染色体は女の子、でも男の子として生まれる!? 性分化疾患は、思春期ごろにわかることも。体の変化について親子で話せる環境を作って【専門医】

染色体は女の子、でも男の子として生まれる!? 性分化疾患は、思春期ごろにわかることも。体の変化について親子で話せる環境を作って【専門医】

性染色体が「XX」なら女の子、「XY」なら男の子。学校で習った記憶がある人もいるでしょう。でも、性染色体だけで判断できない疾患があります。性分化疾患(以下、DSD)です。具体的な症例を踏まえて、この病気への理解を深めましょう。
慶應義塾大学病院の性分化患(DSD)センターで、赤ちゃんから成人までの患者さんの診察・治療、サポートを行っている石井智弘先生と浅沼宏先生に解説してもらいました。全3回のインタビューの3回目です。

DSDを速やかに診断・治療するには、各科専門医によるチーム医療が不可欠

――慶應義塾大学病院では、1990年代から小児科、泌尿器科、腎臓内分泌代謝内科、小児外科、産婦人科、形成外科、精神神経科など、各科の専門医が連携してチーム医療を行ってきたとのこと。DSDの治療が積極的に行われるようになったのは、そのころからですか。

石井先生(以下敬称略) DSDの治療はもっと前から行われていましたが、小児科や内科はホルモン療法を行い、外科や泌尿器科は内性器や外性器の形成術を行うといったように、それぞれの科で個別に治療が行われていたんです。

浅沼先生(以下敬称略) DSDは各科が連携して治療を行うことが必須となります。そのため慶應義塾大学病院では、1990年代からチーム医療を行うようになりました。そして2019年に、DSDの治療に特化した性分化疾患(DSD)センターが設立されました。

「XX染色体」でも男の子のことが・・・。性染色体だけでは性別は決まらない!?

――慶應義塾大学病院の性分化疾患(DSD)センターを受診し、治療を行った子どもの症例を教えてください。

石井 出生前の胎児エコー検査などでは女の子と言われていたけれど、生まれたら性器は男性型で、男の子として戸籍を提出したケースについてお話しします。個人情報保護の観点から、実際の例をもとにアレンジした模擬症例です。

この赤ちゃんのママは出生前に羊水(ようすい)検査していて、その検査では胎児は46,XX(女性)でした。そのため、ママ・パパは女の子と思って誕生を待っていました。ところが、生まれてきたら外性器は男性型で、「SRY遺伝子」を持った「46,XX精巣性性分化疾患」と診断されました。
妊婦健診の胎児エコー検査は、胎児の向きによって外性器が見えにくいので、このようなことも起こりえます。

SRY遺伝子とは、ヒトの性別を決定する遺伝子です。SRY遺伝子が働くと性腺が精巣に、働かないと卵巣になります。染色体が46,XXであっても、SRY遺伝子の乗ったX染色体を持っていると、性腺は卵巣ではなく精巣になり、男性ホルモンが出て、外性器は男性型になります。そのため男の子として育てられます。

症例の赤ちゃんは、DSDとはまったく別の理由で、出生前に羊水検査で染色体検査を行っていました。その結果、染色体は46,XXであることがわかり、両親は女の子が生まれると思っていたんです。ところが出生後に「46,XX精巣性性分化疾患」と診断され、とてもびっくりしたようです。
この赤ちゃんは男性ホルモンの作用がしっかりしていて、外性器はほかの男の子と同等。手術も必要としない男性型でした。男性ホルモンを出す力も正常で、男の子としての第二次性徴は自然に来ると予測できました。

これらの情報を両親と共有し、男性として戸籍を登録することにしました。「XX染色体をもっていると女の子」という分類に当てはまらない例です。その後も、男の子として問題なく成長しています。

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