風邪などの予防のために秋や冬になると加湿器を使用する人も多いと思います。しかし実際、加湿器が原因となって肺炎になることがあるのをご存知ですか? 一体なぜ、加湿器が肺炎の原因になるのか、どう気をつけたら良いのかなど、かつぬま内科クリニックの勝沼先生にメディカルドック編集部が聞きました。
監修医師:
勝沼 伸英(かつぬま内科クリニック)
1997年帝京大学医学部卒業、日本大学医学部附属板橋病院第2内科(現・内科学分野循環器内科系)。2004年日本大学医学部大学院医学研究科博士課程修了。2005年春日部市立病院(現・春日部市立医療センター)呼吸器内科、2008年千歳台はなクリニック副院長などを経て現職。医学博士、日本医師会認定産業医。
加湿器が原因で肺炎になるのはなぜ?
編集部
加湿器が原因で肺炎になることがあると聞きました。本当ですか?
勝沼先生
はい、本当です。加湿器が原因で肺炎になることを「加湿器肺炎」と呼んでいます。医学的には「過敏性肺炎」と呼ばれています。
編集部
加湿器肺炎とはどのようなものですか?
勝沼先生
そもそもの加湿器とは、機器から水分を放出し、部屋の湿度を一定に保つための電化製品です。加湿器肺炎とは、この機器のなかでカビや菌が発生し、それらが空気中に放出されることで発症した肺炎のことをいいます。
編集部
以前、テレビのニュースでも放送されていました。
勝沼先生
特にニュースになっているのは、レジオネラ属菌の感染「レジオネラ症」です。レジオネラ属菌とは、水道水や空調設備などに生息する細菌で、感染すると高熱が出たり、呼吸困難に陥ったりすることがあります。レジオネラ症は免疫力の低い高齢者や新生児などが感染しやすく、加湿器を原因としたレジオネラ肺炎による死亡例も報告されています。
編集部
加湿器肺炎の症状はどのようなものですか?
勝沼先生
「薬を飲んでも咳が治らない」「家に帰ると咳が出る」といった症状が一般的です。怖いのは、加湿器肺炎は通常の肺炎と違って過敏性肺炎に分類され、吸い込んだカビや菌が肺でアレルギー反応を起こすことが原因であるため、抗生物質が効かないということ。通常の肺炎であれば抗生物質で治療できますが、加湿器肺炎にはそのような薬剤は効果がありません。そのため症状が長引くことが多いのです。
加湿器肺炎が疑われるときには? どのような検査を行うのか?
編集部
加湿器肺炎が疑われるときには、どのような検査をするのですか?
勝沼先生
まずはCT検査をして肺の状態を観察します。そのほかに内視鏡を使って肺の組織や細胞を採取し、詳しく調べることもあります。また、血液検査を行って白血球を調べることもあります。問診も重要で、「加湿器を使うと咳が出る」「外出先では咳が出ない」といった情報も診断に役立ちます。
編集部
通常の肺炎との鑑別が必要なのですね。
勝沼先生
はい。加湿器肺炎が疑われる場合には、実際に数日間入院してもらうこともあります。入院することで加湿器から隔離され、症状が出ないようであれば、加湿器肺炎であったことがわかります。
編集部
加湿器肺炎はどのようにして治療するのですか?
勝沼先生
軽症であれば、加湿器の使用を中止することで症状の改善が期待できます。重症の場合にはステロイドなどを使用し、炎症を抑えてアレルギー反応を抑制することもあります。
配信: Medical DOC