2020年、シングルマザーとして長女を出産した俳優の千葉ミハルさん。現在は長野県のシェアハウスで暮らしながら子育てをしているそうです。千葉さんは、2024年公開のドキュメンタリー映画「取り残された人々~日本におけるシングルマザーの苦境~」の中で「シングルマザーを支えてくれる人は必ずいるし、必ず希望はある」と力強く語っています。全2回のインタビューの後編です。
両親と同居して育児をするも、距離が近すぎてけんかをしてしまうことも
――千葉さんは2020年、妊娠を機に東京から実家のある長野県に住まいを移し出産されたそうです。実家での育児はいかがでしたか?
千葉さん(以下敬称略) 両親はとてもこまやかにサポートしてくれました。両親がいなかったら私は1人で出産し、育児をするのは難しかったと思います。本当に感謝しています。
私は出産のときに出血が多く、産後もかなり体調が悪かったんです。初めての出産で精神的にも不安定になり、すごく後ろ向きになっていました。いわゆる産後の「ガルガル期」だったのかもしれません。母からのアドバイスを「私がちゃんと育児できていないと責めているのかもしれない」とネガティブに受け取ったり、ちょっとした言葉の行き違いでけんかになってしまったりすることが少なくありませんでした。
たまたま姉が、近くのアパートに住み始めたんです。よく気ばらしに遊びに行っていました。同じアパートの別の部屋に、姉の友だちが家族で住んでいました。その友だちが離婚してシングルマザーになって・・・。せっかくだったら一緒に住もうという話になったようです。姉とシングルマザーの友だちとその子どもがアパートで共同生活を始めるようになりました。
シェアハウスでの子育ては、大人3人で子どもの面倒を見る生活
――どのような経緯でお姉さんたちと一緒に暮らすことになったのでしょうか?
千葉 姉と一緒に住んでいたシングルマザーの子どもが、とても活発だったんです。アパートでは声や足音が近所迷惑になるのではないかと、2021年に一軒家を借りることになりました。そのタイミングで私も一緒に住み始めました。3世帯のシェアハウスです。
その後、当時住んでいたシングルマザーの友だちは再婚し、別のところに引っ越しました。現在は姉、もう1人の友だちと私と娘で暮らしています。
――シェアハウスでの暮らしはいかがですか?
千葉 とても気に入っています。大人3人で子どもたちの面倒を見ている感じで、孤独感がないんです。以前、一緒に暮らしていたシングルマザーの友だちの子は、私の娘の1歳年上の男の子でした。子どもたちはきょうだいのように仲がよかったです。
私も子育ての悩みを共有できるのが支えになりました。子どもたちがイヤイヤ期でも「わかる、うちの子もこんな感じだったよ」と言ってくれる人がいるだけでほっとするんです。仕事があるときは、ほかのハウスメイトが子どもの面倒を見てくれるなど、サポートし合えていたと思います。もし私だけで子育てをしていたらだれにも相談できず、子育てと仕事も両立できず、苦しかったと思います。
共同生活ではありますが、ルールに縛られているわけではありません。家事はできる人ができるときにやる感じです。たとえば私はわりと掃除が好きだから積極的にするんですが、ほかの2人はこまかいところは気にしないタイプです。おたがいに自分ができること、得意なことは積極的に担当して、ほかの人にお願いできるところはお願いしています。
食事もだれかが作ってくれたのをみんなで一緒に食べるときもあれば、それぞれが別の場合もあります。たまにお金に関しての話や、生活のしかたについてなどを話し合うこともありますが、それぞれ無理なく暮らせるようにしています。
子どもたちにとっても、親と1対1ではなく、大人3人と暮らすのは大きな刺激になったと感じます。世の中には価値観の違う人がいて、それぞれ異なる遊び方をしてくれて、いろんな人がいるんだと学んでいるようです。同居している大人3人に対して、娘はそれぞれちがった接し方をしています。シェアハウスで暮らすことで社会性を身につけている気がします。
離れて暮らすようになり、両親との仲も改善されました。週末は実家に帰ることが多く、娘だけが泊まりに行くこともあります。
同居して距離が近すぎると、おたがいのいろいろな面が見えてしまうのかもしれません。適度な距離感があったほうがいい関係を築けるんだなと感じました。
――千葉さんにとって娘さんはどんな存在ですか?
千葉 かけがえのない存在です。ともに生きるパートナーであり、対等な関係を築いていると思います。現在、娘は4歳ですが、ときには彼女のほうが人生の先輩みたいに感じることもあります。娘のほうが気持ちの切り替えが上手で、嫌なことがあってもすぐに楽しいことを見つけられるんです。子どものほうが精神的に大人だと、ハッとすることも少なくありません。「どうしたらそんなにいつもハッピーでいられるの?」と聞くと「お友だちと楽しいお話をしたらいいんだよ」なんて答えを教えてくれます。
だから私は子どもを子ども扱いできないし、対等に接しているつもりです。何か問題があって、選択肢がいくつかある場合も、一方的に私が決めるのではなく、娘の意見を聞き、話し合っています。
配信: たまひよONLINE