そもそも運動神経の良しあしは、親からどのくらい遺伝するのか? そこでパーソナルトレーナーとして活動するかたわら、子どもの運動神経を伸ばすためのトレーニングを開催する、日野原大輔さんにお話しを伺うことに。
●遺伝が関連しているのは、運動パフォーマンスの約3割
「それぞれの親の遺伝子が子どもに受け継がれていきますが、運動神経に関しては約3割が遺伝によるものだといわれます。残りの7割は環境要因によっていくらでも変わるので、いい遺伝子を受け継いでいても運動が得意になるとは限らないのです」(日野原さん 以下同)
つまり、運動能力は遺伝によって左右されるのは事実だが、それがすべてではないということ。また日野原さんは「運動神経が悪いからこそ、結果的に一流のスポーツ選手になれることもある」と話す。
「運動神経がいい人は見よう見まねである程度できてしまうので、少しできるようになったらすぐに飽きてしまうこともよくあります。一方、運動神経の悪い子はなかなかモノにできない分、地道な練習にコツコツ取り組む傾向があります。スポーツの練習は地道な単純作業が多く、運動神経が悪い子のほうが長続きするケースもあるんです」

●乳児の発達の速度と運動神経はまったく無関係
運動神経と遺伝の関係について理解したところで、乳児のママが今からできることは何かあるのだろうか? この時期といえば、寝返りやずりばい、ハイハイ、おすわりなど、徐々にできることが増えていく頃。できることが早いと「うちの子、運動神経がいいのでは?」と思うママもいるかもしれないが…。
「発達の速度と運動神経は、関係がありません。むしろハイハイ時期があまりなく、すぐタッチしてしまうのは運動神経の発達的にはマイナス。実は、ハイハイの状態は長ければ長いほうがいいんです。その理由は、手と足を地面につけてよつんばいになる動きは、体幹を鍛えるのに重要なトレーニングになるからです」
日野原さんによると、最近の赤ちゃんはハイハイ期間が短い傾向にあるという。 すでにハイハイを卒業した乳児の場合は、日常的にハイハイをうながす遊びを取り入れるといいそうだ。
「例えば、ママも一緒にハイハイをして遊んでみるといいと思います。そうなると、いかにハイハイの動きが全身の体幹を使ってキツイかわかるはず(笑)。あとはハイハイだけではなく、ズリバイや寝転がるような、動物的な動きも長く続けたほうがいいですよ。お母さんは月齢によってできることに過敏になりがちですが、本当に大切なのは『できる・できない』ではなく、『体の機能が形成されているか・されていないか』です」
●体をさすってあげるだけで運動神経の発達につながる
また日野原さんは、乳児のときは「体全体をさすってあげるだけでも、運動神経の発達に効果があります」とアドバイスをする。
「体をさすると、筋肉や組織を包み込んでいる“筋膜”と呼ばれる部分がほぐれる効果があります。あまり強くさすらず、やさしいタッチで十分。この時期の赤ちゃんは日常的に運動しているようなものなので、日常的に体全体をさすってほぐしてあげると効果的です」
やがて運動神経が良い子どもに育つため、乳児からできることはたくさんある。まずはママが月齢によってできることに過敏にならず、ゆっくりと成長を見守ってあげることが大切だ。
(取材・文:高山惠 編集:ノオト)
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