食中毒を防ぐには腸内環境も大事だった! 食中毒の症状とその予防法

第3回 秋も要注意! 秋に食中毒が起こる理由と防ぎ方
湿度と気温の高い夏だけに限らず、秋にも多いといわれる食中毒。食中毒になると、どのような症状がでるのだろうか。東京医科大学の中村明子兼任教授に受診の目安や家族に感染しないための方法を聞いた。

●「様子を見る」はNG! すぐに医療機関へ

食中毒にかかったとき、菌やウイルスの種類に関わらず、起こる症状は同じだと中村教授は言う。

「嘔吐や下痢、腹痛といった胃腸炎症状です。サルモネラ菌の場合は熱が出ることもあります。抵抗力の弱い子どもや高齢者は重症化しやすい傾向にあり、なかでも注意が必要なのが脱水症状です。嘔吐や下痢によって水分が不足するものの、水分を摂らせるとまた吐いてしまう。その場合は、点滴で補給する必要があります」(中村教授 以下同)

家族に食中毒の症状があらわれたとき、家庭でできる対処法はあるのだろうか。

「家庭で対処しようとせずに、食後に具合が悪くなったら医療機関を受診してください。『少し様子を見よう』と思っていても、子どもの場合は進行が早く、すぐに重症化してしまいます」

そして、大人であっても子どもであっても、「様子見」は禁物だ。

「『ただの下痢だから2日、3日くらい我慢すればいい』と安易に考えないでください。毒素が血液を通して全身をめぐり、脳症や腎不全を引き起こしてしまう可能性もあります。毒素を体内にためこんでしまうため、下痢止めの安易な使用も避けたほうがいいでしょう」

腹痛を訴える子ども

●ノロウイルス感染予防に家庭でできる対策

家族の誰かが食中毒に感染したとき、家族全員に移ってしまうのは避けられないのか。

「そうとも言い切れません。例えば10月から発生するノロウイルスの場合、ほかの家族との接触をできるだけ避ける、トイレを消毒する。この2つを徹底すれば、感染する可能性はぐっと低くなります」

具体的には、どのようにすればいいのだろう?

「用を足して水を流したとき、フタをしていないと約1メートル四方に飛ぶといわれています。まずはフタをして流すこと。それから、使用後は塩素系の薬剤で便座や床などを拭き取るようにしましょう。使い捨て手袋とマスクも着用するといいですよ」

●菌やウイルスに感染しても、症状が出ない場合もある

飲食店で食中毒が発生した際、従業員が感染していたと報道されるケースもある。もし、感染していたら従業員もその症状に苦しみ出社できないのではないか…と思うのだが、感染したことに気づかないのだろうか?

「感染しても、症状が出ていないからです。成人の約7割は、菌が入っても症状が出ないまま体を通過してしまいます。また、子どもでも抵抗力があれば、症状が出ないケースもあります」

子どもの抵抗力を養うためのカギは、「腸」にあるという。

「善玉菌を増やして、腸内フローラのバランスを整えることです。菌やウイルスは腸で増殖して毒素を排出し、食中毒を引き起こします。もし腸内に善玉菌などが存在すれば、食中毒を引き起こす菌やウイルスが入ってきても付着する場所がなく、そのまま出ていってしまいます。

ちなみに、腸内環境を整えるには、栄養バランスのいい食事とヨーグルトなどの乳酸菌を摂ることをおすすめします」

乳酸菌は腸内に定着しないため、日常的に摂取して補う必要があるそうだ。腸内環境を整えることは、食中毒対策はもちろん、便秘解消にもつながる。食中毒の正しい知識を身につけるとともに、菌に負けない体を目指す。自分にできることから始めて、これから冬にかけて増えるノロウイルスに備えたい。
(取材・文:畑菜穂子 編集:ノオト)

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お話をお聞きした人

中村明子
中村明子
東京医科大学兼任教授(微生物担当)・NPO栄養衛生相談室理事長
共立薬科大学(現慶應義塾大学薬学部)を卒業し、国立予防衛生研究所細菌部室長、共立薬科大学理事・特任教授を経て現職に就く。学校給食における食中毒予防のため衛生管理の指導をおこなう。
共立薬科大学(現慶應義塾大学薬学部)を卒業し、国立予防衛生研究所細菌部室長、共立薬科大学理事・特任教授を経て現職に就く。学校給食における食中毒予防のため衛生管理の指導をおこなう。

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