【ポイント5】罰を与えるのはNG
――子どもが苦手なものを食べられるように練習する際、やらないほうがいいことは?工藤 野菜を残したらおやつはあげない、など食事のことで罰を与えられたりしかられたりすると、食べることに対してマイナスイメージをもちやすくなります。ペナルティを課されると、もしかしたら恐怖から一時は食べるかもしれませんが、それは克服にはなりませんよね。苦なく食べられるようになって初めて克服、になります。
またお食事の時間にしかられると悲しい気持ちになりますし、心が沈んでいるときは食欲がわかないもの。しかられながら、罰におびえながらの食事は大人だっておいしく食べられません。
「栄養が不足しないか心配」「せっかく作ったのに」という親の不安はぶつけないようにして、子どもに寄り添いながら、少しずつ食べられるように練習していきましょう。
お弁当通園なら「嫌いなもの」はあえて入れなくてOK
――お弁当を幼稚園などに持っていく子もいます。この場合、子どもの好きなおかずだけを入れるか、栄養のためには嫌いなおかずも入れたほうがいいか、どちらでしょうか?
工藤 お弁当は子どもが食べられるもの、食べきれる量を用意してあげるのがいいと思います。この時期は「できた」という成功体験を積むことが大切。「お弁当を残さず全部食べられた」という経験をさせてあげましょう。
嫌いなものが入っていても食べないでしょうし、先生によっては「お弁当をピカピカにしようね」と完食を促す場合もあるかもしれません。そうすると本人にとってお弁当の時間がプレッシャーになってしまいます。嫌いなおかずは入れないほうがいいでしょう。
ビタミンがたりないかな、など栄養バランスが気になるときは、おやつを工夫します。おすすめしているのは、冷凍フルーツをのせたヨーグルトです。フルーツは生と冷凍で比較しても栄養価はほぼ変わりませんし、乳製品のカルシウムもとれます。これにバナナ、はちみつを組み合わせるとボリュームアップできるし、ヨーグルトの「プロバイオティクス」、バナナのオリゴ糖の「プレバイオティクス」、これら2つを摂取する「シンバイオティクス」(※3)により、腸内環境を整えられますよ。
※3善玉菌となる「○○菌」がつく食べ物(=プロバイオティクス)と菌のエサになるもの(=プレバイオティクス)、この2つを一緒にとることにより、相乗効果が得られ、腸内の善玉菌が増えやすくなるという考え方。
幼児食の後期ごろからどんどんチョコレートやあめ・グミ・スナック菓子などの「お菓子」のおやつが増えてしまいがちですが、市販のお菓子やジュースは糖質が多く、栄養はほとんどありません。親の目が届くうちはおやつ=補食として、食事でとりきれない栄養を補うものをあげるようにしたいですね。
――おやつでお菓子を食べさせるのをやめるにはどうすればいいでしょうか?
工藤 目の前にあるものを我慢するのは難しいので、お家にお菓子を買い置きしないのがいちばんです。ただしお出かけの際はOKにするなど、完全に食べない、としなくてもいいとは思います。
小学校高学年以降になると、塾に行く前にコンビニエンスストアに寄って自分で食べ物を買う、ということも出てきます。自分で買い物をするようになる前に、体のことを考え、より栄養のあるものを選べるように教えていくことが大切です。
食事は習慣ですから、幼いころから栄養バランスを意識づけることは、子どもの将来の健康を守ることにつながっていきます。
お話・監修/工藤紀子先生 取材・文/中澤夕美恵、たまひよONLINE編集部
子どもが嫌がるものを食べさせるのは至難の業。でも好き嫌いがないと、苦手意識をもつことなく食事ができるようになります。少しずつ、子どもの食べやすい調理法から、トライしてみてはいかがでしょうか? 「嫌い」が「好き」に変わることもあるかもしれません。
●記事の内容は2025年3月の情報で、現在と異なる場合があります。
監修者
工藤紀子 先生
PROFILE:小児科専門医・医学博士。順天堂大学医学部卒業、同大学大学院小児科思春期科博士課程修了。栄養と子どもの発達に関連する研究で博士号を取得。2児の母。年間のべ1万人の子どもを診察しながら、「育児は楽に楽しく安全に」をモットーに、子育て中の家族に向けアドバイスを行っている。近著に「小児科医のママが教える 離乳食は作らなくてもいいんです。」(時事通信社)
配信: たまひよONLINE
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