産後すぐ子どもが長期入院になって気づいた、育児でママとパパに必要な「かたまり」「初期設定」とは!?【小児科看護師papaPANDAインタビュー】

産後すぐ子どもが長期入院になって気づいた、育児でママとパパに必要な「かたまり」「初期設定」とは!?【小児科看護師papaPANDAインタビュー】

初めての育児を迎えるママパパは、産後の家事育児の分担をどうしたらいいか悩むところ。産後のママはどれくらいたいへん?パパの役割は?そんな疑問に、「両親という“かたまり”で育児に立ち向かおう」と答えるのは、小児科看護師で2児の父のpapaPANDAさん。著書の「小児科看護師が寄り添うはじめてのかたまり育児」で「かたまり育児」を提唱しています。そこで、papaPANDAさんにインタビュー。これから育児を始めるママパパに共有してほしい「初期設定」など、「かたまり育児」の始め方から新生児期の乗りきり方を聞きました。

ママとパパが「かたまり」に!「かたまり育児」の始め方

――papaPANDAさんが著書内で提唱する「かたまり育児」とは、どういうものでしょうか? 

papaPANDAさん(以下敬省略) 「かたまり育児」とは、育児を「パパ」「ママ」の単位ではなく、「両親」という「かたまり」で行う方法。イメージは戦隊ヒーローの合体ロボットです。夫婦で合体ロボットの同じ操縦席に乗って、1人が倒れたら、もう1人が操縦し、倒れたほうも脳みそを動かして指示を出す。すると、負担は半分になり、育児戦闘力が上がった状態で育児という怪獣に立ち向かえます。

つまり、パパは〇〇係、ママは⬜︎⬜︎係という、単なる「役割分担」という形ではなく、全ての事象に2人で立ち向かう姿が「かたまり」です。

――斬新な発想ですね。papaPANDAさんが、この「かたまり育児」という発想に至った経緯を教えてください。

papaPANDA きっかけは、第1子の誕生でした。長男は、生まれた翌日に先天性心疾患とわかり、長男と妻は長期入院に。当時はコロナ下で私も面会ができない中、病院で普段はあんなに天真爛漫で明るい妻が、言葉にできないほどの不安と戦っていることに気がつきました。
そこで、私は子どもと妻の様子を毎日妻から聞いて、情報共有しようと考えたんです。

共有したのは「今これが必要」といった情報はもちろんですが、ビデオ通話を利用して、妻と何を話すでもなく、ただ顔を合わせる時間も大切にしました。すると、しだいに妻の不安が軽減し、同時に私と妻が1つの「かたまり」になってきたと感じたんですね。おそらく、お互いの状況や気持ちを細部まで共有することで、お互いのもやもやを理解し合えてきたからだと思います。

その後、看護師としてママやパパから育児相談を受ける中で、ママとパパは役割を分担するのではなく、シームレスに「かたまり」になることが大切なんだと考えるようになりました。

――ママパパが「かたまり育児」を始めるにあたって、まず何をすればいいでしょうか?

papaPANDA 育児の“初期設定”です。初期設定とは、「わが子にどういうことを達成してほしいか」「どういう人になってほしいか」など、内容はなんでもいいと思います。

大事なのは、夫婦で育児のベクトルをそろえて共有すること。これが抜けていると、「かたまり」になれないと私は思います。
逆に、共有できていれば、子どもに一貫した育児を提供することができます。また、いざ育児で壁にぶつかったときに、2人で立ち返る試金石にもなります。

――ママが「かたまり育児」をしたくても、パパが何もしてくれない場合は、ママはパパにどのようなアプローチをすればいいでしょうか?

papaPANDA 夫婦でしっかり話をすることだと思います。ママからの相談で「パパに家事育児にもっと参加するようお願いしたけど、聞いてくれなかった」というのはとても多くて、ママにとって大変なストレスだと感じます。

こういうときは、ママはパパに「これをやってほしい」とお願いするのではなく、「私は今、危機的状況です。そこに座って話をしたい」と伝えましょう。話し合いの場を持ち、パパと「かたまり」で子どもを育てたいんだという思いを伝えてほしいと思います。エネルギーがいることですが、ここは覚悟を決めるしかありません。あきらめないで。

「かたまり育児」なら乗りきれる!新生児期の家事育児はパパが主役

――「かたまり育児」で新生児育児をする場合、パパのアクション、ママのアクションを教えてください。

papaPANDA 新生児期にパパが育児休暇を取得しているなら、家事育児はパパが主役。出産による母体のダメージは交通事故に匹敵するともいわれていて、産後のママは1カ月間は安静が基本です。パパは、ママから家事育児を全部「取り上げる」くらいの気持ちで担ってください。パパが全部やるのが大変なら、ママは洗濯物をたたむ、モップをかけるくらいの軽作業にとどめてほしいと思います。

一方、パパが育児休暇を取得していない場合も、自宅にいるときは主役になってください。夜間授乳を1回は担当してほしいと思います。ママは昼夜問わず3〜4時間おきの授乳で、まとまった睡眠がとれません。パパが夜間に1回以上、哺乳びんの準備から、授乳、おむつ替え、ゲップ、寝かしつけまで、たった1時間の育児を負担するだけで、ママは6時間以上の連続睡眠がとれます。

――完全母乳でも、パパにできることはありますか?

papaPANDA 完全母乳のママも、必ずしも授乳を1人で背負う必要はありません。哺乳びんを上手に活用しましょう。搾乳しておけば、パパが母乳を哺乳びんで授乳できます。パパは授乳を「代わってあげる」というスタンスではなく、ママから「取り上げる」気持ちで積極的に担当しましょう。
とはいえ哺乳びんを嫌がる赤ちゃんもいますから、その場合はママにお願いするしかありません。パパは哺乳以外の仕事をママから取り上げましょう。

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