歌手の相川七瀬さんは23歳、17歳、12歳のママです。2025年11月にはデビュー30周年を迎える歌手活動を積極的に行いながら、現在は神道文化学部に通う大学院生でもあります。神道を学ぶきっかけとなったのは、2011年に出会った赤米の神事(あかごめのしんじ)だそう。3足のわらじをはく相川さんに現在の心境を聞きました。
全2回インタビューの前編です。
大学の卒業式では卒業生総代に選出される
――1990年にデビューし、26歳で第1子を出産。20代後半から30代は子育てが忙しい時期だったと思います。当時を振り返って今、どんなことを感じますか?
相川さん(以下敬称略) 26歳のときに長男を出産しました。当時はまだ女性が仕事をしながら子どもを育てる業界ではなかったですし、時代も今とはずいぶん違いました。“ママタレ”なんて言葉もありませんでした。ですから、出産後は社会との距離を感じ、そこからは仕事をバリバリこなす、という感じではなくどちらかというと子育てをしながら自分を見つめる時間に費やしていました。二男が誕生し、落ち着いたタイミングでまたテレビの仕事が少しずつ増えていきました。ですから、子育てと仕事の両立を本格的にするようになったのは30代後半になってからです。
――2018年に2年の猛勉強の末に高卒認定試験に合格。2020年に國學院大學神道文化学部に入学しました。学ぼうと思ったきっかけを聞かせてください。
相川 20代後半から30代は自分と自分の家族に費やせたので、40代に入ってからは自分の人生を見つめ直そうと思うようになりました。まだ下の子たちは小さかったのですが、子どもはいつか巣立っていくということを強く意識するようにもなりました。そして、自分自身の50代、その先についても考えるようになりました。高校を中退してその後、芸能活動を始めたんですが、子どもたちの成長と共に私自身も学びたいと思うようになりました。そこから学びに対する自分の気持ちに向き合うようになり、人生プランを考えたんです。
――忙しい中、毎日どのように勉強に取り組みましたか?
相川 わが家は長男、二男、長女が6学年ずつ離れています。6つずつ離れていると受験の時期が一緒です。そこで、長女が小学校受験のときに全員で勉強しようということになり、私も高卒認定試験を受けようと決意しました。家庭の中でみんなが机に向かう時期だったので私も勉強しやすかったです。
長女を妊娠中、大きなおなかで田植えに参加したことも
――学び直しを決めたきっかけとなったのは”赤米の神事”とのことですが、どんなふうにして赤米にかかわるようになったのでしょうか。
相川 2011年に日韓親善コンサートに出演するために長崎県の対馬に行った際、赤いお米を奉納するお祭りがあると聞き、興味を抱きました。その田んぼを見たら、赤く広がっている稲が風に揺られる様子がとっても神秘的だったこともひかれた理由です。
赤米は日本文化の源流ともいえる稲作のルーツだということ、現在対馬の継承者は1人しかいないとのことを聞いて何かお手伝いできることはないかな、と考えるようになりました。
もともと神社の祭祀(さいし)に興味があったので、まずはお祭りを見に行かせてもらいました。そして、田植えの時期になると見学をさせてもらうようにもなりました。少しずつ、少しずつその町の方々と距離が近くなっていきました。
――2012年には対馬市の赤米諮問大使に就任し、赤米の神事が残る岡山県総社市と鹿児島県南種子町にも足を運び、現在はこの3カ所の親善大使を務めているとか。
相川 各地と連絡を取り合っているうちに「3市町で赤米文化を一緒に未来へ残していきましょう」という話になりました。早いもので活動は今年で13年目になります。最初は小さい課題から向き合っていき、そのうちに大きな目標が生まれ、現在も活動を進めています。
――そこから現在の学びへつながっていったわけですね。
相川 赤米文化を未来の世代へ継承することを目的に掲げていく中で私個人ももっと学びたいという思いが生まれ、國學院大學神道文化学部の受験を決意しました。現在は同大学の大学院で学んでいます。
――相川さんの本気度に地元の方々も驚いているかもしれませんね。
相川 最初は「芸能人が来たぞ」、「興味があるっていうけれど本当なのかな?」という感覚だったと思います。それでも私が何度も訪れ、2012年の総社市での田植えでは長女を妊娠中ではありましたが、皆さんと一緒に田んぼに入って田植えをしたんです。その姿を見て、地元の方々も「本気なんだ」と私のことを信じようと思ったと言ってくれています。
娘が生まれてからも、3市町のお祭りに上の子どもたちも連れて、参加させてもらいました。皆さん、あたたかく迎えてくれて本当にうれしかったです。そして、今では氏子の方々は大学で学んでいる私のことを研究者として見てくれて、今では大事なデータを預けてくれています。私ができることをこれからも続けていきたいと思っています。
配信: たまひよONLINE