実は、幼稚園や保育園に通っている時期にあてはまる3歳から8歳は、スポーツ界では「プレゴールデンエイジ」と呼ばれる。さらにその上の9歳から12歳ごろまでは「ゴールデンエイジ」と呼ばれ、成長期に入り運動能力が大きく伸びる重要な時期。その前段階として、幼児期は一体どのように過ごせば、運動神経の発達につながるのだろうか?
●運動能力アップの鍵を握るのは、手と口!
「この時期は運動神経の基礎となる、神経の伝達が一番大きく発展する時期。ひとつのスポーツに特化するのは、まだまだ時期尚早です。例えばこの時期からサッカーしかやらなかったら、サッカーで使う神経しか発達しません。そうではなく、いろいろな運動をすることでさまざまな神経が発達し、それが運動神経の向上につながります」
こうアドバイスをするのは、子どもの運動神経を伸ばすためのトレーニングを開催する、パーソナルトレーナーの日野原大輔さん。その具体的な方法としてまず、神経伝達を良くする方法として「手と口を使う運動」を推奨する。
「これはスポーツクラブの『ルネサンス』が考案した脳に刺激を与えて活性化させる“シナプソロジー”とプログラムに基づいた考え方です。手と口を使う運動は脳への刺激に対応する領域がとても大きいといわれています」(日野原さん 以下同)
では、具体的にどんな運動がいいの?
「手を使う運動は、ボール投げや鉄棒、うんていといった昔ながらの遊びが大切です。最近は危険防止の観点から公園でもどんどん遊具が撤去される傾向にありますが、それは同時に幼児期に思い切り手を使う運動ができる機会を大人が奪っていることでもあるのです。遊びだけではなく、ぞうきんがけのような昔からある生活習慣も、この時期からどんどんやったほうがいい。ぞうきんをしぼる動きは、まさに手を使う運動に最適です」
また手を使う運動と同じくらい重要だという口を使う運動は、どうしたらいいのだろうか? 日野原さんは親子による会話のコミュニケーションが、運動発達につながると語る。
「じゃんけんをするときに『グー』『チョキ』と、出すものを口にするだけでも効果がありますよ。さらに後出しで勝つものを出したり、負けるものを出すといったように、ルールをつくって口に出すともっと効果的。これ、大人がやっても結構難しくて混乱します。あとは『赤いものは何かな?』『トマト!』というやり取りなどもいいですね」

●幼児の壁「逆上がり」は、親の体を使って練習をすると効果的!
まだひとつのスポーツに決めてスキルを磨く時期ではない幼児期。ただ「逆上がり」や「うんてい」「二重飛び」といった手を使う遊びでも“できる”“できない”がはっきり出てしまう時期でもある。特に逆上がりは、幼児期にとって大きな壁とりやすい。
「逆上がりができない子は、パパやママの体でよじ登らせて、を支えて回してあげるといいと思います。逆上がりができるためのステップ台もよくありますが、それをパパやママの体でやってあげる。逆上がりができない子は体を回すことに目が慣れていないケースも多いので、そこを親がフォローしてあげましょう。鉄棒は神経の発達だけではなく、体幹の運動にもとても効果があります」
本格的な成長期となるゴールデンエイジを目前に控えたこの時期。親はつい焦ってしまいがちだが、まだ運動神経の発達のための土台づくりの最中だ。できることやできないことに目を向けるより、まずは昔ながらの遊びや親子のコミュニケーションで神経発達を促したい。
(取材:文:高山惠 編集:ノオト)
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