●スルースキルが乏しいとアザコンになりやすい
スルースキルが乏しく、人の評価が気になり過ぎると、“いい子シンドローム”な状態を引き起こす可能性があるという。
「自分の意志よりも周りからどう見られるかが優先されてしまうと、子どもは自分の気持ちを表現したり感じたりすることが苦手になります。そうなると、本当の自分の気持ちがどうかもわからなくなり、親など周りの意志に沿った“いい子”を演じるようになってしまいます。そして、どうしても“いい子”が演じきれなくなったとき、問題行動を起こしてしまうのです。事件を起こした子どもの近所の方にインタビューを行うと“あの子は勉強もできていい子だったのに”というケースが多いのはそのためです」(大坪氏 以下同)
ストレス耐性やスルースキルは、ある感情と深く関わっているそう。
「人生の問題やストレスに対して“私はできる!”という積極的な態度を持ち、自分には生きる価値があり、役に立つ人間であり、自分のことが好きだ!と思うことができる…このような感情を心理学では、“自尊感情”と言います。高い自尊感情は、子どもたちを 、強く優しく…責任感と思いやりあふれるバランスが取れた大人へと成長させてくれます。この自尊感情を育むことで、スルースキルだけでなく、ストレス耐性も身に着き、社会の荒波を乗り越えていく“生きる力”を伸ばすことができるのです」

●自尊感情を伸ばして前向きな子どもに!
それではどのようにすれば、子どもの自尊感情を引き出すことができるのだろうか。
【自尊感情を伸ばす5つの法則】
1.子どもたちの考えていることや感じていることに耳を傾け、認める努力をする
「じっくり時間をかけて話を聞いてあげると、子どもたちは受け入れてもらって、大切にされていることを感じます」
2.子どもたちが失敗ではなく、成功を味わえるような状況を作る
「親は失敗したことは責めず、成功したことに目を向けましょう」
3.「自分の人生を自分で選択している」という感覚を子どもたちに持たせる
「過度に保護しすぎることは、子どもに“お前は未熟だ”と伝えることになってしまいます」
4.「自分が愛されていて、能力があるのだ」ということを子どもに教える
「一般的な方法として、子どもたちの行いを誉めたり、彼らを抱きしめたり、子どもたちに直接“愛しているよ”と言うことなどが挙げられます。このようなことは、いくらしてもしすぎることはありません」
5.周りの大人の肯定的な姿を子どもたちに示す
「子どもは親をモデルとして、どのような反応をするのかを学びます。子どもたちに健康で積極的な自尊感情のモデルを見せてあげることは、子どもたちの健全な自尊感情を育てるのに極めて重大なことなのです。まずは親御さんがお手本を見せましょう」
「親が子の自尊感情を育ててあげることは、わが子が生涯幸せでいるためにとても重要なポイントとなります。子どもへの最高のプレゼントと言えるでしょう。親はいつでも、無条件の愛を与え、子どもを尊重して育てる。子どものなかに必要な力があると信じ、一緒に喜び、一緒に感動し、暖かく見守る。子どものあるがままを認め、決して他人と比較しない。日々この徳育(道徳的な教え)だけ忘れなければ、お子様の心はドンドン前向きに輝き始めます。自尊感情と社会を生き抜くために必要なスルースキルは、比例する傾向にあるといえます」
最後に「二度とないこの人生において、あなたが影響を与え、生きることができるのは、“今、この瞬間”だけなのです。戻らない過去をいつまでも悔やまず、ネガティブな気持ちは反省に変え、スルーしましょう」とアドバイスを贈る大坪氏。例え不器用な親子でも、この心構えだけしっかり頭に入れておけば、徐々にストレス耐性が身に着き、スルースキルが磨かれていくのかもしれない。
(取材・文/蓮池由美子)
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