施設は全体の約7割を占める 。ところが予算を確保することが難しいことなどから、老朽化した学校の修繕やトイレの改修はなかなか進まない状況だ。

井尾さんは、子どもたちは声を挙げることができないので、PTAや地域の大人たちが伝えていくことが重要ではないかと話す。

「衛生的でリラックスできる家のトイレに対して、学校のトイレのイメージは5K(臭い・汚い・怖い・暗い・壊れている)といわれ、ネガティブなイメージが強い。自宅のトイレはほぼ洋式便器が普及している状況です。家とのギャップがあると、感受性の強い子どもたちは学校のトイレを避けてしまう。また不衛生で暗いイメージのトイレは苦手意識を感じさせるだけでなく、いじめやからかいなどの子どもたちの負のコミュニケーションを生み出しやすいともいえます」

トイレが快適で明るい場所になると、プライベートな空間であることもあり、子ども同士や教師と児童の関係を深めるコミュニケーションの場として機能するとか。水が関わる場所のため、節水などのエコや環境、社会について意識をはせる教材にもなり得る。

現在、トイレ改修を終えた小学校のなかには、子どもが好むデザインや明るい配色の内装、待ち時間に使うベンチを設置するなどの工夫がされていて、トイレの快適さについて重要視されている。

「学校施設は、地域の住民のコミュニティの場でもあります。さらに災害時には避難所にもなります。このとき、和式便器しかない状態だと、ひざや腰を痛めている高齢者には負担が大きくなります。それらの点もふまえて、小学校のトイレは改修を進める必要があると思います」

手を洗っているイラスト

●衛生面への配慮から行われている改修の傾向は

洋式化を望む声が多いものの、少数ではあるが直接肌に触れたくないから和式便器を希望する意見もあり改修する際に和式便器を残すことが今もあるのだとか。しかし井尾さんによれば、衛生面から見ても和式よりも洋式の方が望ましいのだとか。

「和式便器は用を足す際しゃがみます。用を足す際に実は自分やまわりに思った以上に飛散しています。失敗して便器の周りを汚す可能性も高いです。また、トイレの掃除方法は水をまく湿式清掃から、モップ、ほうき、水拭きなどの乾式清掃が主流になってきています。濡れた場所の菌は大変多いことがわかっており、和式から洋式への改修する際、乾式のシートタイプの床にする動きがあります」

洋式化を進めるには、ママからも具体的な希望を発信することが大切。PTAなどを利用して働きかけをしてみよう!
(石水典子+ノオト)

お話をお聞きした人

学校のトイレ研究会
学校のよりよいトイレ環境を目指して、トイレ関連企業が集まり1996年に発足。学校のトイレの現場に足を運んでの取材、ユニバーサルデザインの推奨、衛生性への取り組みを行う。
学校のよりよいトイレ環境を目指して、トイレ関連企業が集まり1996年に発足。学校のトイレの現場に足を運んでの取材、ユニバーサルデザインの推奨、衛生性への取り組みを行う。