胃腸炎の家庭内感染を防ぐためのポイントは?

第3回 子どもが「胃腸炎」に!ケアはどうする?
子どもたちの間で、流行しやすい病気のひとつが「胃腸炎」だ。この病気の恐ろしさは、感染力の高さ。親子間、きょうだい間など、家族にひとり感染者が出ると、次々に伝染して一家総倒れになってしまうケースも少なくない。

わが子と家族を感染から守るために、何か打てる手はあるのだろうか? とくに子どもが冬場に感染しやすいウイルス性胃腸炎の予防策について、亀戸内科クリニック院長の荒木正先生に話を聞いた。

●胃腸炎の感染拡大を防ぐためにできること

「子どもの場合、まずは予防接種です。ロタウイルスに関しては国内でも任意で予防接種ができます。免疫力が高くない乳幼児は重症化しやすいため、事前に接種しておくことをおすすめします。日頃から流水・石鹸による手洗いの習慣をつけること重要。これは大人も同様です」(荒木先生 以下同)

では、もしも家族に感染者が出てしまったら? 最優先で取り扱いに気をつけてほしいのは「衣類」だと荒木先生は説明する。

「嘔吐物や下痢便などで汚れた衣類は、大きな感染源になりえます。そのまま洗濯機でほかの衣類と一緒に洗ってしまうと、洗濯槽内にノロウイルスが付着するだけではなく、他の衣類にもウイルスが付着する可能性もあるのです」

家族全員の衣類にウイルスが付着したことで、一家全員が感染してしまう場合もある。さらに、潜伏期間のうちに各自の保育園や学校、職場で感染が拡大したら…想像するだけでゾッとしてしまう。では汚れた衣類は具体的にどう取り扱えばいいのだろう?

「嘔吐物や下痢便で汚れた衣類は、マスクと手袋をしたのちにバケツなどでまず水洗いします。次に塩素系消毒剤(200 ppm以上)で消毒することをおすすめします。いきなり洗濯機で洗うと、洗濯機がノロウイルスで汚染され、ほかの衣類にもウイルスが付着する可能性があります」

家族間の場合、看病の際に手指についたウイルスから、経口感染するケースがよく見られるという。汚れた衣類の洗濯、嘔吐物の処理、トイレの清掃などは、使い捨てのビニール手袋を用いて行おう。

体調を崩した子ども

●アルコールやせっけんではウイルスの消毒はできない!

消毒に使う「塩素系消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)」とは、いわゆるキッチンハイターやブリーチなどの商品名で売られている家庭用の塩素系漂白剤のこと。200ppmとは0.02%濃度を意味する。消毒用アルコールやせっけんでは落とせないノロウイルスでも死滅させることができる。

「塩素系消毒剤には、濃度が200 ppmでは5分間、1000 ppmでは1分間ほど浸すことによって、ノロウイルスをほぼ死滅させる消毒効果があるといわれています。小さなお子さんがいる自宅では常備しておきましょう」

嘔吐や下痢などの症状が収まっても油断は禁物だ。成人の場合は感染しているにもかかわらず発症しないケースもある(不顕性感染)ため、家族に感染者が出た場合は十分に注意しよう。

「排菌(ウイルスや菌が体の外に出ること)は1~4週間に渡るとされております。症状が改善した後も、規則正しい生活を送り、普段から免疫能を落とさないような日々を送っていただければと思います」

正しい知識が身についていれば、胃腸炎の感染拡大は確実に防ぐことができる。看病する側の親が慌ててパニックになると、子どもも不安を感じてしまう。わが子が感染しても冷静に対応できるよう、注意点をしっかりおさらいしておこう。
(取材・文:阿部花恵 編集:ノオト)

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お話をお聞きした人

荒木正
荒木正
亀戸内科クリニック
亀戸内科クリニック院長。大学卒業後、循環器内科を専門とし大学関連病院などで研鑽を積む。2016年、亀戸駅そばに「亀戸内科クリニック」を開業。風邪、軽い怪我などでも何でも相談できる“地域のかかりつけ医“を目指す。
亀戸内科クリニック院長。大学卒業後、循環器内科を専門とし大学関連病院などで研鑽を積む。2016年、亀戸駅そばに「亀戸内科クリニック」を開業。風邪、軽い怪我などでも何でも相談できる“地域のかかりつけ医“を目指す。

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